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5月の「定点観測」考察レポート 多様になったシャツルック、インディゴデニム素材、テーラードジャケットの3つに注目

5月の「定点観測」考察レポート 多様になったシャツルック、インディゴデニム素材、テーラードジャケットの3つに注目

ACROSS編集部
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5月は、多様になったシャツルック、インディゴデニム素材、テーラードジャケットの3つに注目しました。

2022年5月7日(土)に実施した「第494回定点観測」の考察レポート

#493 | 実施日 : 2022 / 04 / 02 | 最高気温 : 12.9 | 最低気温 : 3.6 | 天候 : 薄曇時々晴

GW最終週末に実施した5月の「定点観測」を振り返っておきましょう。

祖母の家にあった母の昔の紺ブレを着ていた女子大学生(渋谷)/原宿の人気スケーター系のショップ「PROV」で購入したNYで人気のブランドPeelsのシャツを着ていた男性(原宿)/MASUのジャケットにコウザブロウのリジットデニムというアパレル勤務の男性(原宿)。

まもなく、6月4日に実施した「定点観測」のインタビューを公開しますが、その前に、5月7日(土)の回の結果を振り返っておきましょう。

天気予報では土曜日は雨!ということで、どうなることかと心配しましたが、明け方には無事に陽の光が広がっていき、結果的には最高気温22.8℃と爽やかな土曜日となりました。

さて、長い人で10日間ともいわれていた今年のGW。久しぶりの行動制限のないお休みということで、観光地は多くの人で賑わっていたようですが、毎日の最高気温が最大で約10℃も変化するなど天候は不安定な今春。また、インタビューしてみたところ、実はそんなに連休でもないよ、という人も少なくなく(大学の場合は祝日=授業日というところもあったよう!)、都心部は比較的落ち着いた「通常運行」の雰囲気も感じられました。

皆さんはどんなお休みでしたか? 今回街で出会った人たちのGWについては、各インタビューシートの「追加質問」の項目をご覧くください。

また、今月も新型コロナウィルス感染対策として、朝と夕方、会社に集まることなく、渋谷、原宿、新宿それぞれ「現地集合・現地解散」で実施しました。

注目したのは以下のテーマです。
カウントアイテム:  男性/女性シャツ
ズームアップアイテム①: インディゴデニム素材アイテム
ズームアップアイテム②: テーラードジャケット

2022年5月の定点観測・トップページはこちら:
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vv66.html 

(左から)グラフィックなレタードがポイントのアイテムも増えている。こちらは、RODEO CROWNS WIDE BOWLのメッセージプリントトッパーという名称。「トッパー」とは上半身を覆い隠すようなトップスのことだそうで、検索中心の社会になり、新しいネーミングも多数登場している(渋谷)/早くもヘソ出しスタイルが散見された。ラルフローレンのボタンダウンシャツは男女問わず人気だ。古着屋でも90年代のビッグサイズのアイテムが並ぶ(新宿)/白シャツのデザインは年々多様化が進行。開いた背中部分のシャーリングや袖のボリューム感など、これまでに登場したさまざまなデザインも少しずつアップデートされている(原宿)。

(左から)チェック柄生地との切り替えになったデザインシャツ。セットアップの着こなしもじわじわ増えてきた。足元はスニーカーではなくレザーシューズというのがポイント(原宿)/生地や柄の切り返しがデザインになったシャツも散見された。ブルーのカラートーンでまとまっているデザインシャツはそれだけでも存在感が出る。80sのポーチのようなバッグもユニーク(渋谷)/大学生らしき男性のシャツルックは、大きめサイズのシンプルなものをそのまま着るのがデフォルト。ミニバッグのブームはひと段落したのか、エコバッグが増えていた(渋谷)。

カウントアイテム:男性/女性シャツ

今回も、前日のプレサーベイではいろんな意見が出て、決定するのになかなか大変だったカウントアイテム。「小さな流行」はいくつも見られるのですが、「大きな流行」を捉えたいのですが、前回の「ベージュ系アウター」然り、大き過ぎて、すっかり浸透して、ずっと流行っている、というアイテムやスタイルが多く、流れるはずの「流行」が滞っている状態が続いているような印象を受けます。

春先に浮上したカラフルなアイテムの人気は5月は小休止。再びモノトーンのコーディネートの人が目立ち、中には、全身黒のモードっぽい男女も散見され、天候が日々不安定で例年と比べると若干涼しいこともあり、全体的にトレンドが行ったり来たりしている様子も伺えます。

そんな中、悩みに悩んだ末、決定したメインのアイテムとして注目することにしたのは、「男性/女性シャツ」です。直近では2021年9月に取り上げていますが、結果的に昨秋と今初夏という季節の変わり目に共通するアイテムとなっていた点も注目されます。

