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Fashion フォーカス

コロナ禍のクリエイターや小規模ブランドに必要なことは?4つのヒントと活用すべき支援制度

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 新型コロナウイルス感染症対策に伴う緊急事態宣言が全国に拡大。各地の商業施設が臨時休館を余儀なくされるなど、ファッション業界にも大きな影響を与えている。とくに小規模のブランド企業は、販売機会を失えばすぐにでも経営が傾きかねない。個人経営のブランドやクリエイターらが今できることは何か?多くの相談が寄せられているという創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」インキュベーションマネージャー(村長)の鈴木淳氏が、活用すべき制度など難局を乗り切るヒントとメッセージを送る。

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◆鈴木淳
株式会社ソーシャルデザイン研究所代表取締役。1990年鐘紡に入社し、カネボウファッション研究所勤務。1999年に独立しユニバーサルファッション協会を設立。2004年より台東区立の創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」のインキュベーションマネージャー(村長)を受託。2011年に地域イベント「モノマチ」をスタート。2015年「イッサイガッサイ東東京モノづくりHUB」立ち上げ。2019年 毎日ファッション大賞「鯨岡阿美子賞」を受賞。著書に「自分を動かすスイッチの入れ方」がある。Twitterでは新型コロナウイルスに伴う支援策について、ブランド向けに情報を発信している。

 まずは、今回の緊急事態に対して懸命に対応されている病院関係者はじめとした皆様に対して御礼申し上げます。

 今回の新型コロナでのイベント自粛や百貨店休館などの影響が日増しに大きくなってきています。本稿では、台東デザイナーズビレッジ関係者(アパレル・皮革関連・ジュエリー等)の声を基に、クリエイターや小規模ブランドの対応策を考えてみたいと思います。

売上減、受注会中止、高額なキャンセル料......クリエイターが抱える問題

 緊急事態宣言は東京をはじめとする7都府県に加え、全国に対象が広がりました。これに伴い各地の百貨店や商業施設は営業休止している状況が続いています。緊急事態宣言の発効期間は5月6日までとされていますが、毎日のように状況は変わり、対応策も決めにくい状況になっています。

 この時期に新型コロナウイルスが感染拡大したことで、クリエイターや小規模ブランドが受けた影響は以下の3点にまとめられます。

1)春夏物の売上の減少、イベントの規模縮小・中止
2)個展や受注会の中止による受注減
3)その他の影響

 スタート期のブランドはまだ小売店への販路が少ないことから、売り上げをデザイナー自身が売り場に立って期間限定で直接お客様に商品を販売する「催事販売(ポップアップ)」に頼ることが少なくありません。しかしコロナの影響が出始めた2月~3月にかけては、来店客の減少や買い控えで例年に比べ売り上げは5〜8割と激減。4月以降は商業施設の休館や、イベント自粛になり販売機会すら無くなるという状況です。また例年3月~4月は秋冬商品の展示会・受注会などのシーズンですが、こちらも大規模な合同展やグループ展が中止になり、個人の展示会開催も期間短縮や自粛により、秋冬商品の受注が集まらないという声も数多く届いています。

 その他の影響では、日々状況が変わるために準備費用がムダになる、販売員のキャンセル費用、中には販売イベントでの感染や売上減の見込みのためお断りしようとしたら高額なキャンセル料を請求される(交渉中)ということもありました。

