YOHEI OHNO 2019AW COLLECTION Photo by: Yuki Kumagai

Mariko Nishitani

内なる違和感の持続。YOHEI OHNO、hatra -違和感が新しい?vol.5 -

西谷真理子

ファッションエディター

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YOHEI OHNO 2019AW COLLECTION Photo by: Yuki Kumagai


ショーを行わず、展示会のみでコレクションを発表するブランドの考え方は様々だ。

ここでは、奇しくもデザイナーは同年齢、しかし作風も、ファン層もかなり異なるヨウヘイオオノ(大野陽平)とハトラ(長見佳祐)を"違和感"を軸に紹介してみたい。

ヨウヘイオオノは、2015年秋冬でデビュー。2017年東京ファッションアワードを受賞して、2017-18秋冬東京コレクションに初参加する。続く2018年春夏もショー形式で発表するが、2018-19年秋冬はインスタレーション形式。このコレクションがインターナショナル・ウールマークプライズアジア大会で優勝。2019年春夏と今シーズンはショーを行なっていない。ヨウヘイオオノは、ショーをやらない時にも、代替物になるだけのイメージを喚起する撮り下ろしビジュアルを用意してきたブランドだが、今シーズンは、少し違った。
展示会のインビテーションとともに送られてきたのは、5章からなるイメージブックであり、リサーチブックでもある小冊子。今までの大胆なフォルムで惹きつけるグラフィカルなデザインとは少し違う。イメージのトリックを極力抑えたようなルックブックからは、デザインコンセプトは維持しながらも服を丁寧に作ろうという姿勢が感じられた。

YOHEI OHNO 2019AW COLLECTION Photo by: Yuki Kumagai



尾州のマテリアルセンターに行って見つけた1985年春夏のサマーウールが目にとまり、その布を復元して織ってもらい、スーツやコートを制作したのが上の写真。ヨウヘイオオノのアイコニックなデザインになりつつある袖を極端に膨らませ、ウエストを絞った構築的なシルエットが、レトロな素材と出会うことで、ただの新しさでない、「プロダクトや実用性にシフトした」モダンなデザインになったと感じている。

YOHEI OHNO 2019AW COLLECTION Photo by: Yuki Kumagai

YOHEI OHNO 2019AW COLLECTION Photo by: Yuki Kumagai

YOHEI OHNO 2019AW COLLECTION Photo by: Yuki Kumagai

こだわるのは袖で、西洋のバロック絵画の袖からインスピレーションを得たものが、拡張していっているようだ。今シーズンは、フォルムを強調するために工業資材を使ったりはしない。違和感=特異性は消さずに、着ることに配慮した服に進化していくことを目指す。

hatra 2019AW COLLECTION Photo by: Photomaker

ハトラのインビテーションに付いている写真。グレーのコートの襟に鉱物が載っているのだが、一瞬、女性の皮膚の一部が鉱物のようになってしまった錯覚に陥る。硬質なセクシーとでもいう感覚が、私がハトラに感じる違和感=他のブランドにない個性だ。ファッションという、ともするとエモーショナルで変わりやすく、刹那的にもなる創作の世界でハトラは辺境にいて、独自の言語を操っているように見える。

hatra 2019AW COLLECTION Photo by: Photomaker

コートの全体を見ると、品のいい、抑制の効いたデザインのロングコート。「オーガン・トレンチ」と名付けられている。肩章やボタンやらのトレンチにつきもののディテールがない。オーガンというのは、器官/臓器のことだっけ?この素材は、コットンとナイロン製で特殊な揉み洗い加工が施されたウェザークロス(高密度平織り物)。ピーチスキンに似た手触りの湿り気があり、勝手に皮膚と繋げてしまう。なにしろOrgan Trenchなのだから。
普通に見えるものが普通ではない。



hatra 2019AW COLLECTION Photo by: Photomaker

デザイナーの長見佳祐が凝っているものに「粘菌」がある。南方熊楠がかつて研究した植物と動物の中間の変形菌で、胞子や菌糸と言った不定形な存在を服のカッティングやプリントに取り入れた一つがこの「ムーン・コート」。月面よろしく、ポリエステル地にシルクスクリーンで顔料プリントを施した上に、今度は発泡プリントでコーティングしてできた立体感と石のような色調。

hatra 2019AW COLLECTION Photo by: Photomaker

前シーズン(メンズも)にも登場した特異な曲線もやはり粘菌からのインスピレーションのようだが、今回はそこに目や耳といったヒトの器官(オーガン)からの引用もある。

と、書きながら、私は何の原稿を書いているのだっけ?という気分になる。ハトラについて書こうとすると、ファッションを表現するおなじみの言葉が出てこない。そして、ハトラの精緻に仕上げられた服は、そんな当惑には頓着せず、表面だけを見ている限り寡黙を決め込んでいる。が、こだわりが見えてくると、途端にずぶっと深みに足をとられる。おもしろくなるのは、この先なのだ。

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西谷真理子

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