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【トップに聞く 2026】マッシュHD近藤広幸社長 ファッション市場参入から丸20年、課題はグローバルへの挑戦

Video by: FASHIONSNAP

 「ジェラート ピケ(gelato pique)」「スナイデル(SNIDEL)」「セルフォード(CELFORD)」などのブランドを手掛けるマッシュホールディングス。「2027年までの上場」を目標に掲げる同社は、2025年8月期の連結業績で5期連続の増収増益を記録し、営業利益は2年連続で100億円を突破した。1号ブランド「スナイデル」が2025年に20周年の節目を超え、更なる飛躍を誓う同社のトップ 近藤広幸社長に話を聞いた。

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近藤広幸/マッシュホールディングス社長

近藤広幸社長ポートレート

(こんどう ひろゆき)1975年生まれ。バンタンデザイン研究所卒業後、建築デザイナーを経て、1998年にCGグラフィックの制作を手掛けるスタジオ・マッシュを設立。1999年に株式会社マッシュスタイルラボに社名変更。2005年からファッション事業に参入し、「スナイデル」などを開始。2012年にマッシュホールディングスを設立。ビューティ、フード、直近では不動産、ライセンスなど幅広い事業を手掛けている。

Image by: FASHIONSNAP

■マッシュホールディングスとは
グラフィックデザイン会社「スタジオ・マッシュ」として1998年に設立。翌1999年に「マッシュスタイルラボ」に社名変更。2005年にウィメンズブランド「スナイデル」を立ち上げ、ファッション事業に参入。2010年に子会社「マッシュビューティラボ」を設立し、ビューティ事業を開始。2012年にはホールディングス制を採用し、「マッシュホールディングス」設立。翌2013年に全部門を完全子会社化。2022年に米投資ファンド ベインキャピタルに株式の過半数を売却。2027年までの上場を掲げている。2025年8月期の業績は売上高が前期比13%増の1363億円で、営業利益は非公開ながら100億円を突破。

逆風の2025年、体制改革に成果

⎯⎯2025年を振り返って、どんな一年でしたか?

 結構手ごわい年だったなというのが率直な感想です。止まらない円安や政治的な問題、人件費や施工費の上昇もありましたし、我々ならではの部分では、西武池袋本店の刷新心斎橋オーパの閉店(2026年1月)、藤井大丸の建て替え(2026年5月〜)、福岡パルコの再開発(2026年以降)など、長年取り組んできた店舗からの立ち退きラッシュが決まっていきました。そういった大局的な困難と、局地的な困難が、いっぺんに振りかかってきた年だったなと。ただ、困難によって相殺された部分が大きいながらも、新規ブランド、既存ブランドともに事業自体は好調で、結果的に2025年8月期は増収で着地することができました。環境が追い風だったなら、すごく良い一年になったとは思いますね。

⎯⎯2022年末、ベインキャピタルに株式を売却した時、「3〜5年後に上場」ということを目標に掲げていました。3年が経ちましたが、その目標に対して今何合目まで来ていますか?

 準備としてはかなり整ってきていると思いますが、国際情勢や為替変動といった外的要因を見ながら、タイミングを見計らっていくことになると思います。事業の成長自体で言えば、もう8〜8.5合目くらいには差し掛かっているのではないでしょうか。

 現在は既存ブランドの更なる強化と、メンズ、キッズ、ライセンスといった「3本の柱」として掲げている事業の完成度アップに努めているところです。とはいえ、ある一定の合格点はいただける状態にはあると思います。

⎯⎯具体的な上場予定時期については。

 多少の前後はあるかと思いますが、当初掲げていた期間から変更はないです。状況を見ながら、臨機応変に対応していきます。今言えるのは遅くとも2027年までには、ということですね。

⎯⎯去年のインタビューでは2025年のアクションプランとして部署の新設や責任の明確化といった体制の再構築を掲げていました。

 これに関しては発展途上という感じですかね。若手社員を中心に会社が抱えている課題を解決するための専属チームを作って役員会でプレゼンテーションしてもらったりと、組織改革の地盤はできてきたと感じていますが、なにぶんまだ成長中の会社ですから、体制が変わってすぐに歯車が順調に回りだすというのは難しい部分があります。とはいえ少しずつ成果も出てきていますし、力を発揮しやすい組織に変わってきたのは間違いないと思います。今後はトライアンドエラーを繰り返して、より練度を高めていきたいですね。

⎯⎯それによって、具体的にはどんな成果が?

