原宿で6.5坪の店舗から始まり、2026年2月に創業50周年を迎えるビームス。セレクトショップの草分けとして日本のファッションカルチャーを牽引してきた同社は今年、念願のアメリカ進出や旗艦店である原宿店のリニューアルなど、数々のビッグプロジェクトを控える。次の50年はどこへ向かうのか。連載「トップに聞く 2026」ファッション企業の最終回は、2027年4月末をもって社長を退任し会長となる予定の設楽洋氏にインタビュー。
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設楽洋/ビームス社長

(したら よう)1951年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1975年に電通に入社。翌1976年に「ビームス」の設立に参加し、原宿に1号店を出店。セレクトショップ、コラボレーションの先鞭をつけた。1983年に電通を退社後、ビームスの専務取締役に就任。1987年に代表取締役に就いてから40年近くにわたり経営を率いてきたが、2027年4月末をもって同職を退任し、会長に着任する予定。
◾️ビームスとは
1976年、東京・原宿で1号店「American Life Shop BEAMS」をオープン。世界の多様なライフスタイルをコンセプトとした店舗を出店し、ファッション、雑貨、インテリア、音楽、アート、食品などを横断的に紹介するセレクトショップの先駆けとして時代をリードしてきた。コラボレーションによる価値創出を強みとし、企業との協業や官民連携でもクリエイティブなソリューションを提供している。日本およびアジアに約170店舗を構える。2025年2月期の売上高は前期比2.4%増の914億円。
目次
50周年に向け「準備は整った」
⎯⎯今年2月に創業50周年を迎えますね。
そうですね。創業50周年に向けて、そしてその先のビームスの方向性を考えるための中期経営方針を2024年に策定したのですが、これは単なる数字の計画ではなく、ビームスの考え方、ヴィジョンそのものを改めて定めようというもので、2025年は、その計画が着々と成功を収めてきた一年だったと言えます。
⎯⎯新計画の具体的な内容を教えてください。
まず一つは、企業理念を「Happy Life Solution Company(ハッピー ライフ ソリューション カンパニー)」から「Happy Life Solution Communities(ハッピー ライフ ソリューション コミュニティーズ)」へと進化させたことです。もはや「会社」という枠組みを超えて、社員はもちろん、ブレーン、お取り引き先様、そして最終的にはお客様まで含めて、ハッピーライフソリューションで繋がる「コミュニティ」を創造していく。それがこれからのビームスの役目だと定義しました。

2024年に策定したビームスの新たなヴィジョン「Happy Life Solution Communities」と、全スタッフの行動指針を示す「HAPPY」を軸にした4つのバリューズ。ヴィジョンには「明るく楽しい社会現象を起こし、全ての人が幸せになれるコミュニティをめざします」という企業姿勢を込めた。
Image by: ビームス
そしてその大前提のもとに、これから5年、10年が経ったとき「世界の中で日本と言えばビームス」と想起されるように、新たなブランディングを掲げました。これは、日本と言えば「トヨタ」や「ソニー」といった企業としてのイメージとは異なるもので、「日本と言えば富士山」「日本と言えば京都」というように、日本のカルチャーの象徴としてビームスが挙げられるような、そんなブランディングを目指しています。
日本にはホスピタリティ、ものづくりやモノ選びのセンス、食など、世界に誇るべき文化がたくさんあります。日本自体がスーパーブランドなんです。経済的な影響力でいうと日本が少し弱くなっている今だからこそ、「日本って素晴らしいスーパーブランドなんだ」ということをビームスが世界に知らしめていく。それが我々の役目だと考えています。
もとより、例えば売上ナンバー1、トップシェアといった実績に対する思いは、もちろん経営者ですからある程度はありますけども、自分自身もそうですが、うちのスタッフはそういったところに目標を定めたいわけではないと思うんですね。「日本を元気にするために我々がいたんだ」という爪跡を残すことに対して喜びややりがいを感じるタイプですから。新事業計画を策定した2024年以降は、その思いを具現化するためにより力を入れてさまざまなプロジェクトに取り組んでいきました。
⎯⎯どのような取り組みをされてきたのでしょうか。
言葉で伝えるだけでなく、具体的な形で示していくことを重視しました。例えば、長年続けてきた「人」にフォーカスする施策をさらに推し進め、スタッフ個人の活動を「I AM BEAMS」という書籍のシリーズでバックアップしたり、それが世界で評価されることで、ビームス全体のブランディングに繋がっています。





