山口一郎
山口一郎
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Fashion 買ったモノ

【2019年ベストバイ】サカナクション山口一郎が今年買って良かったモノ

Maison Margiela ニット

F:続いてこちらもマルジェラ。アシンメトリーで、これも良い違和感があります。

山口:本当に不思議な服ですよ。丸首とVネックの2枚セットなんです。左右片袖ずつで、重ねて完成するという。裾の長さもずれていて、中にTシャツだったり違う色のものを着ればさらにレイヤーが1つ増えるんです。紐は結ぶのか、垂らして着るべきなのか......。

F:色々な着方が楽しめそうです。

山口:答えがないのもまたいいですよね。あと、この萌え袖(笑)。

F:好きなんですね(笑)。この企画では、ニットが毎回ベストバイに入っています。

山口:もともとニットが好きなんですが、特に今年はニットの当たり年かも。中でもマルジェラのニットって古くならないというか、デザインが効いているのに数年経っても普通に着られるんです。結構知り合いに服をあげるんですけど、マルジェラは手放さずに持っていることが多いですね。

F:先ほどの話とは逆に、時代感がないデザイン。

山口:音楽も、どんな時代がきても古くならないものが新しいんですよ。着物だったり、当時新しかったんだろうなっていうものは今の時代でも残っているし、今でも新しく感じる。ファッションの中で、変わったデザインだと毎年着られるものはなかなか無い気がしていて。マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)がいた頃のマルジェラとは明らかに変わっても、そういった根底の部分は引き継いでいるなと感じるんです。

F:今のジョン・ガリアーノ(John Galliano)のクリエイションも、社会へのアンチテーゼであったりとか独自の理念や美意識が、オートクチュールからこういったデイリーウェアの隅々にまで落とし込まれているんですよね。

山口:ファッションデザイナーって、コンセプトに対しての向き合い方が様々ですよね。そこに僕は魅力を感じるんです。例えば森永さん(アンリアレイジ デザイナー 森永邦彦)は服を生み出す過程や向き合い方がまるでアーティストのようだけど、だから強くて面白いものが作れるんだと思います。音楽にも、有名になりたいと思って始める人と、自分が作ったものがどう受け入れられるんだろうという観点の人、全く外からの評価は関係なく自分が表現したい音楽を作る人、色々といて、それぞれ生まれるものが全然違うので、そういう点でもファッションと音楽は似ているなと思います。

F:山口さんはどのタイプですか?

山口:元々は人に評価されるためではなく、自分が好きなものは何なのかを追求していました。東京に出て来て自分の作品を好きだと言ってくれる人がいて、なぜ好きなのかを知っていくうちに人が好きになるものって何なのかということが気になりだして。なので変化するタイプですかね。振り切れないし戻りきれないというか。マイノリティとマジョリティに片足ずつ突っ込んでバランスを取って、そこで重心移動をしているのが自分なのかなと思います。

sacai フーディー

山口:サカイの面白さは、やっぱり異素材の組み合わせですよね。それぞれの素材が特殊なんですけど、これはパーカの脇や袖だけブルゾンがくっついているようなデザイン。境目がズレているのも面白いなと思いました。

F:異なる2着をくっつけたような、リメイクっぽいデザインです。

山口:リメイクって面白いですよね。「77サーカ(77circa)」とかもそうですけど、組み合わせることで新しいシルエットを作るというか。音楽で言うとサンプリングみたいな感じで。

F:ドッキングはサカイの良さが出ますよね。どんどん技術が上がっている気がします。

山口:派手なものじゃなくて、ベーシックを組み合わせても感動するものが作れるというのがすごいですよね。あとサカイのフーディーはよく着るんですけど、今回のは特に好きです。立体的で、理想形です。

F:サカナクションのツアーグッズでもパーカを作っているそうですね。

山口:次のツアーのパーカは、一から作っているんです。よくあるのはボディは既存の物でプリントをするだけという方法なんです。でも、僕らはみんなに音楽から音楽以外のことにも興味を持ってもらいたいと思って活動しているので、ちゃんと自分たちが納得のいく、本当に着たいと思うものを提供しないといけないなと感じて。

F:実際に服を作る側を体験して、どうでしたか?