 例えば「コスメキッチン(Cosme Kitchen)」では、エース品番がすぐに売り切れてしまい、10億円規模の機会損失に繋がっているという課題がありました。そこで、理論上どれくらいまでなら仕入れを増やしても問題ないかという仮説を立て、失敗を恐れずに限界まで在庫を積み増す「積み増しプロジェクト」をやってもらいました。店長やECチームに対しては「なぜ会社としてこの商品の打ち出しを強化しているのか」を説明するなど、マインドの改善にも取り組みました。

 結果的に8億円くらいは積み増しできたと思いますね。担当した社員も自信に繋がったはずですし、これに関しては成功と言えるんじゃないかなと。こういった取り組みを他のブランドや事業会社でも増やしていくのが今後のテーマになっていくと思います

「3本の柱」が2桁増と大きく成長 中国事業の展望は

⎯⎯成長のための「3本の柱」と位置付け、売上高100億円を目指してきたメンズ事業、ライセンス事業、キッズ&ベビー事業について。ライセンス事業は2025年8月期で100億円を突破しましたが、それぞれの進捗について聞かせてください。

 順調です。2024年12月から2025年11月までの1年間の実績では、メンズ事業が前年同期比5%増、ライセンス事業が同23%増、キッズ&ベビー事業が同24%増と、それぞれ成長しました。

 メンズは、我々にまだまだ知見が足りないので、チャレンジの途中です。日々簡単ではないなと実感しています。一方で手応えを感じている部分としては、「ジェラート ピケ オム(GELATO PIQUE HOMME)」の新しいチャレンジで、より男性をターゲットにした打ち出しをしてみようということで、温めてきた「ドラゴンクエスト」とのコラボレーション企画を実施しましたが、想像以上に反応が良くて。ブランドとしての売り上げが前年同期比41%増(9〜10月)となるなど良い影響がありました。「ユニセックス」という中途半端な言葉ではなく、男性が夢中になるコラボで売上を獲得し、かつ女性にも買ってもらうというのは至難の業だと思っていましたが、結果的には大成功でしたね。

アイテム画像

ジェラート ピケ オムと「ドラゴンクエスト」のコラボレーションアイテム

Image by: マッシュホールディングス

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ジェラート ピケ オムと「ドラゴンクエスト」のコラボレーションアイテム

Image by: マッシュホールディングス

⎯⎯ライセンス事業では、「バブアー(Barbour)」が2025年8月期で前期比66%増と急拡大するなど絶好調。今後も新たなブランドを増やす予定はありますか?

 私たちは自らに、「サステナビリティにコミットしているブランドしか手掛けない」というルールを課しています。ニュージーランド発の自然派ホームケアブランド「エコストア(ecostore)」はそれの最たるものですし、「レスポートサック(LeSportsac)」も遠くない未来に使用するナイロンのほぼ100%をリサイクル素材に変更すると発表しています。ジャケットをリワックスして長く着続けることを提案するバブアーもそうです。今後も、闇雲に取り扱いブランドを増やすのではなく、我々の企業理念に合ったパートナーが見つかれば一緒にやっていきたいなと思っています。

バブアー原宿キャットストリート店

バブアー原宿キャットストリート店 内観

Image by: マッシュホールディングス

⎯⎯ライセンス事業の課題は?

