Fumitoshi Goto

小売業、お店のアプリが売り上げの成長を後押し

激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

在米28年のアメリカン流通コンサルタント

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■全米小売業協会(NRF)は3日、今年の年末商戦期(11月~12月期)の小売売上高が前年比4.3%~4.8%増となるとの予測を発表した。売上高は7,174.5億~7,208.5億ドル(80.4兆~8.7兆円)との範囲。なおNRFの小売売上高は自動車やガソリン、レストランなど外食の売上高は除いている。昨年実績の5.3%増は下回っているものの、過去5年間の平均となる3.9%増を超える成長となる。

NRF社長でCEOのマシュー・シェイ氏は好景気や高い消費者信頼感に支えられ、今年の年末商戦の伸びは堅調だと説明。同氏はまた「エスカレートする米中貿易戦争のインパクト・リスクの懸念もあるが、雇用や賃金の伸び、安定した物価の伸び、純資産の拡大などで景気を加速させる」との楽観的な見方を示した。

他の調査機関でも年末商戦の好調さを裏付けている。調査会社アリックスパートナーズでは比較的控えめな3.1%~4.1%の増加とみており、調査会社PwCでは前年同期比5%の増加、調査会社デロイトは5.0%~5.6%と軒並み高い成長予測だ。

一方、オンライン売上高は今年も好調だ。NRFは11月~12月期のオンライン売上高予測をまだ発表していないが、最も低い成長予測となる調査会社フォレスターでも前年比13.5%増と、二桁の増加を見込んでいる。インターネット・リテーラーで15.5%の増加、eマーケッターで16.2%の増加だ。デロイトでは17%~22%増という高い予想をしている。11月1日~1月31日のオンライン売上高は1,280億~1,340億ドル(14.3兆~15.0兆円)と見込んでいるのだ。

年末商戦での買い物がリアル店舗からオンラインストアへの移行がさらに進むことになる。特にドラマティックな変化はスマートフォンによる買い物が増えることだ。

エリクソンが昨年冬に行った調査ではスマートフォン経由で週に1回以上の買い物をする人が43%に上った。エリクソンでは向こう3年で拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などが広く浸透し、バーチャルアシスタントがより洗練されることで、スマートフォンでの買い物が急増すると予想している。

より最近発表された調査結果では消費者が店アプリをより満足、よく使っている実態が明らかになっている。ファイナンシャル・サービスのシンクロニーの調査によると、3分の2以上にあたる67%の人が店アプリをダウンロードしている。平均して4つの店アプリを常時使っており、昨年の2つから2倍に増えている。1,255人を対象にした調査では実に83%が店アプリに満足しているのだ。

また50%がアプリを通じてeクーポンなどを使用、60%がアプリ経由で商品検索を行っているのだ。また49%が実際にアプリでショッピングもおこなっている。

シンクロニーに昨年買収されたモバイルアプリ開発のGPショッパーCMO、マヤ・ミハイロフ氏は「今日の厳しい競争環境下では店にとってモバイル・アプリはよくあるITの一部分ではなく、自分たちの店ブランドと連動する不可欠なツールになっています」と指摘している。

彼女はまた「店アプリは店の内外でパーソナライズ(自分用にカスタマイズ)した体験や簡単な決済を提供しています」と語っている。シンクロニーでは77%の人がクレジットカードの機能を持ったアプリが役立っていると答えている。

年店アプリによる買い物が増えることでオンライン売上を押し上げ、結果的に年末商戦の小売成長を支えることになるのだ。

トップ画像:当社のIT&オムニチャネル・ワークショップ。ターゲットでカートウィールやウォレットなどターゲットのアプリ機能を説明している。この後、実際に買い物をする。便利なアプリ機能に参加者は驚く、感動する。ウォルマートでも店アプリを使い、ディスカウンターでもポジショニングの違いを確認する。

昼食のパネラブレッドではモバイルオーダーを行っている。レジに1人ずつ並んでオーダーはしない。テーブルにある番号をパネラブレッドのアプリに入力して全員分をモバイル注文をするのだ。注文したサンドウィッチがテーブルまで運ばれてくる。それまで参加者とQ&A。レジ前に長蛇の列を作らないことで、研修時間の有効活用となる。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。当社にコンサルティングセミナーの問い合わせが相次いでいます。商業界10月号の巻頭特集で後藤が米国流通チェーンの店アプリについて執筆した記事が一つのティッピングポイントになっているようです。問い合わせ中には「他の流通視察に参加したものの『旧態依然の売場を見る視察研修』で、店アプリを使った買い物体験がなかった」との指摘がありました。店アプリを使った視察研修がないのは3つの理由があります。まずは儲け。協会や団体、コンサルタントにとって海外で行う視察研修はドル箱です。参加人数が多ければ多いほど儲けも多くなります。しかし店アプリを使うには参加人数を絞らなければなりません。小さな画面を通して買い物体験をするわけですし、レジでモバイル決済を行うわけですから、大人数ではできないのです。クレームの原因にもなります。参加者を少人数にすると参加費用を値上げしなければ利益はありませんからできないのです。

⇒二つ目の問題点は視察団に添乗する講師やコンサルタントが店アプリの事情に疎いことが挙げられます。彼らは事前調査など自腹を切った行動をとりません。米国流通視察を主催して、アメリカには来ます。人のお金でアメリカに来ますが、身銭を切ってまでアメリカには来ません。グループと一緒に来ても、売り場を見るだけです。店長に話を聞いてもその店で買い物はしません。店アプリを使って買い物をする流通コンサルタントがいないのです。店アプリを使わないからわからない。調査などで自分のお金を使わないから重要なインプットができないのです。3つ目の問題点は店アプリが日進月歩で進歩していることです。先日、ウォルマート視察で店アプリをつかったら、ストアモードにお店の混雑状況を示す棒グラフが追加されていました。買い物に便利な機能がどんどん追加されていますから、普段から使っていないとつかえないのですね。専門家もITリテラシーは常にアップデートしなければなりません。使い続ける必要があるのです。
これからは「視察では、売り場見るより、店アプリ」です。今のアメリカ小売業を学ぶのに商品や店舗を軸にしたスペシャリストと来ても意味はありません。

後藤文俊

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