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アメカジへの憧れと破壊――「MASU」デザイナー後藤愼平にインタビュー

アメカジへの憧れと破壊――「MASU」デザイナー後藤愼平にインタビュー

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2021年秋冬コレクションから2度のランウェイショーを行ってきた<MASU(エムエーエスユー)>。ファッション関係者から注目を浴び、期待の若手ブランドとして一気に名前を広めた。今期のシーズンはどんなショーを見せてくれるだろうかとの期待が高まるなか、22年秋冬はショー形式ではなく、展示会のお知らせが届いた。

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「これまでショーをやらせていただき、より多くの人にコレクションを見てもらえるようになりました。今季は見てくれる人たちとゆっくりお話しできる時間が欲しかったので展示会での発表にしました。」
展示会場のなかで時折、キックボードを飄々と乗り回す姿とは裏腹に、その言葉からは22年秋冬コレクションに対する熱い思いを感じた。


「これから世界に出ていくために、パリ基準のエレガンスやモードを<MASU>でやったとしても勝負になりません。そう考えたときに日本人として戦えるのは、<Comme des Garçons>を筆頭とするアバンギャルドか、僕がファッションに興味を持ったきっかけであるアメカジだと思い、22年秋冬は日本発祥のアメカジカルチャーと改めて向き合いました。」

Profile
後藤 愼平
MASU デザイナー
文化服装学院卒業後、メゾンブランドのヴィンテージを扱うLAILAへ入社。SEVEN BY SEVENの立ち上げメンバーとして企画・生産に携わる。2018年秋冬よりMASUのデザイナーとして就任。MASUは「ありがとうございます」などに使われる丁寧語の「ます」に由来。丁寧なモノづくりを大切にしながらも固定概念がある要素を再定義することで生まれる新しい量産品を指している。

22年秋冬テーマは「bet my boots」ー”賭けても良い”と思えるほど、自分に自信を持てる大切さ

「変わらないことを良しとする世の中の風潮があると思いますが、僕が見てきた日本のファッションは、流行に反抗したスタイルがストリートで起こって、最初は少数だったのが波紋のように広がり、いつの間にか多くの人に認知され、根付き、新しいカルチャーになるというもの。実ったら耕すじゃないですけど、流行ったら破壊するみたいな繰り返しがファッションという“畑”を耕し、更新されてきたと思うんです。だから破壊することへの挑戦の意志を、今回のコレクションテーマに込めました。」

挑戦は時に恐怖であり、本流と違う装いをすることには勇気がいる。本流に乗らないその意志に“betする“。コレクションには透明のポケットのなかに紙幣が入ったウェスタンブーツがあり、「常にbetする=挑戦する意志」を持ち歩くという意味を感じ取った。

また、「今回のコレクションでは、日本のアメカジの固定概念を崩したかった」と話す後藤氏。チェックやペンドルトン柄を壊したり、ペイズリー柄を捻らせたりした表現が印象的で、某有名なアウトドアアイテムのオマージュ、ラメ糸のカウチン、ポップコーン生地で仕上げたスタジャンなど、アメカジを象徴するアイテムを用いながらも固定概念を壊すようなコレクションだった。

ー壊したいものは表現だけではなかった。

「特にアメカジが好きな男性って”〇〇年代のアメリカ製のジーパン”みたいなものに価値を置いて服を買う人って多いですよね。それって物の本質的な良さじゃなくて、情報を買ってるように感じます。例えば100万円のジーンズよりも1万円のジーンズのほうがかっこいいって目線があってもいいと思っています。服の知識を振りかざしてカッコつけるんじゃなくて、もっと直感的にかっこいいって思える服でカッコつけてほしいなって。世界にはいろんな服があるし、いろんなスタイルがあるから、実直にいいと思える服を選べるようになれば、もっと男性の服って発展する可能性があるし、自由度が高くなると思います。最近その発展を感じられないなぁと思って。」