 ライセンス事業は、あくまで本国から日本の市場を預かっているということです。他国にもライセンスパートナーがいる中で、日本(マッシュHD)が一番アグレッシブにブランディングやファン作りに努めていて、有効な投資をしていると、国際的に圧倒的な評価を得ることが今後の課題。世界中のパートナーに引けを取らないどころか、「あなたたちも日本を真似しなさい」と言われるようにならなければと思っています。

 バブアーでは既に、出店やイベントの手法において「アジアの中のお手本」という評価を得るようになってきています。グローバルで日本の売り上げシェアが圧倒的に大きいレスポートサックに関しても、日本が各国のお手本になるべきです。

レスポートサック表参道店
レスポートサック表参道店

レスポートサック表参道店

Image by: マッシュホールディングス

 エコストアはいよいよ売り上げが10億円の大台を突破しましたが、洗剤という重い液体を日本に輸送する際のCO2排出量が課題でした。そこで、エース品番の日本生産について本国と合意し、2026年8月期中にスタートします。これにより、CO2を大幅削減できるほか、お客様によりお求めやすく購入いただける販売キャンペーンの開催なども可能になります。サステナビリティに寄与しながらコストを削減し、お客様に提供する準備を着々と進めているところです。

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Image by: マッシュホールディングス

⎯⎯2026年8月期には、海外売り上げで前期比30%の成長を目指しています。中国の市況が依然厳しい中で、どのように業績を伸ばしていきますか?

 もちろん中国市場は厳しいですが、日本のブランドは、やはりいいものを見分ける眼がしっかりしていると思う。国内で支持される地力をつければ、やり方に問題がない限り中国でも韓国でも東南アジアでも、どこに出しても通用すると思っています。現状を恐れて投資を抑えるのではなく、追い風が吹いた時に一気に成長させるための下準備をしておくことが大切です。きっとその時は来ますから。

 ヨーロッパのブランドの状況を見ても、やはり中国をはじめとしたアジアへの投資は非常に大きいので、マッシュHDとしても韓国や中国、東南アジアには今後もしっかり力を注いでいきます。並行して、ヨーロッパ、北米地域の市場研究も進めていきたいですね。

⎯⎯政治問題が影を落とす中でも、中国の出店計画に変更はない?

 元々不安要素がある出店をあえてこの時期にやる必要はないと思うので、そういった出店については抑えます。ただ、それ以外の自分たちの力で成功を勝ち取れるであろう出店に関しては、躊躇わずに出店していきます。ブランドは、スナイデルとジェラート ピケがメインで、新規出店数は2025年より増える見込みです。

 また、現在中国の有力な小売業者の方々と話し合いを進めており、フランチャイズ(FC)という形での出店がかなり増えそうな気配です。自分たちの直営出店だけでなく、目の届かない遠方のエリアに関しては、初心に戻ってFCオーナーと手を取り合いながら出店を加速させていきます。市況悪化により、この2年ほどはFCは凍結状態だったのですが、オーナーにお会いしてしっかり話をして、重い腰を上げていただくことになりました。

⎯⎯注力しているサステナビリティについてもお聞きします。2030年までに、2019年比で自社オフィスや店舗のCO2排出量を40%削減することを掲げていますが、進捗は?

 かなり投資もして、人も割いていることで想定していた以上に良いペースで進んでいます。2025年末現在で30%まで来ているので、目標を2030年までに50%削減に上方修正します。2022年には取引先である繊維商社等10社とともに独自のサステナブルアライアンスを立ち上げ、2025年には裁断くずを再利用して裏地にする取り組みもスナイデルで始めました。また、CO2削減に協力的な工場を監査しランク別の認定書を発行するようにしているのですが、工場サイドの意識も近年高まっており、対象工場の認定ランクも年々上がっています。

⎯⎯アメリカの政権交代もあって、サステナビリティに対する世の中のムードが若干萎縮しているような印象も受けます。

 日本のファッション業界では、依然としてサステナビリティへの関心は高く、百貨店やファッションビルでも多くの関連イベントが行われており、モチベーションが下がっているようには見えません。アメリカでも、特に都市部はサステナビリティに強い関心と使命感を持って取り組んでいると思いますね。トランプ政権の姿勢は、労働者の生活を苦しめるようなやり方でのサステナビリティの追求への疑問提起と理解しています。

若い力は「会社にとって一番のビタミン」

⎯⎯マッシュグループの1号ブランド スナイデルは、2025年が20周年のアニバーサリーイヤーでした。節目を経て、次の20年でどんな企業を目指していきますか?

