【トップインタビュー】「服は必需品ではない」ライザップがアパレル企業を買収するワケ

RIZAPグループ 代表取締役社長 瀬戸健 Photo by: FASHIONSNAP

 ライザップグループが今年、新たにジーンズメイトと堀田丸正を買収し、傘下のうち8社がアパレル関連会社となった。自社ブランドを立ち上げるなど新規事業が目立つが、市場規模が縮小しているアパレル業界への参入に勝算はあるのか。創業者でグループトップの瀬戸健社長に聞くと、従来とは異なる考え方が見えてきた。

■クッキーから英会話まで、共通点は

ーグループの事業ドメインを「自己投資産業」としていますが、まずこの意味から伺っていきたいと思います。

瀬戸健 ライザップグループ 代表取締役社長:まず「人は何が幸せなのか」という考えが背景にあります。戦後の日本や発展途上国にとっては、食べられることや今日生きていくこと自体が幸せだった。ですが生活が豊かになると、他人にどう見られるか気にしたり、自分の存在価値を考えるようになって、生きる意味を見出さないとならない。だから発展途上国に比べて日本人の幸福度数は低いとされていて、ある意味で豊かさや余裕が心の貧困を作っているとも言えると思います。

 同じく物の意味や目的も変わっていますね。衣服は昔、生きるための必需品でしたが、今は生きるために買っているわけじゃない。欲しているのは、自分の価値を高めてくれるものや、人生の価値を実感できるようなことなんです。服も時計もバッグも、必需品から自己投資に変わっているんですね。人は何を求めていて、何が幸せなのか。その考えの先にあるものを全て、自己投資産業として取り組んでいます。

ー美容・健康関連から、今ではアパレル、エンターテインメント、医療分野まで事業領域を広げています。

 最初に事業として形になったのは「豆乳クッキーダイエット」でした。その後に美顔器「エステナード」の会社を買収したんですが、その時は周りから「なぜ?」と言われましたね。でも僕の中では共通点が見えていたんです。お客様はただクッキーを食べたくて買っているのではなく、痩せてきれいになりたいとか、自信を持ちたいと思っている。美顔器も、きれいになりたい、人から認められたいという人が買う。大事なのは「手段」ではなく、求められている「結果」なんです。

ーテレビCMの影響もあって、今では肉体改造のライザップという印象が強いですね。

 パーソナルトレーニングも考え方は同じですよ。トレーニングをしたいのではなく、健康的に痩せたいからトレーニングに通うんです。我々が「結果にコミットする」と言っているのは、お客様から「手段」ではなく、痩せたという「結果」に対してお金を払って頂いているから。もし達成させることができなければ全額返金します。ゴルフや英会話の事業も同じで、上手く打てるようになる、英語が話せるようになる、そういう結果を求めますよね。

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■ジーンズメイトはイケてなかった

ーグループ傘下の8社がアパレル関連ですが、ファッション分野についてはどのように考えていますか。

 自分の価値を高めるという目的において、ファッションは必須だと思っています。例えばライザップのお客様で、体重が10キロ落ちると鏡を見る回数が増えて、体のラインが出る服を買うようになり、自分にお金を使うこと自体が楽しくなったと聞きました。ファッション=モノだけではなく「自分の価値を高めてくれるもの」として考えています。

ーアパレル業界全体としては停滞感が続いている状態です。

 なぜかは明確だと思います。お客様は、服を必需品として求めているわけではないので、本当に求められていることに対応できているかどうか。着ているということで自信が持てたり、憧れられるようなものが提供できているかどうかですよね。例えば子会社のジーンズメイトの業績が落ち込んでいたのは、それができていなかったのでイケてなかったんだと思っています。

ージーンズメイトについては今年1月に子会社化してから、どのように取り組んでいますか?

 店の雰囲気も雑多な印象があったので、世界観を作り直して利益率を上げていくために、ロゴや店舗から全てを変えているところです。客層も、男性が多かったところを女性の比率を高めようとしています。「行きたい」と思われる店にして、「着たい」と思われる物を売るということです。

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ー今年はグループ会社の株価が軒並み高値を更新していますが、実際はどういった企業が伸びているのでしょうか。

 アパレルECの夢展望は6〜7億円という赤字でしたが下期は黒字確定になりましたし、今期は昨対1.5倍くらいで急速に伸びています。補正下着のマルコも8億円くらいの赤字だったのですが、去年8月にグループ化してから半年間で、通期1億3,000万円の黒字にリカバリーしました。足元の業績もいいですね。パスポートはテスト中ですが良くなってきました。

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ーM&Aも通常と少し変わっているようです。

 M&Aについては普通の会社と違うと思います。通常だとオーナーが株を売却して、会社は元のオーナーから手が離れますね。だから極端な話、少しでも高く買って欲しいと思うでしょう。でもうちの場合、8社の上場企業を傘下にしていますが、出資させてもらってそれぞれのオーナーと一緒になって成長していく連携型、もしくは救済型というか。M&Aの新しいかたちにしていきたいと考えています。

ー投資する会社の条件は?

 社長次第という部分は大きいですね。どんな方なのか、どんなカルチャーを作っているのか、といった部分は重要だと思うので。グループ会社では自分が一番歳が下の代表ということもあって、社長同士で経営会議をしていても普通の親会社と子会社の関係には見えないかもしれません(笑)。厳しい意見を頂くこともありますし。

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