とにかく天候に恵まれなかった2018年春夏シーズンの「Amazon Fashion Week TOKYO」。最終日となる本日はまさかの台風上陸!お天気だけはどうにもなりませんね......。
さて、既に書いていらっしゃる方が居たので、取り上げるべきか迷ったのですが、今回ファッションウィーク中にお会いしたファッション業界人だけでなく、それ以外の業界の方からの反応も目にしたのが「スエサダ(SUÉSADA)」でした。
パリでファッション教育&修行期間、日本のアパレルメーカーでの勤務を経て、自身のブランドを立ち上げたという、末定氏が作る服は、エレガンスと知的な色気がミックスされた、大人の女性のためのモード服。
ランジェリーの要素をメタルでアイコニックに仕上げたディテールを中心に、ファーストシーズンから「引き継ぐもの」と「進化させるもの」のバランスがよく考えられており、2シーズン目にして「これはSUÉSADAだな」と分かるブランドアイデンティティを確立しているのも特記すべきポイント。
正直なところ、価格帯は安くありません。作り手のエゴだけでモノが売れるような時代が過ぎ去り、店側は「価格高すぎず、売れる服」を求める昨今、「誰に着て欲しいのか」「どこで売って欲しいのか」を明確にして、直販/卸のバランスを考えながら、どう販売戦略を練っていくのがキーになるでしょう。既存の日本のデザイナーブランドビジネスの在り方にとらわれず、クリエイションもビジネスも自由な発想で続けていって欲しいなと思うブランドのひとつです。
そんなエレガンスと知的な空気を纏った服を作っているデザイナーがもう一人。文化ファッション大学院大学を経て自身のブランドを立ち上げたという印致聖氏が手がける「イン(IHNN)」です。以前「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)六本木店の店頭で見かけて気になっていたのですが、決して派手さは無いけれど、真面目な服作りが伝わってくるプレゼンテーションでした。IHNNといえばこれ!というようなアイデンティティが何かしら育ってくると、ブランドとしての強度が増しそうです。
業界人として仕事人として、刺激を受けるブランドやデザイナーはたくさんいるのですが、いち "33歳のファッション好き"として見たときには、やはり「着たい」「欲しい」と思わせられるブランドが少ないのが正直なところ。もちろん自分が歳を重ねて、ターゲットから離れていっているからなのですが(笑)、ご紹介したような目の肥えた大人の女性に響くブランドがちらほらと登場しているのは個人的にも嬉しい。必然的に競合は海外のブランドになってくるので、厳しい戦いになるとは思いますが......。
そして、新人の登場が心強い一方で、継続は力なり!と思わされる出来事がいくつか。
Tokyo新人デザイナーファッション大賞のプロ部門で東京都知事賞を受賞された「キディル(KIDILL)」の末安氏と、TOKYO FASHION AWARD「ボディソング(bodysong.)」の青木氏。双方ともに独立系ファッションデザイナーとして長く活動を継続して来られたことだけでも凄いのに、このタイミングで賞を受賞されたのは、まさに"継続は力なり"。すごく簡単な言葉ですが、格好良すぎます。
こちらはすっかり中堅どころとなった「AKIRA NAKA(アキラナカ)」。
2012年ごろにガラっとイメージを変えてからショーは行わず、展示会を中心に卸で着実に力を付けてきたブランド。今シーズンは東京での展示会前に、パリで初展示会を開催してきたとのことで、これまで以上に、覚悟に近い"気迫"を感じさせる服たち。
ブランドのアイデンティティのひとつである、表情豊かなテキスタイル×大胆なカッティングに、研ぎ澄まされたパターンワークが掛け合わされ、着るこちらが気後れしてしまいそうなくらいの強さを放っていました。正直、ここまで強い服になると(骨格の問題などで)日本人にはしんどいのでは......?とも思う部分もありますが、きっと海外展開を考えてのこと。今後のクリエティブ・ディレクターとして、そして"経営者"として、中氏の手腕に期待がかかります。
さて、Amazonの支援による「AT TOKYO」枠を中心に、マスにも知名度のあるブランドがショーを行った今シーズンは「今、東京でファッションウィークをやっているんだ」と認知してもらう機会が多くなったことが、ひとつの成果でしょうか。会場に足を運んでいる若くてお洒落な子たちも、ここ数年で一番多かったように感じました。今回作った機会を今後何にどのように繋げていくのか、興味深いところです。
【市川渚の東コレレポート】
・服を買うときに重視することは?
・大人の女性に響くブランドに期待