山口:通常よりコストが上がるし、僕らはファッションの勉強をしていないから感覚の部分があるし......ファッションデザイナーって本当に大変だなってことがわかりました。

F:出来上がりが楽しみですね。

山口:ユニセックスで女性も着られるように作っているんですけど、自分がもしファッションデザインをするんだったら、メンズウェアだろうなと思いましたね。音楽もそうなんですけど、好きな人に聴いてもらいたいというようなターゲットがいないと難しいと思う。という感じで色々と考えて、脳のトレーニングにもなりました。

 

kolor スニーカー

山口:僕はスニーカーは「ナイキ(NIKE)」が多くて、サカイとのコラボスニーカーもよく履いていて、2足が重なってずらしたような、斬新に形を変えるという発想が好きなんです。この「カラー」のスニーカーも、考え方がすごく面白くて。色々な素材が組み合わされているのですが、あえてパーツの端を残して折るというアプローチがすごいですよね。

F:たしかに、これはなかなかないデザインですね。色のバランスとか、革靴に使われるようなディテールもミックスされていたり。

山口:阿部さん(カラー デザイナー 阿部潤一)は良い意味でネジが外れているところがあるというか(笑)、だから阿部さんの作るものっていつも面白くて大好きなんです。久しぶりにユニークな靴に出会ったという感じがします。履いたときの形が綺麗なんです。ちょっと重量感があるのもいい。カラーは過去に「アディダス(adidas)」とコラボレーションしているし、その上で、また新しい靴を自分たちで作っているので本質的なところと新しさの掛け合わせが良いですよね。

F:デザインに個性がありますが、どんな服に合わせますか?

山口:カラーの服を着るときに履くことが多いですね。しっくり来るんです。色違いも持っているのですが、また全然雰囲気が違っていて、それも好きです。

F:阿部さんとは親交が深いんですね。

山口:音楽がすごく好きな方で、変に飾らないけど自然と飾られていて、魅力的なんですよね。色々なデザイナーやクリエイターの方々と出会うきっかけになったのは片山さんのおかげなんですが、僕はそういった方々を尊敬の念を込めて「変態」と呼んでいます(笑)。本当にすごい人たちばかりで。今まで音楽に対して一対一で向き合っていただけだったんですが、ファッション、インテリア、グラフィックなど様々な分野の方と対話をすることで音楽に関連する音楽以外ものの"数"が増えていっている気がします。定期的にクリエイターのみなさんと集まってコミュニケーションして刺激を受けています。

   

COMME des GARÇONS×MONOCLE 香水

F:昨年、カバンの中身を見せてもらったときに入っていたのは、同じギャルソンとモノクルの香水でも「ヒノキ」でした。

山口:ヒノキをずっと使っていたんですが、今年「ヨヨギ」が出たんです。代々木公園の香りを香水にしたと聞いて、どんな香りか気になって購入しました。

F:たしかに興味深いです。

山口:嗅いでみますか?代々木公園っぽくないかも(笑)。

F:なるほど、少しだけ緑の感じがしますかね。

山口:日本の代々木公園の香りに海外の人がインスピレーションを得て香水にするって、変わってますよね(笑)。香りって音楽と似ている部分があると思って。目で見えなくて、触れられない、でも感情をコントロールするもの。だから僕も匂いに興味を持っていて調べたりしているのですが、身近なものを香りに変えてプロダクトにするって、すごく魅力的だなと。代々木をまとう、みたいな。

F:「ヨヨギ」って言葉の響きもいい感じです。

山口:パリとかでも売っているわけですからね。「ヨヨギって何?」となるかも。本当はこういうプロダクトを日本人が作ってくれるといいなと思うんですけどね。

 

BOSE サングラス型スピーカー

F:昨年は首にかけるスピーカーでしたが、今年はサングラス型。

山口:ボーズからサングラス型のスピーカーが出たと聞いて「なんだそりゃ」と。気になって使ってみたら結構良くて。こういうことにチャレンジする企業がいると安心するというか。前回のネックスピーカーもそうですが、サウンドデザインをする会社がサングラスのデザインをして、音の伝え方を考える上で他の分野のプロダクトデザインに関わるというのは、未来を感じますね。かけてみますか?