■クリエイターから村長に届いた主な声
・春夏シーズンの立ち上げが本格的に始まったころに各店舗営業時間短縮、外出自粛の要請があり、卸先での自社の消化率に不安がある。そもそも、新しい服を着て出かけたい場所がない現状(外出自粛や、施設が休業している)のため、アパレルは事態が収束し買い控えの反動が来るまで耐えるしかないのではないかと思っている。
・ほぼ卸しなので販売報告がまだ来ておらず、売り上げがどれだけ減っているか確実なところはわからないが、1/2程度にはなる見込み。
・2月の横浜の百貨店イベントは丁度クルーズ船のニュースが大々的な時期で、フロアの売上が前年比60%減の日もあった。実際にお客様が少なく、想定の売上よりも低かった。
・3週間、都内で催事を開催したが、通常時より売上がおよそ60〜80%減。本当にびっくりする位お客様がいない。
・minneやデザインフェスタ等のハンドメイド販売イベントの中止による売上減が大きい。
・4月に秋冬シーズンの個展を開催する予定だったが中止。5月に延期しても開催見通しが立たない。
・4月中に行う予定だった2020年秋冬シーズンの展示会が今まで通りに行えていない。時期や発表方法について、政府の今後の動き等により検討中。
・現在、オンラインで春夏の追加オーダー会を開催していますが、通常時と比べ売上がかなり悪い。また、振込期限切れ(=実質無言キャンセル)が初めて数件発生した。
・オリンピック期間に予定していたインスタレーション中止により、売上が減少。
・4月の百貨店イベントの詳細が決定しておらず、販売員のスケジュールは確保して待機しているが、もしイベント中止の場合はキャンセルできない分の人件費を払わなければならないことになる。
・2020年秋冬シーズンのルックで利用予定だったモデル会社から新型コロナウイルス感染者が発生。
・ポップアップイベントをキャンセルするなら、キャンセル料を最大予算の100%取ると言われた(交渉中)。仮に開催した場合、新型コロナウイルス感染者が発生し、売り場に迷惑をかけたら個人で賠償するよう言われている。

アフターコロナのアパレル業界はどう変わるのか

 アメリカのハーバード大学の研究者は「感染の流行は2022年まで続く可能性がある」と示唆するなど、新型コロナウイルス収束の目処は未だ立っていません。それに伴い、ファッションも気晴らしで購入というより、買い控え傾向が長引き、それが常態化してくるのではないでしょうか。それは、消費者が服を買わないことに慣れてしまうということにもつながります。中国生産のサプライチェーンも稼働再開の傾向はあるものの未だ不安定で、需要も供給も減る状態。つまり、業界全体が縮小するのではないかと考えます。低価格の実用衣料は必需品として一定の売り上げは確保できても、いわゆる不要不急であるファッション商品には厳しいマーケットになりそうです。

 お客様が店舗に買いに来ること自体がリスクになり、販売員も感染リスクを負う状態が続くので、とくに大都市圏は緊急事態宣言が解除された後も店舗を休業することになるでしょう。いつになったら、以前のような楽しく買物ができる状況になるか予想ができません。そのため各ブランドはEC(ネット)販売に力を入れることになります。しかし、ECでの売上はお客様とのコミュニケーション量に比例するものですから、すぐにお客様がそのブランドのECで購入してくれることはありません。移行にも時間がかかります。

 従来の「商品」ばかりを売りこみ、スタイルの提案や顧客とのコミュニケーションが弱いタイプのブランドは、SNSでも口コミが起きにくく苦戦することが予想されます。今後は低価格販売できる大手ブランド、魅力的な発信で共感されるSNSを中心としたブランド、顧客とのコミュニケーションが取れるブランドなどいくつかの特長的な事業スタイルが生き残り、多数のアパレルブランドはECでは売上減を補いきれず、規模縮小や廃業が選択肢になるかもしれません

小規模のブランドが今するべき4つのポイント

 店舗での販売機会がない今、小規模のブランドがいまできること。
まずは公的資金によって売上減の補填をしながら支出をできるだけ抑えて、長期戦に備えることが重要です。また新規のお客様を集めることが難しい時期になりますから、既存のお客様との関係強化策も重要になってきます。その上で、店舗での売上減に対応するためにECサイトへのシフトを図ることが最善策と言えるでしょう

 ただし単にECサイトを開設しても、そこにお客様を集めることも考えなければなりません。今までのようなたまたま売り場に来てくれるお客様に頼る売り方から、SNSなどを活用して集客しファンに育て、絆を作って顧客にしていく行動が必要です。

 ファンを増やすためにクリエイターがすべき4つのポイントをまとめました。

1)ファッションの魅力を発信
2)お客様に共感してもらい、ファンとして育てていく
3)お客様とのつながりを強化
4)事業の見直し自体も必要

1)ファッションの魅力を発信

 売り上げが上がらないとどうしても自分の都合で商品を売り込みたくなります。しかしお客様は売り込まれた商品は欲しくなくなるものです。クリエイターは、ファッションの魅力を発信して「欲しい気持ち高める」ことが必要です。外出はできませんが、どれだけ素敵に着用できるか、そのファッションでどんな気分に慣れるか、家に閉じこもっているからファッションは不要なのではなく、家に閉じこもっているから「こそ」素敵なファッションは大事だという意識になってもらうように情報発信をしてください。