Image by: ビームス
ビームススタッフ個人の魅力を一冊の本にしたパーソナル・ブックシリーズ「I AM BEAMS」最新刊は、「ピルグリム サーフ+サプライ(Pilgrim Surf+Supply)」のウィメンズディレクター森田麻衣子をフィーチャー。
また、未来への投資として、世界初のロボットを採用し、自動化による省人化を目指した最大の物流拠点「ビームス ウエアステーション」を拡張移転し、稼働させました。店舗のあり方も「店は会いに行く劇場である」というコンセプトを掲げ、見直しました。また、セレクトショップからカルチャーショップへと進化させるため、「ビームス ニューズ(BEAMS NEWS)」でファッションだけではない新しい価値観を提示したり、ニュウマン高輪にオープンした「ビームス カルチャート(BEAMS CULTUART)」初の常設店舗では“次のビームス的世界観”を見せたりと、様々な試みを行いました。ほかにも「ビームス 鹿児島」のリニューアルでは地元のアーティストと協業、「ビームス ジャパン(BEAMS JAPAN)」を地方の観光名所に出店した際にはその土地の伝統工芸や食品とコラボレーションをするなど、地方から日本を元気にするための動きも具体的に進めてきました。
2025年は、そうした言葉だけではない政策をより着実に実行してきた一年でした。一言で言うなら、50周年とその先に向けた「準備は整った」という年ですね。





東京都江東区新砂から同区塩浜に拡張移転し、2024年9月に稼働を開始した「ビームス ウエアステーション」。延床面積9000坪の構内に、自律型ケースハンドリングロボットシステム「HaiPick SYSTEM」や、世界初導入となるリニアモーター式ロボット「CUEBUS(搬送タイプ)」など、先端自動化システムを導入することにより、将来を見据えた省人化と業容拡大への対応を図っている。
Image by: ビームス
⎯⎯日本のカルチャーの発信力が強みですが、売上においてインバウンド比率は高まっているのでしょうか。
もともとセレクトショップ業界の中でもビームスのインバウンド比率は非常に高かったのですが、さらに伸びています。全店平均で約20%強に達しており、新宿の「ビームス ジャパン」の特定フロア*に至っては75%を超えています。
*ビームスジャパンの中で、日本の銘品を扱う1階と、伝統工芸品などを揃える5階の合算
⎯⎯とても高いですね。客層に変化は?
以前は中国からのお客様が非常に多かったのですが、昨年12月に関しては、これまで2番手だった台湾からの売上がトップになりました。さらにビームス ジャパンを中心に、欧米の方が非常に増えています。特にアメリカからの売上は前年比30〜40%増と、大きく伸長しています。ポップアップショップを出店するなど、アメリカでの様々な活動がこの数字に反映されていると感じています。中国からのお客様が減った分をカバーして余りある状況で、2025年3〜8月のインバウンド売上は全体でも前年比15%増ほどになっていますね。
⎯⎯ビームス ジャパンは今でこそ成功を収めていますが、立ち上げ当初は先行きを案じる声もありました。
社内でもありましたよ。役員会議で全員に反対されましたから(笑)。
⎯⎯そうだったのですね。それが今や、ビームスを代表する業態の一つになっている。
ええ。突き通したのは間違いじゃなかった、と思っています。
念願のアメリカ進出が持つ本当の意味

