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「リムレスメガネは文化になり得る」 空間デザインスタジオがアイウェアを作る理由

Image by: RIMLESS TOKYO

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 東京・清澄白河を拠点とするメガネと香水のコンセプトストア「アトリエ マクリ(Atelier Macri)」が、今年3月にリムレス(ふちなし)スタイルのアイウェアを専門に取り扱うオリジナルアイウェアブランド「リムレス トーキョー(RIMLESS TOKYO)」を立ち上げた。6月9日まで、ブランド初となるポップアップを渋谷パルコ1階で開催している。

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 アトリエ マクリの母体であるマクリ(MACRI)は、空間演出のスタイリング提案、家具の販売・買い付けを手掛ける会社。「空間」の会社はなぜメガネを作るのか? プロデューサーの斎藤雄介に聞いた。

アイウェアと香水はスタイリングを整えるプロダクト

── アトリエ マクリは2022年12月にオープンしました。そもそも、空間スタイリング会社がメガネと香水の店を立ち上げた理由は?

 マクリでは、店舗空間のインテリアのセレクトやスタイリングを行っています。展示会会場や店舗設計など、BtoBのビジネスを約10年間続ける中で、作った店舗や空間の先にいるエンドユーザーともコミュニケーションをとることができる起点を作りたいと考えました。

 せっかく店を作るなら、わざわざ足を運んでいただく意味のあるコンテンツが作りたかったので、オンラインでは選びにくく、店員のアドバイスを受けながら選びたい専門性が高いもの、そしてメンテナンスを通じて長くお客さまとお付き合いが続くプロダクトを取り扱いたいと考え、メガネと香水を選びました。単に「メガネと香水」と聞くと脈絡なく感じるかもしれませんが、その日のスタイリングを仕上げる重要なピースであるという共通点もあります。

 清澄白河という東京の中心から少し離れたエリアを選んだのは、会社が元々浅草にあったので東京の東側で移転先を探していたこと、そして時間をかけてわざわざ訪れなければいけないエリアだからこそ、ゆっくりとした時間を過ごしていただけると考えたからです。

店舗内装

Image by: Atelier Macri

── アトリエ マクリはセレクトショップですが、オリジナルブランドはどのようにして誕生したのでしょうか。

 以前から、店に置きたいイメージのものが既存のブランドで見つからない時はひっそりと自分たちでオリジナルアイテムを作っていたんです。でもそれはあくまでも足りないジャンルを埋めるためのプロダクトでした。

── 市場に足りないのが「リムレス」だった?

 リムレスアイウェアは、1990年代から2000年代にかけてハイファッションの文脈で注目されましたが、次第と機能性重視のプロダクトというイメージを強め、ファッションアイテムとして用いられなくなっていきました。トレンドアイテムとしてリムレスが再注目を集め始めた2024年初頭には、デコラティブすぎるかクラシカルすぎる、両極端なデザインがほとんどで、ニュートラルで静かな、アトリエ マクリが求めるデザインが見当たらなかったんです。お客さまからも「リムレスを探しているけど、どこで買ったらいいのかわからない」という声が聞かれました。今でこそリムレスを作るようになったブランドは増えましたが、フレームがないのでレンズに直接テンプルを取り付けなくてはいけないリムレス構造はレンズの付け替えに手間がかかるのでやりたがらないブランドが多かったんです。2024年ごろから作りはじめ、同年5月にザ・コンランショップ東京店で開催したアトリエ マクリのポップアップで初のオリジナルプロダクトとして披露しました。そこで想像以上の反響をいただき、ザ・コンランショップでの卸売りや「ユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SONS)」をはじめとする大手セレクトショップでの取り扱いが次々と決まりました。

Image by: RIMLESS TOKYO

Image by: RIMLESS TOKYO

── アトリエ マクリのオリジナルプロダクトとして開発してから約2年、今年3月にリムレスアイウェアブランド「リムレス トーキョー」を立ち上げました。

 アトリエ マクリには、オリジナルのリムレスメガネを求めて北海道から沖縄まで日本全国からわざわざ足を運んでくださるお客さまがいらっしゃいます。メガネは定期的なメンテナンスが必要なので、遠方のお客さまには近隣にあるおすすめのメガネ屋さんを個別にご案内したり、調整が必要な商品を郵送していただいたりしていましたが、もっと手軽に楽しんでいただくために遠方のお客さまのメンテナンス拠点を作る必要性があると考えました。そこで、メガネブランドとして立ち上げることでメガネ専門店にも卸先を拡大し、3月からは全国展開のメガネ専門店「ポーカーフェイス(POKER FACE)」でも取り扱っています。

 アトリエ マクリは、ニッチなデザインのアイウェアを取り扱っており、私たちが店頭でしっかりと接客して選んでいただくことを重視している、“狭く深い”クローズドな空間ですが、ザ・コンランショップでのポップアップをはじめとする反響の大きさを見ていると、リムレス トーキョーはもっと幅広い方々も気軽に手に取っていただくことができる機会を作ったほうが良いのではないかと感じたんです。リムレス トーキョーもアトリエ マクリの世界観の地続きにありますが、もっとその可能性を広げるために、アトリエ マクリの屋号から切り離してみることにしました。

レンズを替えれば別のデザインに 「リムレス」ならではのミニマルな生産体制

── 現在リムレスの人気は継続していますが、2000年代に人気が落ち込んだように今後また人気が下火になる可能性もあるのでは。「リムレス専門」を掲げることはリスクではないですか?

