国によって気候や歴史、文化が違いますが、それらの違いは各国のファッションにも大きな影響を与えています。よく目にする有名ブランドでも発祥地を聞かれると答えられる人は少ないかもしれません。各国の歴史を知れば、有名ブランドの特徴が見えてきます。前編ではイギリス、イタリア、スペイン、アメリカの4ヵ国をご紹介します。
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【目次】・イギリスの特徴とブランド・イタリアの特徴とブランド・スペインの特徴とブランド・アメリカの特徴とブランド
イギリスの特徴とブランド
他者への礼儀としての装い長い歴史の中で貴族文化が浸透しているイギリスでは、ファッションは「他者への礼儀としての装い」と考えられてきました。そのためイギリス発祥のブランドは、スーツやチェスターコート、ステンカラコートなど、トラディッショナルなスタイルを得意とするものが多くみられます。BURBERRYやアクアスキュータムを象徴するチェック柄も「英国紳士」を語る上で欠かせない要素です。
湿気に負けない素材イギリスブランドは型崩れしないしっかりとした作りの服が多いのも特徴です。1年を通して曇りが多いため、湿気に負けないように固い馬の毛を使った毛芯や厚手で固い生地を使用したり、肩パッドがしっかりと入った張りのあるラインが多く、ヨーロッパの他国よりも型崩れしにくい作りになっています。
タイトシルエットが主流イギリスではオーバーサイズはご法度。男女ともにウエストが美しくシェイプされたジャストフィットサイズが好まれます。現在のイギリス人女性のファッションは体のラインが出るセクシーなタイトシルエットに短めのスカートルックが主流ですが、1950年まではイギリスの女性は脚を露出することは淫らなこととされ、ファッションに多くの縛りや決まりがありました。そして1960年代にスウィンキング・ロンドンと呼ばれるストリートカルチャーの開花により大きなファッションにおける転換があり、現在のスタイルになりました。
代表的なブランドBURBERRY、Aquascutum、Paul Smith
イタリアの特徴とブランド
異性の関心を惹くための装いイタリアもイギリスと同じく貴族文化が根底にあり、ファッションもイギリスから大きな影響を受けていると言われていますが、相手への礼節のために装うイギリスに対してイタリアは「いかに異性の関心を惹くことができるか」を重視します。イタリアでは仕事終わりにデートをする際も、仕事着でそのまま店に向かうことはせず、一度帰ってからデートに相応しいファッションに着替えて向かう人がほとんどです。
乾燥に負けない素材女性・男性としての魅力を最大限に引き立たせるために柔らかくて曲線的なシルエットが多いのも特徴。スーツで比べてみても、しっかりと硬い生地で作られるイギリスのスーツに比べて、イタリアは毛芯も薄く軽いものを使用し、滑らかな生地でドレープ感のあるものが多く使われています。イタリアの気候は地中海ならではのカラッとした晴天が多く、とても乾燥しているため軽やかな素材を使用することで乾燥による型崩れを防いでいるのです。
伝統と革新イタリアを代表するブランド・PRADAは元々、世界中から集めた素材を元にイタリアの職人技術で多くの上質なアイテムを作ってきたことから長らくイタリア王室の御用達でした。1978年に前デザイナーから現デザイナーに代わると、トラディッショナルスタイルにモダンで斬新なデザインを取り入れ、世界的なブームを巻き起こしました。伝統的なスタイルの中にイタリアならではのエッセンスを加え、セクシーながらも上品にまとめているまさにイタリアらしいブランドと言えるでしょう。
代表的なブランドPRADA、FENDI、FURULA、miumiu、GUCCI、FERRAGAMO
スペインの特徴とブランド
自分がどう感じるかが重要イタリアと同じく貴族階級からファッションが派生し、セクシーさを重要視するスペインですが、イタリアとは少し違って、異性ではなく「自分がどう感じるか」を重視します。
BALENCIAGAが与えた衝撃裁政権時代のスペインでは妻は夫が起きる前に化粧をし、身だしなみを整えなければならないなど、男性の前で女性とはこうあるべきだ、という沢山のルールが設けられていました。その影響もあってか、今でも年配のスペイン人女性は特に「女性らしさ」を重要視する人が多いようです。そんなスペインで異性ではなく「自分」を軸としたファッションが主流となったのには、スペインを代表するブランドであるBALENCIAGAが大きな影響を与えたと言われています。女性たちがコルセットで体型を補正して服を着ていた時代に、BALENCIAGAはあえてゆったりとしたシルエットのファッションを考案し、世間を驚かせました。
上質な革製品スペインは皮革産業なしには語れません。スペインの皮革産業の歴史はローマ時代から始まり、ウブリケはヨーロッパ屈指の皮革産業のメッカとして知られ、住民のほとんどが何かしらの形で産業に関わっていると言われています。スペイン発のブランドの中でも特にLOEWEなどは上質な革製品で人気のあるブランドで、世界各国から愛されています。
代表的なブランドBALENCIAGA、LOEWE、ZARA
アメリカの特徴とブランド
多岐に渡るジャンルイタリア同様イギリスの影響を受けているアメリカですが、貴族階級がないため一般階級の人たちが力を合わせて発展してきました。Ralph Laurenのようなトラディッショナルスタイルから、LEVI’Sのように労働者の作業着として誕生したデニムブランドまで、ファッションのジャンルが多岐に渡るのもそういった歴史背景が関係しています。
自由の象徴であるワークスタイルアメリカでは特に労働者の作業着から発展した「ワークスタイル」が人気で、現代でも「肩の力を抜いて着飾らないスタイルが格好良い」という感性を持つ人が非常に多くいます。それはアメリカの山間地域に住む田舎者「ヒルビリー」の存在が大きいと言われています。使い古された安物のワークウェアを身にまとい、肉体労働で日銭を稼ぐ彼らの姿は一見するとネガティブに捉えられても不思議ではないですが、自分らしく自由に生きるヒルビリーの姿は当時のアメリカ人の憧れであり理想の姿でもあったのです。そういったファッションに対する価値観と様々な人種が集まるお国柄が相まって、どんな体型や肌の色にも似合う、着る人を選ばないカジュアルなファッションが根付いていきました。アメリカ発のブランドには合理性や機能性、耐久性を重視したカジュアルテイストなブランドが多いのもこれらの歴史的背景が大きく関係しているのです。
代表的なブランドRalph Lauren、LEVI’S、COACH
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