取材はビームス本社の社長室で実施。壁面には50年の歩みを示す数々の名品や書籍、思い出の品々が飾られている。
⎯⎯50周年を迎える2026年、アメリカに初の常設店舗の出店を計画しています。フランチャイズという手法もありますが、現地法人を設立して臨むという点に強い意気込みを感じました。
1976年、原宿の6.5坪の店から「American Life Shop BEAMS」は始まりました。50年の時を経て、自分としては「故郷に錦を飾る」という想いが強いですね。夢の実現という側面もあります。
そしてこれは、ビームスにとって、次の50年のための非常に大きな試金石になると考えています。社内でも言っているのですが、単なる国内出店、海外出店の一つではない。売上をどんどん取っていくということではなく、これまで培ってきたビームスのモノの見方、カルチャーの捉え方、ものづくりを世界に示すことで、日本を代表する存在としてのブランディングを確立していくための挑戦です。
それからもう一つは、次のステップを踏むために、ある種の「プレミアムブランド」になる必要があると考えています。スーパーブランドになるには100年かかる。我々は高価格帯のハイブランドでもなく、手の届きやすいファストファッションのブランドでもありません。ビームスは、この先そのどちらでもないプレミアムブランドとしての地位を築きたい。そのためには、海外、特に欧米で評価されることが不可欠です。
これまでアジアでは台湾に直営店を展開し、高い認知度を得てきましたが、欧米では卸展開が中心で、業界内での知名度はあっても、一般のお客様にはまだそれほど知られていません。やはり自分たちの店を持ち、直接プレゼンテーションする機会を増やしていく必要があると判断しました。
⎯⎯日本国内での拡大は頭打ちということでしょうか。
(政令指定都市に指定される)人口50万都市にはほぼ出店し終えました。今後は「ビームス ゴルフ(BEAMS GOLF)」や「ハッピー アウトサイド ビームス(HAPPY OUTSIDE BEAMS)」のようなコンセプトに特化した店舗の可能性はありますが、国内は少子高齢化が進んでいますし、大きく成長していくにはグローバルで勝負しなければならない。アメリカ進出は、その狼煙を上げるための、私の最後の仕事。あとは次の世代に「成功させてくれよ」と、種を残していくつもりです。
⎯⎯他の地域への進出も考えていますか。
はい。アメリカへの進出と並行して、中東への出店も計画していますが、それは来期以降になると思います。
⎯⎯アメリカへの出店構想は、いつ頃から具体的に考え始めたのですか。
個人的には10年ほど前からずっと思っていましたが、具体的に動き出したのは3、4年前からです。海外に出るならパリかアメリカか、という議論が社内であり、スタッフからは「ファッションと言えばパリ」という声も多かったのですが、私はビームスの原点を考えれば、やはりアメリカだろうと。いずれパリにも出店すると思いますが、まずはアメリカで故郷に錦を飾ります。