 トレンドに波があるのは確かですが、リムレスデザイン自体はずっと残り続けています。リムレスの魅力は、フレームがないことによる軽量さや顔馴染みの良さ。しかし、製造が難しかったことから、かつてはジュエリーのような高級品として上流階級だけの持ち物だった時代もあります。リムレスが持つ普遍的な魅力を「文化」として根付かせたいんです。

── リムレス トーキョーらしいデザインの特徴は?

 リムレストーキョーは、「アイウェアブランド」ではなく「スタイリングブランド」であると定義しています。デザインする際に裏テーマとして設定したのは「部屋着に合わせてもサマになる」ということ。リラックススタイルに合わせても、顔だけが浮くのではなくナチュラルに馴染むものです。

 かといって、馴染みすぎてもアクセントにならないし、尖りすぎると本人の印象を変えてしまう。かける人が主役になるように、顔の印象を邪魔しない、でも「ないよりあったほうが良い」ものにするべく、シェイプとカラーだけでさりげない存在感を出せるように意識しています。

オーバルでもスクエアでもない絶妙なレンズシェイプはリムレス トーキョーならでは。

Image by: RIMLESS TOKYO

── レンズカラーやシェイプのバリエーションを幅広く揃えていますね。

 お客さまに提案する際も、珍しいシェイプはクリアレンズに、その人に似合うシェイプはカラーレンズで遊んでみるなど、“違和感”と馴染みの良さのバランスを大切にしています。

キャットアイ風のやや吊り上がったシェイプは、フレームがないことで主張が少なく「男性もかけやすいキャットアイ」として男性人気が高い。

── どのようなバックグラウンドのメンバーがブランドを運営しているんですか?

 マクリには、メガネ業界をはじめインテリアやアパレルなど幅広いバックグラウンドのメンバーが揃っていて、それぞれが「スタイリスト」を名乗っています。マクリのメンバーが約15人の中で、アトリエ マクリやリムレス トーキョーを担当しているのは5人。誰か一人がバイヤーを名乗るのではなく、価値観を共有した全員が「マクリに合うかどうか」という基準を持ってセレクトしています。デザインはイタリアで10年間アパレル業界に携わってきたメンバーが中心になって、スタイリングのアクセントになるという視点から開発しています。

── 生産体制を教えてください。

 テンプルなどのパーツとレンズをそれぞれ仕入れて、レンズを削って形を作る加工と組み立ては私たちの手で行っています。テンプルは全型共通で、レンズシェイプを変えることでデザインのバリエーションを作っています。5分もあれば組み立てることができるので、全商品の完成品在庫を積んでおく必要もなく、アトリエ マクリでは接客をしながそのお客さまに似合うメガネを考えて組み立てることもしばしば。そうしたミニマルな運営が可能というのも「リムレス専門」ブランドにした理由のひとつです。

 また、レンズを変えるだけで別のデザインになるので、アトリエ マクリの店頭では1万6500円でレンズの交換を受け付けています。購入していただいたデザインに飽きてきたら、店頭で新しいものを選び直していただき、色々なデザインを長く楽しんでいただくことができます。

他モデルと同じテンプルも、カーブレンズに合わせるとカーブサングラスになる

── 今後の展望を教えてください。

 リムレス トーキョーは、単独での直営店出店を目指します。また、アトリエ マクリに関しては、今秋に現在の店舗の増床を行います。現在は1階のみですが、2階に新たに立ち上げるジュエリーラインを、3階をリムレス トーキョーのショールームにする予定です。恐れ多いのですが、いずれはアトリエ マクリの建物を、ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)のような、訪れた人が半日滞在してくれるような場所にしたい。アパレルブランドのポップアップなども不定期で開催していて、色々な人が関わってくれる場所を作っています。

 ジュエリーを始める理由は、「人生の節目」に選ぶ人が多いものだと思うから。そして、ジュエリーだけでなく、アトリエ マクリのお客さまはメガネも仕事の節目や人生の転機に合わせて購入してくれる方が多いです。近頃は結婚式で指輪ではなくメガネを交換する人もいると聞きます。これからも、節目に訪れたくなるような、記憶にも残る場所づくりを目指し、より深くお客さまの人生に関わっていくお店づくりをしていきたいと考えています。

左:アトリエ マクリのスタイリスト 小山内あみ、右:プロデューサーの斎藤雄介

最終更新日:

◾️アトリエ マクリ:公式インスタグラム

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション小物・アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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