
今シーズンは、いつもに増して、渋谷ヒカリエ以外の場所をショー会場に選ぶブランドが多い印象。
上野近くの鶯谷にある「東京キネマ倶楽部」を会場に選んだのはメンズブランド「キディル(KIDILL)」。ここは元キャバレーだった建物を改装してライブ会場などとして使われているホール。開場前から、ここはライブハウスか!という位、会場前に若者がたくさん。近くの壁にはポスターが貼られていたりで、その様子を写真におさめる人も。
客電が落ちると、ステージ上では「COYOTE MILK STORE」というバンドの演奏が始まり、ショーがスタート。ゲストがすし詰め状態のフロアを練り歩くようにモデルが闊歩していく。モデルとぶつかりそうになったり、服のパーツが当たったりするくらい、距離が近く、ライブ感たっぷり。そして、暑い。
渋谷からのアクセスの悪さ、到着してラブホテルの猥雑なネオンに囲まれる、ゲストの若者たちの多様なファッション、叫びのように鳴り響くCOYOTE MILK STOREのライブ演奏、混み合った会場内、気だるいモデルの雰囲気等など、ゲストが体験するプラスな点もマイナスな点も、全てがカオスに混じり合って「sad paradise(現代の新しい精神を持った不良たちへ)」というテーマを表現していました。すごく簡単な言葉で表現すると、とにかくカッコよかった!の一言。
ストリートファッションをベースにしながらも、どこか品も感じられる。若者たちのものにしておくのはもったいない感じ。ぜひ洒落た大人の男性にさらっと着てもらいたいな〜などと妄想した次第であります。
しかし、これをリアルな若者世代ではないデザイナー末安さんが作っているということにも感心。すごく時代を読む力のある方なんだろうなあ。
一方、期待の若手「ティート トウキョウ(tiit tokyo)」のショーは新大久保にある「淀橋教会」で。天高がかなりあり、独特な建築のディテールが荘厳な雰囲気を醸す、開放感ある空間を贅沢に使っていました。
柔らかなカラーパレット、オフショルダーのシャツやロングスリーブ、垂れ下がったベルトやリボンのディテール、ナイトウエアを髣髴とさせるようなストライプ、光を受けて柔らかく光るオーガンジーのドレスなどを見ていると、なんだかぼーっと微睡みの中に引き込まれていくような感覚に。
この雰囲気はヒカリエでの開催では出せなかったものなのだろうなあ......と妙に納得しながら、コントラスト激しい東コレ2日目を振り返るのでした。
【市川渚の東コレレポート】
・多様化していくファッションウィーク