Toru Ogawa

ファッション×テクノロジーのうねりが始まった「ファッション進化の芽を探せ!~東コレ取材日記①~」

小川徹

放送局プロデューサー

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コレクションウィークの時期には、様々なファッション関連のイベントが開催される。

3月12日、渋谷パルコで「ファッションテクノロジーラボ」というちょっと変わった「研究機関」の設立パーティーが開かれた。今のところ研究員は二人。以前東コレにも参加していたブランド「エトヴァス・ボネゲ」のデザイナー・オルガと、ITエンジニアの柳澤慧が、ファッションとテクノロジーを駆使して新たな未来を作り出すために開設したものだ。

同時期にオープンした「エトヴァス・ボネゲ」の直営店「ラボショップ」店内で、彼らが生み出したデジタルツールを体験できるという仕組みだ。

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この日は、プロジェクションマッピングを通じて、客が手描きしたデザインを最新コレクションの服に投影できるアプリや、AR技術を使って、商品の下げ札にかざすとブランドのECサイトに飛ぶ仕組みなどが公開されていた。

オルガは、ブランドの初期から3Dモデリングソフトを使ってデザインを行うなど、自らデジタル技術を使いこなす稀有なデザイナー。以前筆者がインタビューした際には、「ファッションを作るテクノロジーがどんどん進化しているのに、使わない手はない。」と話していた。それから3年が経ち、いよいよその動きを本格化させようとしている。

今後、「ファッションテクノロジーラボ」としても、ファッション関連の人材教育のためのアプリ開発や、服作りを進化させるためのシステム開発などを行っていきたいという。
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この数年、ファッションの世界に最新のテクノロジーを導入しようという動きが注目を集めている。3月初旬の週末、IT業界とファッション業界の融合で新たなファッションを生み出していこうという「ファッションテックサミット」というイベントが、お茶の水のデジタルハリウッド大学院大学で開催された。

その中で実施された「ファッションテックハッカソン」では、ITエンジニア、ウェブデザイナー、ファッションデザイナーら20人が5組に分かれて、2日間で「未来のファッション」をテーマとした新しいプロダクトやサービスの開発を競い合った。

優勝したのは、ヘッドマウントディスプレイを着けて、ヴァーチャルリアリティ(VR)内で、服を試着、購入、更にその服を着た自分のアバターがファッションショーに参加できるという提案。

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興味深かったのは、VR内で他の人と交流できるという、かつての「セカンドライフ」のようなコンテンツだった。VR内での体験の共有は、ほかの領域でも、まだあまり実現していない新しい技術。今回の提案は、VR内での服の販売という枠を超えた、新たなファッションの楽しみ方を提案したものとして高く評価された。

もう一つ面白かったのは、今回の優勝者した20代の青年が、去年までインドでITベンチャーを起業していたこと。たまたま日本のテレビ番組を見たことがきっかけで、VRの魅力に目覚め、日本に帰国し、VR開発を始めたのだという。特にファッション分野での可能性を強く感じて、今回のハッカソンに参加したのだという。

こうした業界や空間を超えた新たな人材との出会いが、ファッションの可能性を広げてくれるのかもしれない。

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IT技術の他にも、急速に進化するバイオテクノロジーもファッションへの応用が進みつつある。

去年日本でも、強靭さで知られる「蜘蛛の糸」の人工合成に成功した山形県のベンチャー企業「スパイバー」が、アメリカのスポーツウェアメーカー・ゴールドウィンと、極地用のウェアを開発し、話題となった。

アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボが先ごろ発表した、納豆菌を使った服は、デザインの面からも興味深い。

「セカンドスキン」と名付けられたこの服は、水分を含むと、松かさのように広がる納豆菌の性質を利用して、着る人が、汗をかいたり、体温が高くなったりすると「呼吸する」服として開発された。デモ映像では、皮膚に密着する「セカンドスキン」を着けたダンサーが踊っている間に、背中につけられた通気用のフラップが開き、ダンサーが天使に変身したかのように見えた。
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こうしたファッションとテクノロジーの未来について、「ファッションテックサミット」の主催者の一人、デジタルハリウッド大学院大学の杉山知之学長は、こう語る。
「ファッションや医療など、これまでITがあまり入ってこなかった領域で現在、急速に導入が進んでいる。先行した自動車業界などでは、テクノロジーが追い付かなかったために苦労することも多かったが、後発組では、技術の進化を一挙に享受できるので、面白いことが起きる可能性がある。」

一口にファッション×テクノロジーと言っても、服のデザインから、製造工程、eコマースのような販売など、様々な領域にまたがる。クリエイティブなデザイン作業にも、様々な先端テクノロジーが入り込みつつある。

人工知能の技術もその一つだ。アメリカなどでは、人工知能に、クリエイティブ作業を行わせる「コンピューテーショナル・クリエイティヴィティ」という研究が盛んになってきている。

こうした流れが、様々な技術や人材を巻き込み、大きな渦となって「ファッションの姿」を変えていく時代がいずれやってくるのかもしれない。この数年、関心を呼んでいるファッションテックの動きは、その予兆なのかもしれないと感じている。
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今回の「東コレ取材日記」では、筆者が取材を通じて感じた、こうした「ファッションの進化の芽」をお伝えしたいと思う。

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