Mariko Nishitani

視点:ミナ ペルホネンの展示会に行って感じたこと -vol.3-

西谷真理子

"黒の衝撃"を見た編集者

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 「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」は、創立して20年を超えた今や日本を代表するブランドの一つと言っても異存はないと思う。美術館やギャラリーでの展覧会もなんども開催し、デザイナー皆川明の著作も含め、さまざまな形態の書籍も刊行、雑誌やウェブサイトだけでなく、テレビ番組でも取り上げられ、トークイベントにも引く手あまた。わざわざここで紹介するまでもないのだけど、まあ若くない私が紹介する分には、許してもらえるだろう。ミナ ペルホネンについては、これまでも何度か書く機会があったので、今日は展示会の実況中継にする。

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ルックブック写真: 岡本充男(Mitsuo Okamoto)

 ミナ ペルホネンがテキスタイルに格別のこだわりを持っていることは知られているが、今でも全ての素材には英文の名前がつけられていて、過去の布もすべてアーカイブ化されている。毎シーズン、ショーの代わりに事前にシーズンカタログを撮影し、展示会場にはプリントが飾られている。今シーズンのイメージ写真を見ると、心なしかボリュームが大きくなっているし、エキゾチックな顔立ちのモデルの起用も新鮮だ。ミナを好む中心層は知的で静かなアート好き乙女、というかつてのイメージは壊れつつある。

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ルックブック写真: 岡本充男(Mitsuo Okamoto)

 そして会場を見ると、モードっぽい独創的な服装の人が少なくない。展示会に行く醍醐味の一つは、そのブランドを好きな人の服装を観察できることでもあるが、近頃の、全般にあまり主張のない服装を見慣れていると、ミナのこの個性派を惹きつける引力には注目したい。いろんな服を着こなしてきた人がミナに来る(そのためだけに来ているのではないにしても)という時代の流れを感じた。

 テキスタイルを少し紹介すると、下は、今シーズンの代表的な柄の一つrosy(ロージィ)。油画のバラのような重めのモチーフをチュール地に刺繍している。これをスカートと、ワンピースと、アルパカの中綿を入れて保温性を高めたジャケットに。その他、素材を変えて様々なアイテムに。


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 同じバラでも、下のは、good old(グッド・オールド)。東欧のおばあちゃんがチクチクとばらの刺繍を刺しているイメージだそうだ。古き良き時代を思わせる。

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 素材は毎シーズン、刺繍、ジャカード、プリント、ニットなど様々な手法で展開される。プリントの多くは皆川自身のデッサンからきていることが多い。これは、misty line(ミスティ・ライン)。波打ち際の泡の飛沫がスーッと消えるのを見て浮かんだ柄だそうで、大きな紙に一つ一つ手描き。

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 という具合にそれぞれの由来を聞くだけで時間が経って行く。上のカタログ写真のサーモンピンクのドレスの生地もwhisper(フィスパー)とネーミングされている。

 ミナペルホネンはインテリア部門にも力を入れていて、最近京都の町家を改造したゲストハウスを建築家の中村好文と組んで企画して話題になったりしている。皆川の建築やプロダクトデザインへの興味もあるだろうけど、インテリア業界とつながることで、例えば下の素材のように、ベルベットのジャカードというファッションではあまり見かけない素材が生まれたりする。

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 上はchocolat(ショコラ)。板チョコを並べたような柄は一見プリントのようだが、ベルベットのジャカード。電車の座席などに使われる素材を服の素材として開発したものだ。デザインの幅が大きく広がるとともに、椅子などのインテリア素材に参入することで、ミナペルホネンの生地を制作する機屋は、閑散期なく仕事が確保できる。

 デザインは、服の形や素材のデザインだけでなく、製造システム全体のデザインであり、関わる人々の生活のデザインでなければならない、という皆川の思想を垣間見た気がした。

【ファッションエディター西谷真理子の東コレポスト】
視点:ドレスドアンドレスドとセクシー -vol1-
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西谷真理子

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