2)お客様に共感してもらい、ファンとして育てていく

 商品を見せて売れるのを待つだけのECサイトは、これからはますます厳しくなります。お客様にどんな価値を提供したいのか?どうなってほしいのか?をしっかり考えていきましょう。お客様が共感し関心を持ってくれる発信をして、お客様候補一人ひとりにSNSで声をかけていき、興味を持ってくれたら、クリエイターのメッセージやこだわり、制作プロセス、商品にかける想いなどを伝えてさらに気持ちを高めます。そして不安要素を取り除き購入してもらう。お客様の状況に合わせて働きかけ、地道にファンを増やしていきましょう。

3)"個人対個人"のつながりを強化

 ECサイトでは店舗のようにお客様の顔が見えないですし会話ができないので、相手の状況がわかりにくくなります。これからのECサイトでは、商品を購入するだけではなく、デザイナーとお客様の関係性強化が重要です。例えばインスタグラムのストーリーズで一日限定オンラインショップやZoomを使ってオンラインワークショップなどを開催して直接つながったり、独自に動画や編集を学んで顔が見える発信を心がけるなど、今まで取り組んでいなかったことにチャレンジしているブランドもたくさんいます。パーソナルなメッセージのやり取りで「個人対個人」のつながりを作って下さい。

4)事業の見直し自体も必要

 市場が急激に縮小すると、事業を始めたばかりでまだ顧客が少ないブランドには厳しい状況になります。これからもファッションブランドとして継続するのか、それとも一旦撤退して他の仕事で生計を立てていくのかを考えなくてはなりません。始めたばかりであれば一旦休止も選択肢になります。また始めればいいのです。将来どうしたいのか、どうなりたいのか考える時です。

 これまでも日本の繊維業界では危機的な情況になると雇用や生産を維持するために、自らの強みを生かして、新アイテムに取り組み、難局を乗り越えてきた会社もあります。こんな状況ですが、できないことを悔やむのではなく、何ができるか、どんな可能性があるかを考え、ヴィジョンを描いてください。

クリエイターや小規模ブランドが活用したい制度

 支援策は以下の3つに大きく分けられます。

1)相談:生き残りや今後のビジネスについて専門家に相談
2)融資:事業活動を維持していくためにお金を借りること
3)補助金:事業にかかる費用の一部を援助してもらえる、返済不要のお金

 特にクリエイターや小規模ブランドは、行政の支援制度に慣れていないこともあるかと思います。地元の商工会議所や役所の融資相談窓口、事業相談窓口なども活用してまずは相談してください。窓口が多忙な時期は、納得いく対応をしてもらえないこともあるので、ある程度自分で調べて、わからないことはまとめて聞く姿勢が良いでしょう。私もツイッターで情報発信をしています(Twitterアカウントページ)。

 今回は国の支援策から、小規模ブランドでまず検討してもらいたいものをいくつかあげます。

>>経済産業省 支援策パンフレット
(事業所向けの相談、融資、助成金情報がまとめられています)

※以下の情報は4月21日(火)時点のものです。
※申請を検討中の事業者の方は、各支援制度の公募要領および最新情報を必ずご確認ください。

①持続化給付金(パンフレット26P)

 感染症拡大により、特に大きな影響を受けている事業者に対し、事業の継続を支え、再起の糧となる事業全般に広く使える給付金を支給(※令和2年度補正予算の成立が前提)。売上が前年比半分以下になった月があるともらえる返済不要のお金です。生活費や売上補填にも使えるので、該当事業者は申込みを。