⎯⎯アメリカ市場に日本企業が進出するも撤退するという事例を多く見ています。
大変だと思います。特に我々のようなセレクトショップという業態は、単一ブランドよりもさらに難しい。世界中から集めた商品を一つの店に集約しなければなりませんし、海外の有名セレクトショップが日本に進出するのも、現地のパートナーと組まなければ難しいのが現実です。
⎯⎯その難しさを、どう乗り越えていくのでしょうか。
実はビームス ジャパンを始めた理由の一つが、そこにあります。ビームス ジャパンであれば、日本の良いものを編集して海外に持っていくことができる。単にオリジナル商品を売るだけではなく、ビームスらしい編集力で見せていく。そのトライアルを重ねてきました。
また、ファッションに加えてアート、カルチャー、食など、様々なジャンルで得た知見を活かせるとも思っています。そして重要なのは、現地のセレブリティにどう評価されるか。そのために、これまで手の届きやすい価格帯のものを中心に作ってきた各レーベルで、高価格帯でも本当に良いもの、という海外戦略用の商品を今、組み立てているところです。
⎯⎯アメリカの店舗では、日本のブランドを紹介していくのですか。
もちろんそれもありますが、アメリカ生産のものも強化します。実は、現地法人には工場機能も内包させているんです。ですから、アメリカで生産したものを日本に逆輸入する「メイドインUSA」の商品展開も可能になります。関税の問題などを考えると、現地生産で良いものが作れれば、内外価格差を抑えながらお客様に提供できる。BtoBの拠点として、他ブランドの生産を請け負うといった複合的な展開も視野に入れています。
⎯⎯メイドインUSAの商品を楽しみにするビームスファンの方も多そうです。
担当者は大変だと思いますけどね(笑)。国内やアジアでの出店とは違う壁がたくさんありますから。サイズの問題一つとっても、例えば「ビームス プラス(BEAMS PLUS)」のSサイズは、もう私が着られないくらい大きくなっているものもあり、完全に向こうのマーケットを志向しています。ただ、そうやって着々と準備は整ってきているな、という実感はあります。

2025年12月にオープンした「ビームス プラス 大阪」。ルーツでもあるアメリカの世界観をベースにデザイン。
Image by: ビームス
⎯⎯また、アメリカ進出と並ぶ大きなトピックとして、旗艦店である原宿店のリニューアルも控えていますね。どのように生まれ変わるのでしょうか。
まず、変えない部分としては、ビームスの「発信基地」としての役割です。原宿店は、地方の店舗とは少し違う、より先鋭的で、一歩先のスタイルを提案する場所。そのとがった姿勢は変わりません。
進化する部分としては、「人」をより際立たせるということです。「店は会いに行く劇場」というコンセプトをさらに推し進め、毎週来たら何か違うイベントをやっている、というような場所にしたい。

原宿店の休業中は、「ビームス 原宿 アネックス 」の2階で仮店舗「ビームス 原宿【仮店舗】(BEAMS HARAJUKU LIMITED STORE)」を営業。
Image by: ビームス
⎯⎯スタッフ個人をフィーチャーしていく?
その通りです。個々のスタッフがスターになっていく、世界で認められていくための「実験場」にしたい。すでに何人かそういったスタッフが出てきていますが、もっとそういう才能を輩出していくための基地にしたいと思っています。
⎯⎯そもそも、そうした社員一人ひとりの才能は、どのように発見しているのですか。
ビームスは、かなりオープンな会社なんです。通常なら何段階も承認が必要な企画でも、スタッフが直接私のところにプレゼンに来ることも珍しくありません。それで形になったプロジェクトは数多くあります。例えば「フューチャー アーカイブ(FUTURE ARCHIVE)」もそうですし、昔で言うと「ビームス ボーイ(BEAMS BOY)」や「フェルメリスト ビームス(Vermeerist BEAMS)」も、担当者が「こんなことをやりたい」と直接プレゼンに来たところから始まっています。
他にも、年に一度「TANE.MAKI(タネマキ)グランプリ」という、スタッフが「次のビームスはこうあるべきだ」というアイデアをプレゼンする機会を設けています。100を超えるアイデアが集まり、グランプリに選ばれた企画は、役員がついて事業化に向けて動きます。そういった、個人の才能や興味が可視化される機会が、他社に比べて非常に多いのではないでしょうか。長年「人」を大事にする文化を育んできたことで、「自分を表現すればチャンスがある」という意識は、かなり浸透してきていると感じます。社長室もオフィスの一番手前にあっていつもオープンにしているので、他の会社の社長よりは話しやすいんじゃないかな(笑)。
⎯⎯本社スタッフ以外に、例えば販売スタッフの方も対象になるのですか。
もちろんです。だから、イベントの企画一つとっても、私が知らないうちにどんどん進んでいるものがたくさんあります。「誰が許可したんだ?」みたいなものもありますよ(笑)。BtoBの案件でも、個人の趣味や特技が仕事に繋がるケースが非常に多い。社内にDJが何人いるんだ、っていうくらい(笑)。よほどの専門知識以外は、社内の人材で完結できる体制ができています。
2026年のスローガンは「AIより愛」
⎯⎯以前のインタビューで、ビームスの成長の柱として「BtoB」「サステナビリティ」「デジタル化」の3つを挙げられていました。この方針に変わりはありませんか。
サステナビリティやデジタル化は、もはや当たり前に取り組むべき前提となっています。その上で、今後の大きな成長の柱となるのは、「新しい形のB2C」「BtoB」、そして「グローバル」。この3つだと考えています。
⎯⎯2027年2月期に売上高1000億円を目指すそうですね。この目標達成の鍵は何でしょうか。
やはり一つは、先ほどお話しした「グローバル」の成功です。アメリカ進出が軌道に乗ることが大きな鍵になります。もう一つは「BtoB」事業がどこまで伸びるか。毎年20〜30%増で成長していますが、案件をこなすプロデューサー的な人材のキャパシティも関わってきますので、その体制をどう整えていくかが重要です。
⎯⎯設楽社長は毎年、その年を象徴するスローガンを掲げていますよね。記念すべき2026年のスローガンを教えていただけますか。
まず、50周年スタートのスローガンは「Ready, Happy, Go!」です。そして、2026年単年のスローガンは「AIより愛」。もちろん、我々もAIを積極的に活用していきます。しかし、AIの時代が進めば進むほど、忘れてはいけないことがある。それは、人肌の温もりです。AIはハグをしてくれませんから。

