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平凡の中に見出す多様性──TOGAが示すファッションの本質

TOGA2026年春夏コレクションをレポート

TOGA 2026年春夏コレクション

Image by: TOGA

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平凡の中に見出す多様性──TOGAが示すファッションの本質

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 ランウェイに現れた「NTS」とのコラボレーションTシャツを目の前にして、ふと去年の冬のことを思い出した。昨年11月に東京・WWW Xで開催されたイギリス発の音楽ラジオ局「NTS」によるイベント。会場の入り口にできた長蛇の列の最後尾に「トーガ(TOGA)」のデザイナー古田泰子さんの姿があった。ファッションブランドと、さまざまなカルチャーとのコラボは、もはや珍しいものではない。それでも、やっぱりちゃんとデザイナー本人が現場にも足を運ぶほど、やっぱり音楽やカルチャーを好きだからこそ、トーガとカルチャーの親和性は築かれてきたのだと強く感じた瞬間だった。

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 ロンドンで発表した2026年春夏コレクションのテーマは「ORDINARINESS, MEDIOCRITY, VERSATILITY」。訳すと「普通であり、平凡であり、でも多用途性がある」だろうか。前回は「Formal, Informal, Anti-formal」というテーマのもと、フォーマルとアンフォーマルの間の境界線を探るように、知的かつ果敢な造形美への挑戦だったことに対し、今回の出発点は「シンプルなものをどうすれば予想外でユニークなものにできるのか」という問いから。ポップアートの巨匠として知られるアーティストのクレス・オルデンバーグの30分間にわたるインタビューを観ながら、湧き出てきたアイデアだったという。

 日用品や消費社会を象徴するモチーフを巨大化した彫刻作品で知られる、クレス・オルデンバーグ。ノコギリやチェリーがのったスプーン、バトミントンのハネなど、どれも私たちが知っているモチーフだからこそ、あまりにも巨大化した瞬間に思わず驚き、そして笑みがこぼれる。複雑さはそこにはなく、モノのある姿を引き延ばしたり、重力を感じさせる造形に変えてしまうことで人の心をくすぐるものとなる。そこから古田が具体的に着目したのは、すくったアイスクリームが地面に落ちて形を変える様子や、アイスを落としてしまったときに感じる悲しみ。そうした、日常で起きる些細な瞬間に潜む感情の揺らぎを捉えたコレクションとなった。

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 ファーストルックからたびたび登場する、ラッフル状のパネルがたなびくボトムスは、まさに今回のテーマを象徴するアイテムに。平面に置いた時は、パネルも一枚の布だが、立体化するとたちまち形を変え、またボタンで取り外しできる多用途性も持つ。シャツにスカートというミニマルなスタイリングも、バックルベルトで固定したローウエストに装飾的なベルトを重ね付けし、あえてシューズにはビーチサンダルを合わせるというハズシを加える。一つずつのアイテムはシンプルでも、組み合わせ次第でユニークなものになることを証明したようだった。

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 じゃらじゃらと音を鳴らすのは、ブーツに巻きつけられたチェーン。シートには、キーチェーンにも見えるがそれにしては大きすぎるようなアクセサリーが置いてあった。セーターの肩に揺れるチェーンも、また本来の機能と異なる装飾として扱われることで、新たな万能性を見せる。コレクションのキーワードとなった「ORDINARINESS」と「MEDIOCRITY」は、一見ネガティブにも聞こえる言葉。しかし「ありふれたものにこそ、いかようにも可能性がある」という、前向きな姿勢がショー全体に息づいているように思えた。

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 そう感じる一方で、といっても、やはり過剰な装飾も楽しむのがトーガスタイル。後半にかけて、風を切るボリューミーなフェザーパンツから、立体的な刺繍を前面にあしらったショーツ、今シーズンのトレンドとも言えるクリノリンドレスでフィナーレを迎えた。前回とアプローチは異なるものの、一見平凡に見えるものも、私たちが視点さえ変えれば、多様な表情を見せることができる。そんなファッションの本質をも語るコレクションとなった。

TOGA 2026年春夏

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TOGA 2026年春夏コレクション

2026 SPRING SUMMERファッションショー

アーティストコーディネーター/ファッションライター

Yoshiko Kurata

1991年生まれ。国内外のファッションデザイナー、フォトグラファー、アーティストなどを幅広い分野で特集・取材。これまでの寄稿媒体に、FASHIONSNAP、GINZA、HOMMEgirls、i-D JAPAN、SPUR、STUDIO VOICE、SSENSE、TOKION、VOGUE JAPANなどがある。2019年3月にはアダチプレス出版による書籍『“複雑なタイトルをここに” 』の共同翻訳・編集を行う。2022年にはDISEL ART GALLERYの展示キュレーションを担当。同年「Gucci Bamboo 1947」にて日本人アーティストniko itoをコーディネーションする。

最終更新日:

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