【ロンドン=ライター・益井祐】6月のロンドン・ファッションウィーク(LFW)がファッションだけでなくクリエイティブカルチャーも紹介するイベントとして本格的に再始動した。メンズの「ロンドン・コレクションズ・メン」からスタートし、「ロンドン・ファッションウィーク・メンズ」、そしてパンデミック中にジェンダーフリーな「ロンドン・ファッション・ウィーク・ジュン」へと進化した。
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デヴィッド・ベッカムの開幕宣言を皮切りに、6月7日から3日間開かれた。三つのショー、一つのプレゼンテーション、デジタルプラットフォームの「ディスカバリーラボ」をはじめ、パネルトークや展覧会、ポップアップストア(期間限定店)など、LFW40周年に合わせて40の催しが公式スケジュールに並んだ。
ショーやイベントだけでなく、メンズデザイナーのショーケースやサビル・ロー・ツアーなど、6月の元来の姿であるメンズにも再び焦点を当てた。
チャールズ・ジェフリー・ラバーボーイが10周年を記念してロンドンに凱旋(がいせん)した。ショールームのトゥモローの傘下に入ったこともあり、ここ数シーズンはミラノ・ファッションウィークで発表していた。会場となったのはサマーセットハウス。デビュー当初からスタジオを構える場所である。
今では当たり前となったスカートやドレスを身にまとった男性モデル、ドラァグクィーンやトランスジェンダーの起用など、チャールズ・ジェフリーはファッション業界を席巻したダイバーシティームーブメントの立役者の一人と言っていい。
今回は、二つのシャツを掛け合わせたかのような4本袖のシャツ、スーツ地のミニキルト、ポロシャツの裾にはブリーフのディテールをはぎ合せるなど、カジュアルから下着までメンズ服を再考した。軍服モチーフのセーターや体に刺さったような矢のディテールなど自身のアーカイブもひも解いた。フィナーレはモデルとしても登場したプラスサイズシンガー、ベス・ディットーのパフォーマンス。パーティームードで幕を閉じた。
サマーセットハウスでは10周年を記念したエキシビションを開催中だ。デビューから現在に至るまでの作品を展示するほか、オリジナルのタータンチェックである「ラバーボーイ」の登録証書も公開されている。
19年に急逝したハリド・アル・カシミの後を継いだ双子のフールによるカシミは、初めてのフィジカルランウェーショーを行った。透け感のあるカットソーやオーバーサイズの襟なしシャツ、フロントには装飾性のあるタックが施されたワイドパンツなど、リラックスした雰囲気。一方でドレープが入ったトップや大きなショルダーのテーラードジャケットのような構築的なデザインもある。ジップアップシャツの背中を飾るのは、ニューヨークで活動するアーティスト、カンブイ・オルジミの作品。アートキュレーターのフールの手腕も感じさせた。
デンジルパトリックは、クラブウェアを英国のユニフォームでもあるテーラーリングでアップグレードした。トラックスーツのサイドには軍服の装飾が施され、Tシャツにはエポーレットから飾緒が流れる。リサイクルポリエステルよりも環境にいいと判断して使ったシルクには、ロンドンをモチーフにしたビンテージスカーフ風のプリント。うたい文句にはしないが環境に配慮しており、ブランドの姿勢はクワイエットサステイナブルといったところ。素材の75%が日本製だという。円安もあり手が出しやすいのかもしれない。
英国王立芸術アカデミーのレクチャールームを占拠したのは、小籠包(ショウロンポウ)のような巨大なラテックスの立体物。これはハリのスカートだった。今年のユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝したスイスのノンバイナリーアーティスト、ネモによる生ライブを通じて披露した。衣装は簡単に動かせる大きさではないので、その場での生着替えもあった。
(写真はブランド提供)
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