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ファッションウィークの煌びやかな世界と、今全世界的に起きている現実との乖離にどのように向き合っていくべきか

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ファッションウィークの煌びやかな世界と、今全世界的に起きている現実との乖離にどのように向き合っていくべきか

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ライター / コーディネーター
倉田佳子

 去年の冬くらいから、どこかファッションウィークで見せる世界と全世界的に起きている現実との乖離が、自分の中で今までのように受け入れるには難しくなっていた。これまではその乖離が良い意味で、非日常的な世界観を通して、未来を想起できるポジティブな働きに変わっていたのだが、どうやら自分の中でそのチャンネルが変わってきているようなのだ。書き手としてこんなことを言うのは御法度だと思うが、この乖離について、ファッションウィークのスピード感に任せて簡単に言語化するのは、あまりにも乱暴になりそうで結構難しい。そうした自分の心境の変化から、楽天ファッション・ウィーク東京を通してリアリティがあるものをどこか探し求め続けていたように思う。

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 トップバッターを飾った「ハイドサイン」はリアリティという点では、一番近いところにいるブランドなのだろうと思っていた。ブランドのルーツとしてもともとは、私たちも一度は目にしたことのあるような企業の制服の数々を手掛けてきたデザイン会社から始まったこともあり、ショーのフィナーレにはデザイナーだけではなく、パターンメイカー、縫製士などチームスタッフみんなで一礼。

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 社会的に「労働者」と言われる中でも、「ホワイトカラー」にも「ブルーカラー」にも分類されない全ての労働者に向けた「グレーカラー」をテーマに、今回含めて3シーズン発表してきたそうだ。2005年からあらゆる企業の環境調査を実施した上で、培ってきた実用的なデザインノウハウは、これだけ気候変動や人々のライフスタイルが変化する中で、新たなファッションのあり方を開拓しているように思う。

 とはいえ、階級社会が存在するイギリスであれば、ファッションをはじめにアートや文化など「労働者」は、親しみのある題材のひとつ。特に労働者階級からは、セックス・ピストルズ​​やビートルズ、ヴィヴィアンウエストウッドをはじめとする数々のスターが生まれるほどにある意味、イギリスの代表的なカルチャーの発生源として語られてきた。しかし、見えない階級社会が広がる日本で「労働者」という言葉に対しての印象は、かなり曖昧だ。だからこそテクノロジーの発展以降、非中央集権化した社会でより多様化する仕事の種類に合わせて、「ハイドサイン」がそこにスポットライトを当てることは、社会的にも今後のファッションにとっても重要なことだと思う。

 筆者は今回初めてコレクションを拝見する機会だったのだが、惜しくも彼らが描く労働者のイメージを掴むのは困難だった(そもそも今まで2シーズンにわたり発表されてきた展示会にいくこともセットの演出だったのであれば、情報をキャッチできていなかった私が悪いのだろう)。

 環境音が流れる会場入りを経て、ショーのスタートとともに約30体のモデルが一斉に舞台に登場。それぞれ四方に分かれるように並び、そこを掻い潜るように歩くモデルたちは、まるで都市の雑踏に生きる人々=都市の労働者たちのようだった。しかし、その一体一体が実際にどのような仕事をしているのか想像するのは、ランウェイ的なスピードの演出からなかなか汲み取れなかったように思う。ある意味、もっとディティールを知りたいというこちらの欲求をかり立たせるものでもあったかもしれないが、単なるスポーツウェア的な機能性ではない、労働者の声を反映させた「ワーククチュール」というブランドのアイデンティティをより自分ごととして受け取りたかった。

 これまで実用的な機能性と素材開発に試みる大手のスポーツブランドが、ワークウェアからファッションまで展開してきた中で、彼らの見据えるビジョンは表層的ではないはずだ。だからこそ、私たちひとりひとりの労働者とともに形成していくブランドなのだと、主体性を感じさせる演出が必要だったように思う。

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 労働者含め、社会にいる我々ひとりひとりの主体性を認識できたのは、楽天ファッションウィークではなく、「第8回横浜トリエンナーレ『野草:いま、ここで生きてる』」に足を運んだ時だった。

 3年に1度、横浜市で開催される現代アートの祭典として知られ、今回は​​横浜美術館をメイン会場に旧第⼀銀⾏横浜⽀店、BankART KAIKOなど横浜市内各所を使って開催されている。それぞれの会場のコンセプトや出展作家などの情報は、ここでは割愛させていただくが、ファッションでも馴染みがあるアーティストであれば、ラリー・クラークやスーザン・チャンチオロなどが参加している。

 気候変動や戦争、経済格差など今日の複雑化した社会において、既存の価値観やシステムが揺らぐいま。そんな生きづらさや不安を感じる時代に、横浜トリエンナーレでは個人の力を改めて肯定している。個人個人が抱える感情をシェアし、時に連帯する会場の熱気は、未来への希望を見出すエネルギーとして働いているように感じた。

 その中で旧第一銀行横浜支店では「すべての河」というテーマのもと、直近20年ほどの間に東アジアで活発化したカフェや古着屋、低料金の宿泊所、印刷所やラジオ局を運営する人々の動きを紹介。既存の資本主義のシステムや支配的な社会秩序から逸脱し、日々の暮らしから独自の方法で社会に揺さぶりをかけるような活動が集まっていた。

 建築物自体はシャンデリアもあり優雅なものの、参加者は皆すました顔をすることなく、社会が変わるのを待つこともなく、各々自らの実践方法を編み出しアクションしている。人間味のあるユーモアに溢れつつも実直でDIYな姿勢は、なんだか私たちが堅苦しく考えがちな思考をときほぐすような力があった。参加者のひとりには、「途中でやめる」の山下陽光氏が「山下陽光の思いつきSHOP」と題して出展(出店)。週末に開催された即売会には立ち会えなかったが、SNSで見る限り盛況な様子だった。「即売会」という実践方法自体は、いまに始まった新しいシステムではない。しかし、今年に入って大手のオンラインセレクトショップが、ドミノ倒しのように崩壊していっているいま。彼らがこの10年間ほどでもたらした影響力は、計り知れない。消費者に速くて返品可能で衝撃的な価格のセールも可能にしてしまったと同時に、まだ名も知れていない若手ブランドのビジネスを支えていた一面も持っていた。そうした再びファッションのビジネスモデルが見直され始めている中で、「山下陽光の思いつきSHOP」で行われている草の根的な販売方法と兎に角やってみるという姿勢は、改めてフレッシュな気づきを与えてくれるものだった。

 ほかにも横浜トリエンナーレで刺激的に映ったのは、アジアやアフリカ、南米出身のアーティストが多く並んでいたこと。楽天ファッションウィークで発表されるショーでは、いまだに白人モデルもしくは華奢な体型のモデルが多く起用されている。世界中で、これだけボディポジティブや人種の多様性がファッションに限らず謳われている中で、あえてその選択に至るにはなんとなくの感覚ではなく、キャスティングにも意味性が問われているように思う。

 ファッションは常に社会に生きる誰かひとりの心を救ったり、喜びや驚きをもたらしたり、装いでアイデンティティやアティチュードを示すことのできるものだと信じている。なにもすべてが社会を変えられる可能性を内包し、直接的なメッセージで語るべきと言っているわけではない。それがリアリティだと言いたいわけではない。しかし一見煌びやかに見えるファッションの世界は、経済的には贅沢なものとして排除される可能性だって否定できない。これからの時代、表面的な美しさ以上に言語を越えた力強さがますます問われていくように感じるのだ。

HIDESIGN 2024年秋冬

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