毎年直筆のスローガンを制作。
⎯⎯設楽社長らしい、温かみのあるスローガンですね。
もし企業の目的が、最短ルートで成功し、利益を最大化することだけであれば、経営判断はAI社長に任せるのが一番いい時代になるでしょう。過去の膨大なデータを分析して、どちらに行けば儲かるかを弾き出してくれますから。でも、ビームスは違う。右に行った方が儲かるかもしれない。でも、左に行った方が面白い。そう思ったら、僕らは左に行く会社なんです。
僕は、仕事には3種類あると考えています。言われたことをこなす「Labor(労働)」、専門性を持つ「Work(仕事)」、そして忘れがちなのが、楽しんで価値を創造する「Play(プレイ)」です。野球選手やサッカー選手がプレイヤーと呼ばれるように。どうせなら我々は、ハッピーを作る、時代を作る「プレイヤー」でありたい。
デジタルが進めば進むほど、人はアナログな温もりを求めるようになるはずです。その価値を、ビームスは絶対に忘れてはいけない。そんな想いを「AIより愛」という言葉に込めました。
⎯⎯2026年は、設楽社長にとって社長としての執務を全うする最終年度になると伺っています。
老害になりたくない、という想いがまずあります。数年前にスタッフの役職定年を決めたとき、それなら役員も率先して定めるべきだと考え、自ら社長は75歳まで、と決めました。それに従う、ということです。
それに、自分自身の変化もあります。昔は海外出張が楽しくて仕方がなかったのに、最近は少し億劫に感じたりする(笑)。でも、本当に伸びている企業の社長は、例えば「中国に進出する」となったら「まず俺が半年行ってくる」くらいの気概でやっている。少しでも億劫だと感じてしまうようではいけないな、と。
もちろん、50周年を見届けた後は会長という立場で会社には残ります。経営の数字などマネジメントの部分は新しい経営者に全て任せ、口出しはしません。その代わり、自分の得意分野である人脈を繋いだり、まだボケない限りは「こう来たか」という新しい発想を提供したり、そういった部分で会社に貢献していきたいと思っています。AIに僕が喋ったことを全部叩き込んで「AIタラちゃん」を作るのもいいかもね。僕が例えば亡くなった後も僕がVRで出てきて、質問すると答えてくれるような(笑)。
⎯⎯(笑)。新社長に関する情報はまだ開示されていませんが、新しい社長になる方にメッセージを送るなら?
「自分が予測できない未来を作ってくれ」と伝えたいです。単にファッションで世界制覇するといったことではなく、「ビームスがこんなこともやり始めた」「こんな面白いハッピーを提供してくれるのか」と、世の中を驚かせるような、時代を変えるような存在であり続けてほしい。どういう形でそれを表現してくれるのか、すごく期待しています。
⎯⎯先ほど「AIより愛」というお話がありましたが、AIが進化していく時代に、ファッション業界で必要とされる人材とは、どのような人物だとお考えですか。
一芸に秀でた人間ですね。AIに「次のトレンドは何か」と聞けば、どの店も似たような品揃えになってしまうでしょう。その中で、「こう来たか」「この手があったか」という、AIが導き出さないような答えを見つけられる人間が重要になります。パイは小さいかもしれないけれど、誰もやっていないことを見つけ出す。それには、ある種偏っているかもしれないけれど、鋭い審美眼を持った人間の感覚が必要です。賛成多数では、新しいものは生まれませんから。
⎯⎯そうした持ち前の才能やセンスを、自分自身で見つけるのは難しいことのようにも感じます。
「この人は何か持っているな」というのは、分かりますね。それは長年の経験で培われた直感かもしれません。
僕自身は全く逆の、器用貧乏なタイプだと思っているんです。何でも一応はこなせるけれど、その道を極めたプロには全く敵わない。だからこそ、そういうプロの人たちを集めて編集する「セレクトショップ」という業態が生まれたんです。自分がデザイナーとして優れていたら、デザイナーズブランドをやっていたでしょう。

