グローバル大手小売り3社の業績は、2~5月にかけて大きく落ち込んだものの、6月以降は店舗営業の再開も進み、業績に回復の兆しが見られた。直近四半期ではインディテックス、H&Mは黒字こそ確保したものの2ケタ減収を強いられているのに対し、ファーストリテイリングは微減収で、営業利益段階では増益を果たすなど、期間収益力の回復も顕著だ。回復の度合いに差が出た要因を見るとともに、3社の業績の今後の見通しを考察する。
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(柏木均之=本社編集部大手SPA、セレクトショップ担当)
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回復速度に大きな差
インディテックスは3月中旬からは7500近い店舗の半数が休業を強いられ、2~4月は4割強の減収となり、最終利益も赤字となった。
H&Mも一時、5000を超える店舗の6割が休業に追い込まれた。3~5月は5割減収、営業損益から最終損益まで赤字を強いられた。
ファストリも主力店舗の多くが休業を余儀なくされたことが影響し3~5月は4割減収。主力のユニクロは日本市場が営業利益段階で黒字を維持したが、全社の営業損益、最終損益とも赤字となった。
コロナ禍は3社の春物商戦を直撃したが、夏物商戦以降は減収幅が縮小し始めた。インディテックスは7月末に全店の96%が営業を再開、4月は7割減収だったが7月は17%減収となり、5~7月は黒字を確保した。H&Mも休業店舗数が8月末に200店まで減り、6~8月は2割弱の減収にとどまった。
一方、ファストリは6~8月は最終損益こそ赤字だったが、0.8%の減収にとどまり、営業損益段階では増益を果たした。インディテックス、H&Mに比べ、ファストリが減収幅を極小に抑え、収益性の回復も著しく早かったのは主力市場が他の2社と大きく異なるためだ。
主力のユニクロは全社売上収益の8割強を占め、その半分は日本での販売だ。国内ユニクロの既存店売上高は6~8月が前年同期比2割増で、営業利益が増益に転じた。海外ユニクロも売り上げの過半を台湾、香港を含む中国が占めるが店舗営業の再開が欧米より早かったこともあり、6~8月は減収減益ながら黒字を確保した。
インディテックスは売上高の64%を欧州、12%を北米、中南米が占める。H&Mも欧米での商売が売上高の8割を占め、アジアは中国と日本を含めても2割に満たない。アジアに強い地盤を持つファストリ、欧米が主力のインディテックス、H&Mで20年度の商売は明暗が分かれた。
実店減らしEC加速
主力市場である欧米で感染拡大に歯止めがかかっていないため、インディテックス、H&Mの業績が完全に復調するにはまだ一定の時間がかかるだろう。
これを見越してインディテックスは6月の段階で20~22年の経営計画を策定し、総額270億ユーロを投資し、事業構造改革を進める考えを示した。計画では、全世界の店舗の13~16%に当たる1000~1200店を21年までに閉店し、売上高に占めるEC比率は現在の14%から22年には25%まで高める。
H&Mも実店舗と自社ECの買い物体験の融合に力を入れるだけでなく、グループ全店のうち、21年度には店舗数を現状から250店程度減らす考えを示している。
ファストリは21年8月期に売上収益2兆2000億円、営業利益2450億円と、最高益だった19年8月期と同水準まで回復することを見込む。主力のユニクロで日本とグレーターチャイナは通期増収増益を計画。それ以外の地域も上期はコロナ禍の影響が残るが、下期に終息すれば業績は回復に向かうと見る。
インディテックスの売上高は日本円換算で3兆3000億円、H&Mは2兆8000億円。ファストリは世界的なライフスタイルの変化を踏まえた店作りや企業変革を急ぎ、規模で2社に追いつくことについて「売上高は問題ではない」(柳井正会長兼社長)とする。
ただ、欧米市場主力の2社に対し、ファストリは足元の日本での販売が堅調で、中国を中心とするアジアでも旺盛な出店を継続する考えだ。今後数年で2社との規模の差はかなり縮まる公算が高い。
柏木均之=本社編集部大手SPA、セレクトショップ担当
(繊研新聞本紙20年11月16日付)
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