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Culture

書店であなたを待つ「文化的雪かき本」を探しに:「スノウショベリング」編

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 いつの時代も私たちの見聞を広げてくれる「本」。駒沢大学駅から徒歩20分。駒沢公園を横断してようやく辿り着く書店&ギャラリー「スノウショベリング(SNOW SHOVELING)」は、お世辞にもアクセスが良いとは言えず、入り口だって少しだけわかりづらい。「『今日はどこかにお出かけしたいけど、何も思いつかない』という方に立ち寄って欲しい」と話すオーナーの中村秀一さんが作り上げた同店は、本はもちろん、アメリカンヴィンテージ風のインテリアに囲まれながら、ソフトドリンクやアルコール飲料を楽しむことができる。本屋でありながら談話室のような雰囲気を持つスノウショベリング オーナー中村さんが選ぶ、携帯をスワイプしても出会うことができない「捲ってもらいたい本」4冊。

書店連載 前回の記事はこちら
書店であなたを待つ「幽霊本」を探しに:「古本屋 百年」編

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店主プロフィール
【名前】中村秀一
【好きな本のジャンル】文学全般
【影響を受けた本】「ノルウェイの森」/村上春樹、
J・D・サリンジャー作品

スティーブ・ジョブズが愛読した指南書

【タイトル】WHOLE EARTH CATALOG
【著作】Stewart Brand
【発行年】1970年

FASHIONSNAP(以下、F):アップルの創業者故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)が、スタンフォード大学の卒業式に招かれて行ったスピーチで「ホール・アース・カタログ(WHOLE EARTH CATALOG)」の一節を引用したと聞きました。

中村秀一(以下、中村):「Stay hungry, Stay foolish.(ハングリーであれ。愚かであれ。)」という一節ですね。あのスピーチでこの本の認知度は良い意味でも悪い意味でも上がったと思います。ジョブズが引用する前までは、カウンターカルチャーに興味がある人たちが収集するもの。スピーチ以降はスタートアップ企業を志す若者が「欲しいな」と思うようなカタログになったのかな、と。

F:どのような内容が記されているものなんでしょうか?

中村:直訳すると「全地球図鑑」というタイトル通り、この惑星での素敵な暮らし方を提案する指南書みたいなものです。

F:新しい生活の提案ということでしょうか?

中村:そうですね。でも全然新しくない(笑)。これが発行された1970年代は、ベトナムの反戦運動とかヒッピームーブメントとか、所謂「反体制」「反システム」の運動が盛んに行われた年でした。つまりこの雑誌は「ストップ進化!原始的な元の地球の暮らしに還ろう!」というヒッピームーブメントが世の中に浸透していた頃に発行されたもの。

F:具体的にはどんなことが指南されているんですか?

中村:今でいう「オーガニック推奨」「サステナブル」「脱炭素」みたいなものとか様々です。おそらく、人類史上初めて「進化の歩みを止めよう」というムーブメントが起きていた時のカタログなので、地球で生活する上で必要なあらゆる知恵がアーカイブされています。おばちゃんの知恵袋集というのが1番わかりやすいかもしれませんね(笑)。

F:これをお店に仕入れようと思った理由は?

中村:元々僕が、カウンターカルチャーが好きなんですよ。先ほども少し話に出ましたが、この本は元々カウンターカルチャーであったヒッピーたちのバイブル本です。普通の本屋とは少しだけ異なったこのお店にとって「シグネチャー」であり、なくてはならないものなんですよね。

F:なるほど。中村さんの考える「良い本」の基準とは?

中村:時の耐性というか洗礼に耐えうるもの、かな。発行年が10年前であろうが50年前であろうが、良い本は良い本だと思うんです。でも一方で「これが10年前の本だったら、役に立たないだろうな」と思うものもあるはず。例えば「インターネットの始め方」という本があったとしたならば「この時代の人は、こういうことを考えていたんだな」という意味で歴史的価値はある。でもそこには資料的な価値しかないですよね。一方で、20年前に書かれた本でも普遍的で本質的なことを記している本はあります。「啓示的」とでも言うんでしょうか。それが僕にとっての良い本の基準で「入荷したいな」と思える一つの指針かな。どうせ本を手にするなら、自分の本棚にあって誇れる本の方がいいじゃないですか。

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