 今までは、国内のファンを掴むということを大きなモチベーションとしてやってきました。でも、ブランドビジネスが最終的に目指すのは、国際的な評価を得て、言語の壁を超えて服や商品を愛してもらうこと。それがブランドビジネスのダイナミズムだと思うんです。だから、ここから20年かけて、日本だけではなく、世界中に根強いファンを持つブランドを育てていく。そのためにどういうスキルを身につけ、どういう努力をしていくべきなのか。それを2026年からは合言葉や口癖のように言っていこうと思っています。会社全体で目線を合わせてしっかり考えながら、ジェラート ピケやスナイデルを筆頭に、グローバルでのブランドの知名度を10倍、100倍にしていくことを3年から5年かけて取り組んでいきたいです。

⎯⎯やはり、グローバル化が次なる大きなステップですね。

 スナイデルは中国ではV字回復して伸び始めていますし、ジェラート ピケもルームウェアという新しいカテゴリーが中国に徐々に浸透し、リピーターが増えている。そのように「継続は力なり」ではあるんですが、中国でもっとセンセーショナルなPRもできたのではないかと反省する部分もありますし、2017年にニューヨークに現地法人を立ち上げた北米事業も同様です。シンガポールを拠点にした東南アジアビジネスもコロナ禍で一旦見送っています。それらの課題を再考しながら、どうやってグローバルを攻めていくか。北米、東アジア、東南アジアに加え、ヨーロッパについても今後本格的に動き出そうと思っています。

⎯⎯2025年春は、新卒で過去最多となる232名を採用。2026年春の採用はどれくらいになりそうですか?

 来春は過去最多を更新する250人規模の採用を予定しています。長年働いていると、壁に当たったり、疲れたり、飽きてしまったりする人も多いと思うんです。でも新卒社員が入ってきてくれると、その初々しさから圧倒的なエネルギーをもらえて、自分も背筋が伸びて「恥ずかしくない仕事をしなきゃ」って思うんですよ。若い力は会社にとって一番のビタミンであり、アンチエイジングですよね。入ってくれた人たちががっかりしないような会社にしていくことが、我々の責務だと思っています。

⎯⎯今後も採用人数は増やしていく?

 そうですね。会社の規模を大きくすること自体が目的ではないですし、この時代にこれだけの人数を採用することは非常に大変です。でも、AIが発達すればするほど、現場の力、接客の力、そこでしか体験できないことの価値は上がっていきます。プロによる接客の価値にはますます光が当たって、有料でなければ接客を受けられないエース販売員が登場してもおかしくない世の中になっていくと思います。人間同士の対話から生まれる感動は、今後さらに希少なものになっていくと思いますね。

近藤広幸社長の釣りの写真

近藤社長の趣味は釣り。直近で最大の釣果は43kgの「GT(ジャイアント・トレバリー)」というアジの仲間だという。

Image by: 近藤広幸

村田太一

Taichi Murata

群馬県出身。男子校時代の恩師の影響で大学では教員免許を取得するも、ファッション業界への憧れを捨てきれず上京。某衣料品メーカーを経て、2021年にレコオーランドに入社。主にビジネスとメンズファッションの領域で記事執筆を担当する。「ジョジョ」は人生のバイブル。幼少期、地元の少年野球チームで柄にもなくキャプテンを任せられた経歴を持ち、今もプロ野球やWBCを現地観戦するほどの野球ファン。実家が伊香保温泉の近くという縁から、温泉巡りが趣味。

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