過去の「定点観測」を振り返ると、2021年9月の「定点観測」では、ここ数年のトレンドでもある袖やえり、素材や柄などをミックスしたデザインシャツが人気でしたが、2022年5月に入り、男女ともにすっかり浸透していることがわかりました。また、合わせるインナーやボトムスも、女性の場合は、へそ出しやショーツ、カラーパンツ、タイトスカートなど多種多様。ボーイッシュなシャツルックをフェミニンにコーディネートするスタイルへと進化していました。

一方、男性は、オーバーサイズのシャツの裾をパンツから出してビッグ&ルーズにまとめるスタイルが目立ちました。張り感のある素材が多く、全体的にだらしなくならない、クールなスタイルが特徴です。また、足元はスニーカーではなく、レザーシューズというのも注目されます(30代後半以上の大人の男性はスニーカーが多いようですが)。

また、渋谷は大人の男性のベーシックなスタイルの人が多く、新宿はカラフルで女性が個性的。原宿は全体的に来街者が若いので、自由でユニークな着こなし方も見られるなど、地点ごとにシャツルックの特徴が異なっていたのも注目されます。

「このシャツはもらったもの。もともと古着なんですが、友だちと白シャツ同士で交換しました」と話すのは、自身でも服をつくっているという(Z世代の)フリーター。細かいピンタックが入ったプルオーバーのシャツは、昔はフォーマルなシーンで着られていたのだろうか。自作の黒いパンツと合わせてヴィンテージスタイルでまとめていた。ただし、足元はいわゆる「便サン(便所サンダル)」というヌケ感が実にユニークで「ファッション」!「ゆくゆくは自分の服を売りたい」ものの、「ネットの繋がりに価値を見出していなくて、展示会などをして対面で販売したい」と話す。
インタビューの続きはこちらをどうぞ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vy7d.html

「持つ服の数は少なくしたいので、汚れたら変えます」と、ユニクロ/+Jの白いシャツに黒いパンツでモノトーンスタイルだった会社員。ドーバーストリートマーケットやギャルソンが大好きというファッション好き。この日もお母さんと待ち合わせをして、一緒に買い物に行くと話してくれました。
インタビューは以下のリンクへ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vyqh.html

原宿地点でインタビューさせてもらった公務員の男性。彼女がUNIQLO(ユニクロ)に返品するものがあったそうで、原宿を訪問しつつ、用事が済んだら、明治神宮駅から電車で移動。浅草で食べ歩きをすると話してくれました。
好きなショップは、「shibuya T」や原宿の「PROV」「今欲しいのは車!」というから、雑誌『POPEYE』の特集記事はとてもストリートカルチャーのリアルを把握しているといえそうです。
詳細は以下へ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vylp.html

渋谷、原宿、新宿各地点の「男性/女性シャツ」は、こちらからどうぞ。(↓)https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vvs9.html

(左から)タイトなトップスにマキシ丈のスリムスカートの90sっぽいIラインシルエットも増えている。ヒョウ柄やグラフィック柄など、ゴチャ感は伝説の雑誌『CUTiE』に出てきた女子たちのよう(原宿)/「モードな気分だったのでデニムのセットアップにしました。これは暗めのオレンジのステッチが目立っていてひと目惚れをしました」(原宿)/リジットデニムだとセットアップでもカジュアル過ぎないきちんとした印象に。LLビーンのボートアンドトートバッグも人気復活中。コンバースのオールスターも久しぶりに多かった(渋谷)。

ズームアップアイテム①: インディゴデニム素材アイテム

続いて、1つめの「ズームアップアイテム」はこちらです。対象は男女。

これまでに何度となく取り上げてきたアイテムで、近年の転換期となったのは2018年4月に取り上げた時でしょうか。一部のファッション通の人たちを除き、20代の若者たちが、インディゴデニム、ロウデニムを「色の濃いデニム」と表現していたのが新鮮でした。それ以前は流行していなかったので初体験だったということ。その後4〜5年過ぎた2020年代に入ってからでしょうか。かつてのような「トレンドの時間軸」による体験感覚は、昨今のヴィンテージブームの浸透ですっかりなくなっているようにも思います。

また、あえてストリートファッション史を振り返ると、2000年代前半のA.P.C.やヘルムートラングなどが提案していたモードっぽいけどカジュアル、というインディゴデニムが思い出されます。こういうところにも(無意識下での)「Y2K」ブームの一端が垣間見られます。

「モードな気分だったのでデニムのセットアップにしました」と話してくれたのは、設計・デザインの仕事をしている女性。人気ヴィンテージショップの「アメリヴィンテージ」で購入したリジットデニムのセットアップを着ていました。