取材当日に着用したスーツは「カスタムテーラー ビームス(Custom Tailor BEAMS)」で作ったオーダーメイド。「僕はブルーが好きなんですが、明るいブルーのスーツは持っていなかったなと思って」と設楽社長。コーデュロイ生地はゼニアのもの。
⎯⎯その直感は、どうすれば磨けるのでしょうか。
たくさんの人に会うことです。特に、異業種の人と。昔は会う人の8割がファッション業界でしたが、今は8割以上が全く違う業界の人です。そうすると、ファッションという狭い世界だけでは見えない、社会の大きなうねりが見えてきます。
その中で、「本物」を見抜く訓練をする。例えば、ものすごくおしゃれに早い人って、一見すると変人に見えるんです。それが本当に時代を先取りしているのか、ただのダサい人なのか、すぐには分からない。でも、たくさんの人を見て、半年後、一年後にその人がどうなっているかを追い続ける。それを繰り返していると、だんだん話しただけで直感で分かるようになってくるんです。
経営者として、企画の最終判断するのは、この直感です。それによって会社が傾くかもしれないというプレッシャーの中で、決断を下し続ける。7勝3敗なら良い方です。その勝率を維持するために、直感を磨き続けてきました。
⎯⎯最後に、社長として迎える最後の一年、2026年をどのような年にしたいか、改めてお聞かせください。
何よりも、50年間の感謝を、お客様、お取引先様、業界の皆様に伝える一年にしたいですね。そして、その先のビームスの方向性を示す期間にしたい。単純に言えば、みんなに楽しんでもらう「お祭り」です。堅苦しい周年行事ではなく、ビームスらしく、はっちゃけたい。この機会だからこそできる、普段は難しいような挑戦的なコラボ商品も含めて250以上企画しています。社員みんなが楽しみながら挑戦している、その熱量を届けたいですね。
⎯⎯設楽社長にとって、ビームスとはどんな存在ですか。
原点に戻りますが、やはり「Happy Life Solution Communities」ですね。ハッピーな未来を一緒に作っていく仲間たち。もはや会社というより、そういう「集団」という感覚です。この先の50年も、その輪をどんどん大きくしていくだけです。

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