22年秋冬コレクションは、王道のアメカジとは違う色気を醸し出している。アメカジの定番アイテムの丈感や肌の露出など、細かなバランスを変えたことで、カジュアルではなくエレガントな印象を感じた。

日本のアメカジの原点である1960年代に流行した「アイビーファッション」は、当時の男性にジャケットの着方から生地選び、裾や袖から何センチ開けるなどルールを徹底させた雑誌を作り、車やスポーツと同じように”男性の趣味”として世間に訴えかけたそうだ。このコレクションは、日本のアメカジの原点にまで遡り、男性が好む”知識優先的な”ファッションへの反発であったことも読み取れる。

行ったことがないアメリカに思いを馳せたルック

「僕がアメリカに行った事がないっていうのが一つ強みになるのではないかと思いました。自分のデザインにおけるインスピレーションのルーツを辿ると、情報源は雑誌からで平面的な情報なんです。そこで今回、2次元とゲームの画像をリンクさせて、アメリカを表現しながら、リアルで撮ったモデル(3次元)とバーチャル背景(2次元)を合成させて、現実と非現実が交差するようなルックにしました。ここ数年台頭しているバーチャルを利用したムーブメントと、アメカジの固定概念を壊すという意味の”未来のアメカジ”が裏テーマにある22年秋冬コレクションに親和性を感じ、バーチャル背景を取り入れました。
ムーブメントがあるとはいえ、<MASU>でしかできないことをやりたかったので、背景に馴染むようにモデルを立たせたり、影を同じ方向にするためにルックごとに照明の位置を変えたりとこだわりました。ゲームの世界に入り込んだルックにしたくて、まずはゲームの中で良い背景を探して、それに対して組んだスタイリングをどの位置で当てるかなど、時間と手間がかかって、合宿レベルでした(笑)」

インスタのストーリーから垣間見れるコレクションの種

後藤氏はインスタグラムのストーリーで街を歩くおじさんのスタイルから、著名人の私服まで、服に関する画像が上がってくる。何か意図があるのか、後藤氏に伺ってみた。

「ちょっとしたポートフォリオのように使ってますね。ただメモのために上げているものから、実はコレクションに関係するものまで上げていたりするので、そこに気づいてくれたのは嬉しいです。例えば、僕がよく着ていたボーダーのTシャツと某キャラクター、この2つが合わさったのが22年秋冬のアイテムになってます。狙ったわけじゃなくて、パーソナルなものをストーリーにあげていったら自然とアイテムができた感じですね。」

「あとはキムタクですね。アメカジの象徴的な人だなと思ってリサーチした画像もあります。キムタクはかっこいいけど、彼のスタイルを真似してもキムタクにはなれないし、ならなくて良いんですよ。22年秋冬でアメカジ=キムタクという固定概念を崩したいと思ってストーリーに上げたり、アイテムでいうとスタジャンの元ネタも上げたりしましたね。これをポップコーン生地にしてみたらどうだろうかと思って、ポップコーン地のスタジャンをコレクションに取り入れました。」

「文化服装学院の図書館で見つけた<NUMBER (N)INE>だとか、<RAF SIMONS>、ミッキーのトレーナーを着ているマックイーンに面白い!と思ったし、今のムードでもあるのかなと感じましたね。日常の写真でいうと、おじさんのスーツのシワの入り方が変に感じたり、何気に合わせた色のトーンが好きだったり、そういうタイミングで撮影しています。ストーリーで言えば、以前22年秋冬に直接的に関係している『AMETORA』という本も上げましたね。この本には、日本がなぜアメリカから影響を受けているのかが書かれていて、コレクションの参考にしました。もし僕のストーリーを気にしてくれている人がいれば、何か感じてくれたり、本を読んでもらったりしたら嬉しいなと思って楽しくやってます。実はこの画像の中に次のシーズンのリファレンスもありますので、そういうところで今後も楽しんでくれたらと思います。」

MASU 2022AW COLLECTION のルックはこちら

MASU
https://www.instagram.com/masu_officialaccount/?hl=ja

Writter:Keita Tokunaga

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