「濃いデニムの方が都会的な感じ」と彼女。リラックス、カジュアルとは逆の、ちょっときちんとした感じを、「濃いデニム」に感じていました。他にも、今ハマっていることとしてあげてくれたのが、ビーズクッションで寝ることだとか。「山善」の大きなサイズのものだそう!
詳細は以下のリンクからどうぞ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vyxn.html

「シルエットがきれいだったからこのパンツを買いました」と言うのは、人気の日本人デザイナーズブランド「ジョンローレンスサリバン」のタックに特徴のあるデザインパンツを履いていた会社員の男性。好きなショップはSTUDIOSで、他にも「ETHOSENS(エトセンス)」など、日本のメンズデザイナーズブランドのものをこれからもっと書いたい、と話してくれました。

購入したのはブランドのオンラインストアから。近年、ブランドが直接ECの仕組みを構築するところが多く、消費者・ユーザーが、ブランドのSNSを直接フォローし、ショーなどもインスタのストーリーライブで観るなど、どんどんB2Cにダイレクトに訴求するようになっています。彼もインタビュー当日身につけていたほとんどのものをインターネットで購入していました。
インタビューの詳細は以下のリンクからどうぞ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vz2f.html

*各地点の「インディゴデニム素材アイテム」はこちら(↓)からどうぞ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vvwa.html  

(写真左から)ジーナシスのワンピースに古着店で購入したラルフローレンの紺ブレ、Dr .Martensのブーツでマスキュリンにまとめていた女性(渋谷)/「高くてもちょっといいものが欲しい」と大人っぽいヘルムートラングのジャケットをファンタジックなカラーのスカートと合わせて新しい表情にまとめていた女性(原宿)/金ボタン付きダブルの濃紺ジャケットにジーンズ姿の男性。往年の「渋カジ」と似たアイテムながら、肩パッドが薄めでドロップショルダーへと、デザインはより自由に(渋谷)。

ズームアップ・アイテム②: ジャージ/トラックパンツ

2つ目のズームアップアイテムはこちら。対象は男女です。

こちらもまた、2021年10月に取り上げたもので、今春夏も継続して着用者がゆっくり増えきているので再度取り上げることにしました。

昨年の「テーラードジャケット」を振り返ると、男性の多くは、シャツ×パンツのセットアップからスライドしたような、上下セットアップのスタイル=スーチングのスタイルが目立ち、ストリートでは新鮮でした。「古着店で昔の背広を購入する若者が増えた」というようなこともきっかけとなり、ユナイテッドアローズの栗野宏文さんが、コムデギャルソンの川久保玲さんらと企画した、「自由な背広展(https://store.united-arrows.co.jp/brand/ua/news/2022/03/post-919.html)」というポップアップストアの企画へと発展。大ヒットしたのは、3月〜4月のことでした。

一方、女性は、半袖やノースリーブのジャケットを同素材のパンツとセットアップしていたり、ショート丈のサイクリングパンツのようなアイテムとコーディネートするスタイルが、特に若い女性に目立ちました。

その後おおよそ半年が過ぎ、今春は、紺ブレ×デニムという90年前後の「渋カジ」の典型的なスタイルが男女ともに急浮上。フェミニンなシャツルックが流行する一方、女性にマスキュリンなパンツルックが支持されている点と、過去のストリートファッションを意識的に再現する若者も少なくないことも注目されます。

「全体的にメンズっぽいファッションが好きで、これは母の紺ブレをおばあちゃんの家に行った時に見つけてもらいました」と話してくれたのは、経済を専攻している大学生。紺ブレにリーバイスのデニムというスタイルは、広告代理店等、クリエイティブな業界での就活の時にも便利だと話してくれました。
インタビューの続きはこちらからどうぞ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vy9r.html

「自分にとってジャケットは、モードとストリートの中間という認識です」と話してくれたのは、人気デザイナーズブランドの「サルバム」のジャケットを福岡のセレクトショップで購入していたデザイナーのアシスタントをしている男性。オリジナルのテキスタイルによる裏地が少しだけ見える独特のスタイルが特徴の同ブランド。他にも人気ブランドの「NAMACHEKO(ナマチェコ)」が好きだそうで、モード好きの若い男性らしい、個性的なデザインが好まれていた。
インタビューの続きはこちらをどうぞ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006vzxh.html 

*各地点の「テーラードジャケット」はこちら(↓)
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006v4rb.html

2021年10月の考察レポートはこちらをどうぞ
https://www.web-across.com/todays/p7l7560000069l39.html?ra=1

[文責:高野公三子(本誌編集長)]

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