
Image by: Swatch
時計産業の絶対的な王者として君臨するスイスだが、1970〜80年代は日本の時計メーカーが開発したクォーツ式時計の台頭により、伝統的な機械式時計は大幅に衰退。だが、この“クォーツショック”を逆手に取り、“セカンドウォッチ”という新しい概念を打ち出し、1983年に創業されたのが「スウォッチ(Swatch)」だ。以来、手の届きやすい価格帯と革新的なデザインで親しまれてきたが、実は長年にわたり幅広いアクションスポーツをサポートしてきた。その象徴ともいえるイベント「スウォッチ ナインズ(Swatch Nines)」が去る4月6〜11日、北海道・ニセコを舞台にアジア初開催された。
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アスリートの“創造性”にフォーカス

「スウォッチ ナインズ」は、2008年に初めて開催され、今年で38回目を迎えた世界最高峰のアクションスポーツイベントだ。当初はスノーイベントとしてスタートし、スキーやスノーボードといったウインタースポーツを軸としていたが、その後マウンテンバイク、BMX、サーフィン、スケートボードを迎え、世界中のアスリートが自由に躍動するプラットフォームを担っている。
というのも、アクションスポーツイベントといえば、アメリカのスポーツ専門チャンネル「ESPN」が主催する「エックス ゲームズ(X Games)」をはじめ、莫大な賞金や順位、勝敗といった競技性が重視される。しかし、「スウォッチ ナインズ」ではメダルや賞金は存在せず、“創造性を魅せ合うこと”に焦点を当て、参加するアスリートたちは自由な発想とスタイルで個性を表現するのみ。これにより、競技性や商業性に偏ることなく、スポーツとクリエイティブが自然に溶け合う独自のイベントとして発展してきた。
これについて、「スウォッチ ナインズ」を運営するザ ナインズ AG(The Nines AG)のニコ・ザジェック(Nico Zacek)CEOは、「もともと私は、世界トップ10に入るプロのフリースタイル・スキーヤーで、世界中を転戦していました。ところがあるとき、『スポーツの本質は、競争や国のためではない。仲間と楽しむものだ』と気付いたんです。そこで、世界中のトップアスリートに競い合う場ではなく、純粋に楽しむだけの“オールスターゲーム”のようなプラットフォームを提供することにしました」と、自身の体験が立ち上げの理由に繋がったと話す。

ザ ナインズ AGのニコ・ザジェックCEO
「競技性を排除したアクションスポーツイベントを成立させるのは、より困難な選択でした。世の中のスポーツは、競争が前提にあるので『誰が勝者?』と考えるのが普通です。ところが、我々のイベントには“勝者”がいないので、スポンサーを探すことが難しく、メディアにとっても記事にしづらい。その代わり、“世界最高のライダーたちが集まり、次の世代にインスピレーションを与える”というストーリーが紡げる。これこそが、『スウォッチ ナインズ』の本質なんです」(ニコ・ザジェックCEO)


また、「スウォッチ ナインズ」初のアジア上陸となったニセコ開催に踏み切った理由については、「会場設営には大量の雪が必要なので、ニセコが世界有数の豪雪地帯であることは決め手の一つでした。それに、羊蹄山の存在も大きいですね。写真に写るだけで、ヨーロッパの山とは違う“日本らしさ”が現れるのは魅力です。ただ、雪質や天候がヨーロッパとは異なり、多くの学びがありました」と説明してくれた。
“アスリート目線”のセットアップ

さらに、「スウォッチ ナインズ」の独自性を決定づけるもう一つの要素が、“アスリート目線”のセットアップ(キッカーやレールなどのセクションを設けたエリアの総称)の存在だ。毎回、開催に際して事前にアスリートたちを招いたワークショップを開き、彼らのアイデアをもとにセットアップをデザインする。




今回は、「スウォッチ」のプロチームに所属し、スノーボード・ハーフパイプにおける世界最高到達点(7.72m)の記録保持者である平野海祝選手をはじめ、2018年と2019年の「エックス ゲームズ」のスノーボードビッグエア部門で2大会連続優勝を成し遂げた大塚健選手や、ニュージーランド代表として「北京2022冬季オリンピック」にも出場した涌嶋弓流選手らが参加。昨年10月より議論を重ね、平野海祝選手が考案した巨大なクオーターパイプ「カイシュウズ QP」や、頂上部分にトランポリンが設置された円錐形ステージの「ミニ ヨウテイ JIB パーク」、史上最長となる50mのロングチューブ「ザ チューブ ウェーブ」など、オリジナリティ溢れるセットアップが誕生し、眼前に名峰・羊蹄山を望む「ニセコ東急 グラン・ヒラフ」に設置された。なお、設営は開催の約1カ月前より行われ、世界各国から招聘した17人のコースデザイナーが担当。人工的な雪を一切使用せず、全て現地の天然雪のみで作られるのも「スウォッチ ナインズ」の大きな特徴だ。









そして、4月6日から11日までの期間中、五輪ハーフパイプ3大会連続メダリストの平野歩夢選手や、「2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック」のスノーボード女子ビッグエアで金メダルを獲得した村瀬心椛選手、同じくスノーボード女子スロープスタイルで金メダルを獲得した深田茉莉選手、同じくスキー男子ビッグエアで金メダルを獲得したノルウェーのトルモッド・フロスタッド(Tormod Frostad)選手、同じくスキー男子スロープスタイルで金メダルを獲得したノルウェーのビルク・ルー(Birk Ruud)選手、同じくスキー女子ビッグエアで金メダルを獲得したカナダのミーガン・オールダム(Megan Oldham)選手らを含む50人以上のアスリートが来場。

「カイシュウズ QP」でトリックを披露する平野海祝選手
平野海祝選手は「カイシュウズ QP」でマックツイストを、涌嶋弓流はメインキッカーでバック900 ミュートを、スウェーデンのフリースタイル・スキーシーンを牽引するジェスパー・ジェイダー(Jesper Tjader)選手とカナダのスノーボーダーのラナ・ウィーバー(Lane Weaver)選手は「ミニ ヨウテイ JIB パーク」でトランポリン・トリックを決めるなど、セットアップの各所で競技の枠に収まらない自由なライディングが繰り広げられた。
会場で過去の「スウォッチ ナインズ」にも参加してきた平野海祝選手に話を聞くと、「一般的な大会とは、滑り方も気の持ち方も180度違います」と語る。

「大会は、時間やリザルトなど気にすることが多く、不安を背負いながら挑むので、何かに締め付けられているような感覚で滑るんですよね。でも『ナインズ』は、何も気にせず自分のスタイルで好きに滑ることができるので、心の中を全てさらけ出す感覚に近いです。こっちの方が俺には向いているし、これが本当のスノーボードの楽しみ方だと、『スウォッチ ナインズ』に参加するたびに思いますね」(平野海祝選手)
残念ながら最終日の一般観覧は、強風と濃霧により中止となってしまったが、近隣地域在住の子どもたちを対象とした「ライド ウィズ プロ(RIDE WITH PRO)」は実施され、トップアスリートとの交流を楽しむ姿が見られた。
競技という枠組みを超え、アクションスポーツの新たな価値基準を提示する「スウォッチ ナインズ 」は今後、6月15〜20日にオーストリア・ゼルデンで「スウォッチ ナインズ バイク」が、10月8〜10日にアメリア・テキサスで「スウォッチ ナインズ サーフ&スケート」が開催されるほか、2028年には「スウォッチ ナインズ スノー」の日本再上陸が決まっているという。
最終更新日:
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