F:あ、思ったよりもいい音です。初めての感覚。

山口:運転をするときに便利で、電話もできてマイクも精度が良いんです。音量を上げると音漏れするんですが、僕はイヤホンやヘッドホンから音漏れしている人を見ると素敵だなと思うタイプで。音楽が日常にあるんだなと思ったり、どんな音楽聞いているのかなと気になったり。聞いている音楽でなんとなくその人の傾向がわかるというか。香水みたいな感じで、自分はこういう人間ですって音楽で知らせられる時代がきたらいいなと思います。

F:デザインも良いですね。普通にサングラスとして使って違和感なさそう。

山口:作る時に色々な葛藤があったんだろうなと思うんですよね。テンプルをどこまでシャープにできるか、装着感だったりレンズの大きさとか、試行錯誤したんだろうなと感じます。もともと何種類かオプションでレンズが選べるんですが、僕はサングラスは少し目が透けて見えるくらいの色がよくて、恵比寿の「コンティニュエ(Continuer)」でレンズを変えてもらいました。

F:カスタムしたんですね。

山口:カスタムと言えば僕らの世代はやはり藤原ヒロシさんですよね。昔から影響を受けているんです。レッドウィングのソールをホワイトに変えて後に商品化したとか、ほんと伝説ですよね。ひと手間を加えて自分好みに変えるというのは、遊び心もあるしやっぱり楽しい。

F:山口一郎さんといえば、サングラスより眼鏡の印象が強いです。

山口:このくらいの年になると、眼鏡が似合いすぎちゃって(笑)。なので少し違う感じで目を隠したいなと。でもサングラスってちょっと格好つけているというか、すかしている感じがあるじゃないですか?なかなか踏み込めなかったんですけど、かけているうちに慣れるかなと思って。今年色々と探して、これと「アイヴァン(EYEVAN)」のサングラスを購入してみました。

 

F:今年のお買い物を振り返って。

F:お買い物から今年を振り返ると、どんな年でしたか?

山口:今年はアルバム制作だったりツアーも重なって、本当に忙しかったんです。NFの活動も本格的に色々なところでやり始めたり。サカナクション自体のシステムも大きく変えようとしているのですが、プライベートの時間が全然なくて。買い物ってゆっくりしたいし、見に行って「サイズがない」と言われるのが悔しいから行かないようにしたり(笑)。コレクションの写真を見て面白いブランドを調べたりするくらいで、直接見に行く時間は少なかったんです。

F:そういう時にオンラインで服を買ったりは?

山口:ネットで購入していた時期もあったけど、今はほとんどないですね。逆に前はあまり行かなかったセレクトショップに行って新しいものを偶然見つけることもあって、なので実店舗派です。昔はCDのジャケ買いをよくしていましたけど、そういった出会いの面白さがあると気付いたんですよね。

F:今年は色とかサングラスとか、新たな挑戦もありました。

山口:僕は自分のユニフォームを決めているのですが、そこからどうはみ出すか、どこまで許せるかというライン引きを整理する年だったのかな。プライベートでお洒落をして出掛けるということはほとんどないんですけど、自分の感覚を知る上でファッションのことを考える時間はすごく有意義なんです。聴いたことがない音楽の中に魅力を感じて掘っていくのと、知らないファッションに出会って新しい自分を見つけたりする感覚はすごく近い。なので音楽もファッションも、探求は続いていくと思いますね。

■山口一郎
1980年北海道生まれ。「サカナクション」として、2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。「ミュージシャンの在り方」そのものを先進的にとらえるその姿勢は常に注目を集めている。2015年からNFをスタートさせ、各界のクリエイターとコラボレーションを行いながら音楽と様々なカルチャーが混ざり合う多様な活動を高い表現で実現し、評価されている。

サカナクション公式サイト
NF公式サイト

2016年】【2018年

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