■給付対象者:中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者等、その他各種法人等で、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年1月〜12月の売上が前年同月比で50%以上減少している者
■給付額:前年の総売上(事業収入)-(前年同月比で50%以上減少した月の売上×12ヶ月)
■※上記の算出方法により、法人は200万円以内、個人事業者等は100万円以内を支給
■返済義務:なし
■申請受付開始時期:補正予算の成立後、1週間程度
■給付の開始時期:電子申請の場合、申請後2週間程度を想定(申請者の銀行口座に振り込み)
■申請に必要な情報:詳細は4月最終週を目途に確定、公表

持続化給付金:パンフレットPDF

②持続化補助金(パンフレット30P)

 小さなブランドが売上を伸ばすための販売促進や、EC販売へのシフトにかかる費用など、売上を伸ばすための費用の一部を補助。例えば、展示会への出展やカタログ制作、ポップアップ中心からECサイトへの販路シフトするなど、販路開拓のために使用できます。商工会議所が窓口になるので早めに相談してください。

■補助上限:50万円(コロナ特別枠は、100万円)
■補助率:3分の2
■補助対象者:小規模事業者であること、商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
 その他(要件についてはホームページなどで確認してください)

■補助対象事業:策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等(生産性向上)のための取組であること。あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること
②商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること 
その他(詳細についてはホームページなどで確認してください)
■募集期間(いずれも郵送は締切日当日消印有効):
【第2回】
受付締切:2020年6月5日(金)
採択結果公表:2020年8月頃予定
補助事業の実施期間:交付決定通知受領後から2021年3月31日(水)まで

【第3回】
受付締切:2020年10月2日(金)
採択結果公表:2020年12月頃予定
補助事業の実施期間:交付決定通知受領後から2021年7月31日(土)まで

【第4回】
受付締切:2021年2月5日(金)
採択結果公表:2021年4月頃予定
補助事業の実施期間:交付決定通知受領後から2021年11月30日(火)まで

小規模事業者持続化補助金:トップページ

③ものづくり・商業・サービス補助金(パンフレット29P)

 新製品や新サービス開発や生産プロセス改善等のための設備投資等を支援。例えば、アパレルブランドが自社生産設備を導入し内製化を図るなどに使えます。

■補助上限:1,000万円以内
■補助率:【通常枠】中小企業:2分の1、 小規模企業者・小規模事業者:3分の2【特別枠】 一律3分の2
■補助要件、補助対象事業:詳細についてはホームページなどで確認してください。
■募集期間(2次締切):2020年4月20日(月)17:00〜5月20日(水)17:00
※今後、3次(8月中旬締切予定)、4次(11月中旬締切予定)、5次(2021年2月中旬締切予定)

ものづくり補助金総合サイト:トップページ

※その他無利子、無担保融資、金利補助などの融資についてはパンフレットをご覧下さい。

苦境の中でも忘れずにいてほしいこと

 毎日のように状況が変わりますが、人との接触を減らすことからファッション消費は減ると言われています。マーケットの縮小、消費者の買い控え傾向は続くと予想して対策をしなくてはなりませんが、重要なのは「ファッション」が人に与える心理的な好影響をしっかり認識してもらうことだと考えています。

 怪我をした元気な人でも入院して一日中パジャマを着ていると、だんだん仕事や生活のやる気を無くしてしまうそうです。服はコミュニケーションの道具であるとともに、自己イメージを作り上げ、日々のモチベーションを高めることもできます。閉塞感ばかりの状況だからこそ、着るもので自分を楽しく鼓舞させることもできるし、気持ちをやわらげることもできます。

 オンラインの仕事や生活が中心になるからファッションは必要ではない、ではなく、家に閉じこもるからこそ欲しい、オンラインだからこそ欲しいと言われるように、装うことの威力をファッション業界全体で声をあげていきませんか。

◆最後に

 メディアの皆さんにお願いです。ぜひ気持ちが高揚してくるような明るいニュースを伝えて下さい。ネガティブな情報ばかり与えられるとストレスが高まってしまいます。またファッション系企業やブランドには、この時期にどうやって対策をしているか、という情報をぜひシェアしてください。よいアイデアをみんなで出し合い、助け合いましょう。そして行政の皆さん、支援制度や助成制度に慣れていないクリエイター達にもわかりすい情報提供をお願いします。私も少しでもクリエイターやブランドの役に立つように発信していきたいと思います。

■鈴木淳:Twitter

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