古着を分解、再構築し現代のファッションに落とし込んだアイテムを展開するリメイクブランド『remakebyk』。ヴィンテージの古き良き魅力はそのままに着心地やシルエットなどは常に「今」っぽく、「再構築」はサステナビリティを感じさせるブランドです。確固たる芯を持ちながら変わることを厭わないブランド作りはどのように行われているのでしょうか。生地買い付けから、デザイン、型紙、分解、縫製まで全てひとりで行う古着再生師・下松賢太さんにお話しを伺いました。
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偽善にならないために心から好きなことを
――ファッションへの目覚めはいつ頃ですか?
中学生の頃、近所に古着屋がたくさんあって、いつも部活終わりに皆で自転車で古着屋を巡っていました。通っていたショップにすごく格好良いスタッフさんがいて、「何がこんなに魅力的なんだろう」、「格好良さって何で決まるんだろう」と考えるうちに、僕もファッション関係の仕事をしたいなあと思うようになりました。小さな町で育ち、親や先生の言うことも限られていて、それが正しいかどうかの判断材料が少なかったので、文化の違うところで色々と体験してから自分の将来を決めることにしました。1年だけ工場で正社員として働き、貯めたお金で世界一周旅へ。ファッション系のマーケットや世界遺産を巡りました。マザー・テレサの家にも行き、ボランティアみたいなこともやってみましたが、自分が本当に心から好きだと思うことをやらないと偽善になってしまうんじゃないかと感じたんですよね。好きなことをやりながら、自分のできることで何か周りを幸せにしていけたらいいなと思った時に、やっぱりファッションだなと。
「作ったことないけどやってみます!」と(笑)
――海外で将来のビジョンを固められたんですね。
迷ってはいましたが、海外に行く前からファッションの道に進むだろうなとは思っていたので、海外で色々な人や文化に出会いながら確かめていった感じですね。帰国してから元々お客さんとして通っていた熊本の古着屋に「働かせて下さい!」とお願いをしに行きました。普通だったら服飾系の学校に通うんでしょうけど、元々学校という環境が好きではなかったので…(笑)。オープンしてまだ1年目くらいのお店で、人を雇うことは難しいと言われたんですが、「無給でいいです」と猛アプローチ。段々お給料をもらえるようになりましたが、バイトというよりも修行でしたね。
――すごい行動力! ご自身のブランドを立ち上げられたのもその頃ですか?
そのお店がオリジナルのリメイク商品も置いていたんです。働いているうちにお客さんに「着ない服があるからバッグにしてほしい」など、リメイクの相談を受けることが多くなって、「作ったことないけどやってみます!」と(笑)。デザイン画も自分で描きながら、閉店後20時から24時まで制作していたんですが、食事休憩の時間などを入れると制作時間としては実質3時間弱。お店もそもそも制作スペースではないので環境が整っているわけでもなかったので、「お金を頂く以上は素人でも作れるものを作っていてはいけない」と独立しました。
――リメイクにたどり着いたのはお店での経験だったんですね。
高校生の頃からブーツカットのデニムにボロボロのロックTシャツを着て、ヒッピーみたいなファッションをしていたので元々古い服が好きだったんです。ボロボロのものに格好良さを感じるというか。服以外にも、何に使うでもなくアンティークショールやカーテンを集めたりしていました。リメイクって分解して、地直しして…普通の服を作る3倍の時間がかかるんです。普通より時間コストがかかるからこそ、他の部分ではコストをかけないように考えないといけなくて。お菓子食べてゴロゴロするような無駄な時間を究極まで削ぐことで、「ここにポケット増やしてみようかな?」という風に制作に関する“無駄な時間”を増やしています。
ファッションは『人と繋がるツール』
――『remakebyk』のテーマは「再構築」ですが、今のファッション業界の「サステナブル」への取り組みについてはどのように感じられていますか?
流行で終わらせないというのが理想ですが、流行だとしてもそれで皆の意識が変わって何かのきっかけになるなら良いんじゃないかなと思います。僕は特にサステナブルを意識したモノづくりをしているわけではないんですよね。10代や20代の頃は着ていて疲れるような重たい服も、「テンション上がるし格好良いっしょ!」みたいな感じで楽しんでいましたが、年齢を重ねるときつくなって…(笑)。着心地が良い服やケアが楽な服というのはそれだけ長く愛されるということに気付きました。『remakebyk』では壊れたらリペアも行っていますし、これまでもこれからも自分が良いと思うことを続けていこうと思っています。
――ブランド運営にあたって心がけていることは?
時代によって善し悪しは変わっていくので、色々な人と関わることで自分というものを持ちつつも価値観や感性が凝り固まらないように心がけていますね。アトリエに籠って一人で制作していると偏ってしまうので、ポップアップなどでお客さんやショップの方と話す時間も大切にしています。常連のお客さんと一緒にアトリエで藍染をすることもありますよ。20歳くらいの若い子もいて、刺激をもらっています。仕事というよりは遊びに近い感覚ですね。僕にとってファッションは『人と繋がるツール』なんです。話すのが苦手な人も自分の好きな服を着ることで会話のきっかけができたり、褒められて嬉しかったり…単純に格好良いものを着ていたら嬉しいですしね。子供の頃、おもちゃの変身ベルトを付けることで自分がヒーローになれたような気がしたじゃないですか。日本は周囲に合わせることが善しとされる風潮がありますが、「ただ自分が格好良いと思うから、着る」という感覚を思い出すのも大切だと思うんです。色々な人のライフスタイルに合わせて、ドキドキしたりワクワクしたりする感覚を呼び覚ませるようなものづくりができたら良いですね。
――今後の展望をお聞かせください。
ニューヨークなど海外の大きな都市で展示をしたいですね。売ることを目的としないアート作品を作りたいです。人と繋がったり、技術を磨いたり、今はその夢のために土台を作っている段階かもしれません。夢への具体的な道筋は全然見えていませんが、そこに道が存在していることは確かなので、辿り着くために今できることをやろうと思います。全然違うところにたどり着くかもしれないですけど(笑)、それはそれできっと楽しいですよね。
下松 賢太 しもまつ・けんた
古着再生師。
熊本出身、熊本在住。
生地の買付からデザイン、裁断、パターン、縫製まで全てをひとりで行う。
古着屋での下積みを経て、2013年にブランド『remakebyk』を立ち上げ。
セレクトショップや百貨店への卸、Popupや個展をギャラリーで開催中。
https://www.instagram.com/remakebyk
https://remakebyk.fashionstore.jp/
TEXT:鷲野恭子(ヴエロ)
PHOTO:大久保啓二
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