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近年、ランニング市場はかつてない盛り上がりを見せている。スポーツ庁の調査によれば、週1回以上ランニングを行う市民ランナーの数は、2018年の約1000万人からコロナ禍を経た2022年には約1300万人へと増加。ランニングは元来、競技志向のスポーツ愛好家に限られていたアクティビティだったが、そのスタイルがいま、大きく変容しつつある。
従来は、ダイエットや健康維持を目的としたランニング、あるいはマラソン大会出場に向けたトレーニングが市民ランナーの主流だった。しかしコロナ以降、仲間と一緒に走る「グループラン」が新たな潮流として台頭。欧米を発信源にランニングクルーやランニングコミュニティが急増し、自己ベスト更新ではなく、走る楽しさと連帯感を共有するライフスタイルとして注目を集めている。
ファッションシーンにおいては、今年1月に開催されたピッティ・イマージネ・ウオモの会場にランニングにフォーカスしたブースが設置され、参加者によるグループランを実施。7月には、「オン(On)」がドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)でポップアップを開催し、ランニングクルーとタッグを組んだローンチパーティーを行うなど、トレンドの兆しが伺える。そこで、一種のライフスタイルとして注目を集めるグループランの動向について、東京を拠点に活動するランニングクルー「080TOKYO」の代表 ユナ氏に話を聞いた。
コロナ禍を経て参加人数は4倍に
080TOKYOは、毎週月曜日20時から、代々木公園を拠点にランニングを実施。事前登録なしで、誰でも飛び込みで参加できることから、多いときには100人の参加者が集まるほか、イベント開催時には200〜300人が集まることもあるという。「活動当初は1回につき20〜30人の参加が基本で、それでも『たくさん来てくれた』と感じていました。最近の参加者の多さには、改めてランニング自体の盛り上がりを感じますね」(080TOKYO代表 ユナ氏)。



毎回、ランニング終了後に撮影を行っている080TOKYO参加者による集合写真
Image by: 080TOKYO
同クルーは2017年、当時「ナイキ(NIKE)」の店舗スタッフとして働いていたメンバーが設立。立ち上げメンバーが韓国のレースに出場した際、すでに現地で活発だったというランニングクルーの存在に感銘を受けたことが、設立のきっかけとなったという。「大会の会場で、同じクルーのメンバー同士が応援し励まし合う姿や、新たな友情が芽生える様子を目にしたことで『日本でも同様のコミュニティを作って、この素晴らしい文化を発信したい』『クルーを通して、ランナー同士が刺激し合える環境を作りたい』という思いから活動を始めました」。
ユナ氏によると、参加人数が目に見えて増えたのは、コロナ禍以降。「日本に住む方はもちろん、海外からの観光客の参加が圧倒的に増えました。普段からランニング習慣のある方が、インスタグラムなどを通じて080TOKYOを見つけてくれて、日本旅行のついでに参加してくれるケースが多いですね」。
クルーの存在がランニング新規参入のきっかけに
当初は陸上経験者を中心に構成されていた同コミュニティだが、近年ではクルーへの参加をきっかけに走りはじめたエントリーランナーを含め、多様なバックグラウンドを持つメンバーで運営。代表のユナ氏自身、080TOKYOに参加する以前はランニングが得意ではなく、1人では1kmを完走するのがやっとだったが、クルーとともに走ることで初めて5kmを完走できたという。「一人では辛く感じがちなランニングも、仲間と会話しながら走ることで辛さが薄れ、楽しく継続できるのが、グループで走る大きな意義だと思います」(ユナ氏)。
毎週、代々木公園を拠点に実施しているランニングでは、ランニング経験のない初心者の参加も目立つ。「080TOKYOに参加した友人や知人のSNS投稿をきっかけに参加した」というケースも少なくないという。080TOKYOは、会話ができる程度のジョグペースでランニングを行うことから、走ることが得意な人のみが集まることはなく、また人との交流を楽しめる場として機能している。
「ランニングという共通項があるため、年齢や国籍、職業を問わずに自然な形で交流が生まれるのがグループランの良いところ。自ずと趣味嗜好が近い人が集まるので、080での出会いをきっかけに、登山やSUPといったランニング以外のアクティビティを一緒に楽しめる友人関係にも発展しやすいんです」。実際、日本や韓国よりも先にグループラン文化が発達していた欧米圏では、ランニングコミュニティは新たな“出会いの場”としても人気を集めているという。
メーカー各社がクルーとタッグ、多様化するランニングスタイル
グループランによる市場の盛り上がりは、スポーツブランド各社にも波及。「ニューバランス(New Balance)」は今年3月、ランニングに特化した初のコンセプトストア「ニューバランス Run Hub代々木公園」をオープン。ランニングクルー「ikism(イキズム)」とタッグを組み、同店を拠点としたイベントを企画している。また近年、国内外において存在感を増しているオンでは、キャットストリートに位置するフラッグシップストア「On Tokyo」を拠点に、毎週水曜日にグループランを実施。今年の春夏シーズンでは、仲間と走ることによる爽快感やワクワクを打ち出したキャンペーン「SOFT WINS」を発表するなど、幅広いランナーに向けた取り組みを行っている。
近年のランニング市場について、オン ジャパンの広報担当者に尋ねると「ランニングにおいて、仲間と好きなウェアやシューズを身につけて走る若いランナーが増えていて、盛り上がりを感じる。同時に、タイムや結果を仲間と共に目指すグループも以前より増えてきている印象がある」という。

Image by: 080TOKYO
ユナ氏は、ランニングに特化したインフルエンサーの存在や、ガレージブランドが大手メーカーとは異なるデザイン性の高いランニングウェアを訴求していることも、ランニングカルチャー自体の魅力や認知度を高めていると分析している。ガレージブランドでは、フランス・パリ発の「サティスファイ(Satisfy)」をはじめ、韓国発のランニングブランド「ARC」、アメリカ発の「トラックスミス(Tracksmith)」、今年7月に日本に初上陸した「バンディット(Bandit)」といったブランドが台頭。コミュニティ内で広がることで、ランニングにおけるファッションスタイルが多様化しつつあるのだという。
「ガレージブランドだけではなく、ランニングクルー自体がブランド化し、クルーが制作するオリジナルウェアに人気が集まる現象も見られます。080でもアパレルを製作していますが、国内では他に『AFE TOKYO』などが人気。クルーが発信するアイテムを着ることで、仲間との連帯感が強まりますね」(ユナ氏)。
ユナさんによると、近年の盛り上がりに追随するように、ランニングクルーの形態も多様化しているという。080TOKYOには、誰でも参加できる毎週月曜日の活動に加えて、マラソンなどの長距離走におけるタイム短縮を目的とした活動を行う派生コミュニティも存在。080TOKYO以外にも、モデルの三原勇希と浅野美奈弥によるトレーニング形式の会員制コミュニティ「GO GIRL」が、20〜30代の女性に人気を集めている。クルーではなくショップが主導するケースもあり、ランニングカルチャーショップ「downbeat RUNNING OSAKA」では、毎週水曜日の20時から、予約不要の「ソーシャルラン」を行っている。

Image by: 080TOKYO
元来、1人で行うものだったランニングだが、グループで活動することで1人では達成し得ない目標達成の喜びや、未知のルートを走破するワクワク感を生み出す。コロナ禍を契機に芽吹いたムーブメントは、今後さらなる盛り上がりが期待できそうだ。
最終更新日:
■080TOKYO
公式インスタグラム
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