Masahiro Kubo

ファッションは、アートともっと交流すべき

久保雅裕

アナログフィルターJournal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)編集長

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3日目の夜、オーストリアのアートとファッションのイベント「VIENNA ON THE MOVE(ウィーン・オン・ザ・ムーブ)」のレセプションパーティーが東京・南青山のライトボックススタジオで開かれた。多くのデザイナーやアーティストが来日し、来場者と交流を深めた。この展示は19日まで開かれ、ウィーンで活躍する9つのファッションブランドの2016-17年秋冬コレクションと6人のコンテンポラリー・アーティストの作品を見ることができる。キュレーターは、ウィーンのセレクトショップ「SIGHT」のオーナー、Vivien Sakura Brandl-Klingbacher(ヴィヴィエン・さくら・ブランドル-クリングバッハー)氏とウィーン美術アカデミーで芸術学を担当するAndreas Spiegl(アンドレアス・シュピーグル)氏の二人。

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アート分野では、「マイグレーション(移民)」を作品テーマに掲げ、会期中の18日16~17時に、アートとファッションの中における「移民」について、日本でも活躍しているコンテンポラリー・アーティストのジュン・ヤン氏、ファッションデザイナーの大前太郎氏、キュレーターのアンドレアス・シュピーゲル氏によるトークセッションが行なわれる予定だ。

ウィーンは、古代ローマ時代はもとより、中世から20世紀初期のハプスブルグ王朝崩壊まで、長期間に渡って「人種のるつぼ」だったこともあり、異なった文化を持つ人々によって、長い年月をかけて、独自の文化を育んできたが、大規模な移民・異文化問題がうずまく現代のウィーンで、ファッションとコンテンポラリーアートの分野で活躍するアーティストが様々な文化的背景を追及し、作品化している。

畳のサイズに見立てたキャンバスにモノグラムや幾何柄を表現したアーティストは、初来日ということで、興奮気味に「東京が気に入った」と語っていた。

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さて、大都市になればなるほど、アート界とファッション界の隔たりが広がってしまう。それは産業として成熟することにより、ある種の縦割りが蔓延するからだ。そういう意味では21世紀初頭のドイツ・ベルリンや北欧の小国、デンマーク・コペンハーゲン、スウェーデン・ストックホルム、バルト三国のラトビアなどを、この時期訪れた際に感じた、未成熟ではあるが、雨後の筍のごとく、アーティストのアトリエやデザイナーのアトリエ兼ショップ、若い建築家達が垣根無く交流し、コミュニティーを形成していた事を思い出す。

ベルリンでは、かつての東ベルリンに位置するミッテ地区にある中庭を囲んだ「ホーフ」と呼ばれる建物に若手の建築家、アーティスト、ファッションデザイナーも拠点を構え、日常的に交わっていた。コペンハーゲンでは、あまり治安の良くないベスタブロ地区が再開発で改善するや否や、こうした若手クリエイターの拠点となっていった。スペイン・マドリードでは、90年代にひと足早く、フエンカラル通りやチュエカ広場の辺りで同じ現象が起こっていたことを思い出す。比較的家賃の安い地域が彼らのネスト(巣)となって、新しいカウンターカルチャーを醸成する。

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どの都市においても、こうした地域が必ずあり、常に新しい文化を生み出していくのだが、やはりシステム化された先進国では、その業界の壁が高くなる。日本においても、その高い壁を打ち破って、新たなカウンターカルチャーの巣窟を作るために、ファッションがアートと交流するアプローチをより強めるべきだと思う。

一方で、オモロイものを探し出すという視点から見ると、かつて共産圏だった東欧諸国が、あの頃(21世紀初頭)の西欧の小国と同様なムーブメントを巻き起こしていくのかもしれない。いや、そう期待したい。


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