Shigeto Ichikawa

MUG「G.V.G.V.」デザイナーに聞く、新常態のクリエイション

市川重人

繊維ニュース 記者

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終盤戦を迎えた2021年春夏シーズンのファッションショーや展示会で若手デザイナーを取材すると「影響力のある東京デザイナーは、現状をどう見ているのですか?」と聞かれることが増えてきた。自分の考えていることが「周囲と解離していないだろうか」と不安になることで、少しでも有力デザイナーの意見を聞きたいーー。2018年秋冬シーズンまで、東京ファッション・ウィークで継続的にショーを行い、且つ国内外で販路を拡大してきた、MUG「G.V.G.V.」デザイナーに話を聞いた。普段はインタビューに応じることが少ない人物だが、新常態におけるクリエイションやビジネスの現状を語ってくれた。

私へのインタビューがファッションデザイナーの共感を得るかどうか分かりませんが、現状を話します。新型コロナウイルス感染症の影響が長引くと感じた、半年前から常に危機感があります。ビジネス面で、新型コロナ禍の影響は軽微ですが、今後はどうなるか分からない。ウィメンズのマーケットでは、柔らかい素材の部屋着やリモートワークに沿ったカジュアルウェア、ロゴを付けたアイキャッチを惹くアイテムが求められています。でも「G.V.G.V.」はこうした服は作っていません。私自身がメンズライクなジャケットやロゴのないスタイリングが好きなので、ここは譲れない。ブランドの個性と直近の売り上げ、このせめぎ合いが、新型コロナ禍でさらに難しくなっています。多くのデザイナーズブランドが悩んでいると思います。それでもクリエーションを守ることがブランド継続への道だと考えています。

リアルなファッションショーや対面式の展示会が「古い」と言われる時が来ると思います。オンラインが全てを解決するとは思えませんが、ネットで消費者に直販するD2Cブランドの設立など、若いファッションデザイナーが新たな領域を開拓するでしょう。元のような“ワイワイ”とした展示会には戻れない、高揚感のあるファッションショーはできないのかな。「G.V.G.V.」は1999年に創設し、21年が経過しました。東京ファッション・ウィークでショーを実施し、アジアを軸に海外の販路も広げてきました。現在もファッションショーへの参加を促されることもありますが、以前のように簡単に判断できない。

「G.V.G.V.」の取引先では、定番物の需要がひと段落し、デザイン物が動き始めています。シンプルな定番物への反動ですよね。個性を重視してきた私にとっては追い風です。ただ、個人デザイナーとしてブランドを運営していれば別ですが、会社組織としてブランドを展開しています。クリエーションで好き勝手できる立場ではありませんし、費用対効果を見ながら発信をしていくシビアなことも分かっています。ブランドのこれから、そこをしっかり考えたい。電子商取引(EC)を強化すればいいという訳でもない。マーケットに迎合せず、ブランドの根幹を守りたい。普段は相当インドアな私ですが、2021年春夏シーズンは青空や夕日、砂浜をモチーフにしたドレスを制作しました。外出自粛のストレスでしょうか、自分でもこのようなアイテムを制作するとは。これこそ、新型コロナ禍の恐ろしさでしょうね(笑)。

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