
Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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「日常の延長線上にある、着る人に寄り添う服を作りたい」。かつて、「シュタイン(ssstein)」のデザイナー 浅川喜一朗がそう語っていたのを思い出す。2016年にパンツ3型からスタートした同ブランドは、10年間で着実に成長し、パリでの新作発表3シーズン目にして公式のプレゼンテーションスケジュール入りを果たした。初めて公式としてパリの土俵に立った形だが、発表したコレクションはあくまでも自然体。モノづくりへの真摯な姿勢と、改めてパリの地で挑む決意を静かに示した。
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ショーの会場として選んだのは、1794年に建てられたパリの高等教育機関 フランス国立工芸院。中世の宗教建築と、19世紀産業革命期の機能美が融合した空間で、荘厳なBGMとともにショーはスタート。ファーストルックでは、ブランドの代名詞とも言える静寂の美学がグレーの濃淡によるレイヤリングで表現された。肩をドロップさせたリラックスシルエットに、首元から覗くサックスブルーのシャツが知的さを加え、歴史的建造物の空気感と共鳴。生地をたっぷり使ったワイドトラウザーは、モデルの歩みに合わせて優雅に波打ち、静寂の中にも確かな力強さを感じさせる。

その後は、「ディフォームドショルダー」と呼ばれる構築的なデザインのテーラードジャケットや、裾部分を連結させ、バルーン状の立体的たわみを作り出したバルーンヘムアウターなど、過去のシーズンで好評を博したデザインを採用したアイテムが登場。「クリエイションとは突然生まれるものではなく、過去と地続きにある」と話す浅川らしく、ブランドのアーカイヴに根差し、地に足のついた発表を続けた。


浅川の自然体なアティテュードは、スタイリングにも表れた。ニットとシャツを重ねたスタイリングでは、あえてシャツの片方の襟をニットの中に入れ込んだ。また別のパンツスタイルでも、レイヤードしたシャツの裾を片側だけあえて外に出し、不完全さを演出。Vネックのニットにレイヤリングしたインナーでは、裾と襟ぐりから少しだけカットソーを覗かせた。共通するのは、完璧に整えられたドレスアップではなく、日常のふとした瞬間に生まれる「リアル」。「生活の痕跡」をスタイリングに落とし込み、静謐さの中に確かな体温を宿した。



新たな試みも見られた。今季はファッションフォトやポートレート、風景写真などで高い評価を得ているフォトグラファー ジェイミー・ホークスワース(Jamie Hawkesworth)の作品から着想。深緑の葉が秋の訪れとともに色を変え、夜の街灯に照らされる季節の移り変わりをイメージし、これまで取り入れたことのなかった赤や緑といったカラーパレットを採用。とりわけレッドカラーは無機質な石造りの会場において、どこかノスタルジックな郷愁を与え、コレクション全体に「高揚感」というスパイスを加えた。


また、2026年春夏コレクションでウィメンズの着用を想定して打ち出したXSサイズに加え、2wayで着られるロングスカートやタイトフィットなタンクトップを新たにラインナップ。将来のウィメンズライン展開に向けた第一歩になるという。


今回のファッションウィークは例年と比べ気温が高かったとはいえ、1月のパリはかなり寒いが、シュタインのショー会場は暖房がしっかりと効いていて他ブランドのショーと比べて段違いに暖かい。会場入り口ではスタッフが来場者に温かいコーヒーを振る舞った。どちらも浅川の「ショーに来てくれる人に少しでも温まってほしい」という気遣いによるものだ。ショーのフィナーレで表れた際は、客席全方向に向けて何度も深くお辞儀するなど、謙虚で実直な浅川の姿勢はこれまでと変わらない。「とにかく丁寧に自分たちが信じるモノづくりを突き詰めるだけ」(浅川)。確実に次のステップを登ったシュタイン。パリという新たなステージで更なる成長に期待したい。
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