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万引きが急増、アメリカ大手小売がセルフレジを相次ぎ撤去

ウォルマートの店舗で「Lane Closed」のテープが張られ閉鎖されたセルフレジレーン。万引き被害の急増や新たな規制の波を受け、アメリカの大手小売業ではセルフレジの稼働停止や撤去の動きが加速している。

ウォルマートの店舗で「Lane Closed」のテープが張られ閉鎖されたセルフレジレーン。万引き被害の急増や新たな規制の波を受け、アメリカの大手小売業ではセルフレジの稼働停止や撤去の動きが加速している。

ウォルマートの店舗で「Lane Closed」のテープが張られ閉鎖されたセルフレジレーン。万引き被害の急増や新たな規制の波を受け、アメリカの大手小売業ではセルフレジの稼働停止や撤去の動きが加速している。

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

セルフレジ縮小の波とAI監視の攻防

日本のコンビニエンスストアやスーパーマーケットでセルフレジの導入が急増している一方で、アメリカの小売業界では真逆の現象が起きている。

ウォルマートやターゲット、さらにはコストコといった巨大チェーンが、かつて大規模に展開したセルフレジを縮小、あるいは撤去し始めているのだ。

人手不足対策や効率化の象徴であったはずの無人レジが、なぜいま逆風にさらされているのか。そこには、テクノロジーと人間の心理が交錯する複雑な背景がある。

万引き急増とセルフレジ撤去の現実

アメリカの小売業がセルフレジを見直している最大の理由は、損失の急増である。2022年、全米の万引きや内部不正による損失は1121億ドル(約16兆8150億円)に達した。

特にセルフチェックアウトは不正の温床となりやすく、調査によればセルフレジ利用者の27%が意図的な未スキャン経験を認めている。

この数字は困窮層に限ったものではなく、世帯収入10万ドル(約1500万円)以上の富裕層においても40%が意図的万引きを認めるという衝撃的な結果が出ている。

この事態を受け、ディスカウントチェーンのダラーゼネラルは数千店規模でセルフレジを撤去し、ウォルマートやターゲットも一部店舗で有人レジへと回帰している。

コストコも、非会員による不正利用を防ぐために従業員による確認を強化し、セルフレジの運用を見直している。

効率化を追求した結果として生じたモラルの低下が、企業の利益を大きく損なう事態となっているのだ

AIコンピュータービジョンによるリアルタイム検知の最前線

もちろん、小売企業もただ手をこまねいているわけではない。

セルフレジを維持しつつ不正を防ぐための切り札として期待されているのが、AIを活用したコンピュータービジョン(視覚認識技術)によるリアルタイム検知である。

このシステムは、セルフレジのレーンに設置されたカメラが継続的に映像を分析し、バーコードの読み取りや重量センサーに頼ることなく、顧客の手の動きや商品の軌道を追跡する。

スキャン漏れや、スキャンせずに直接袋に入れる行為、あるいは高額商品を安価な商品のバーコードで通すといった不正をリアルタイムで検知し、モニター上で顧客に再スキャンを促す仕組みだ。

同時に、現場の従業員にはエラー前後の短い動画クリップが送信され、即座に状況を把握して対応できるようになっている。

ウォルマートでも、未スキャンを検知して疑わしい取引を遠隔でフリーズさせる機能を導入している。

しかし、AIによる監視システムも万能ではない。誤検知による過剰な警告は、善良な顧客に「疑われている」という不快感を与え、顧客体験を著しく損なう危険性がある。

また、システムが不正を検知しても、最終的に顧客に声をかけて対応するのは現場の従業員であり、彼らに多大な心理的・物理的負担を強いることになっている。

ついに自治体が介入、広がるセルフレジ規制条例

こうした状況の中、カリフォルニア州では自治体がセルフレジの運用に直接介入するという異例の事態が起きている。

コスタメサ市やロングビーチ市に続き、サンタアナ市でもセルフレジを厳しく規制する新たな条例が可決に向けて動いているのだ。

この条例案では、セルフレジ3台につき最低1人の専任従業員を配置することが義務付けられ、利用できるアイテム数も15個以下に制限される

さらに、アルコールなどの年齢制限のある商品や、防犯タグのついた商品でのセルフレジ利用も禁止される。

違反した店舗には、従業員1人につき1日最大1000ドル(約15万円)の罰金が科される可能性があり、従業員や顧客が店舗を提訴することも認められている。

この規制の背景には、全米食品商業労働組合(United Food and Commercial Workers)や国際サービス従業員労働組合(Service Employees International Union)といった労働組合の強い後押しがある。

彼らは、自動化による雇用喪失を防ぎ、過重労働を強いられている従業員の安全と労働環境を守るために規制が必要だと主張している。

一方、カリフォルニア食料品業者協会(California Grocers Association)などの小売業界団体は、規制によるコスト増が最終的に消費者の負担となり、アマゾンのようなオンライン小売業者を利するだけだと強く反発している。

実際に、厳しい規制に対応できず、アルバートソンズやボンズではセルフレジを完全に閉鎖する店舗も出始めている。

テクノロジーと人間の最適なバランスを求めて

アメリカで起きているセルフレジをめぐる混乱は、テクノロジーによる効率化が必ずしも理想的な結果をもたらさないことを浮き彫りにしている。

企業は人件費削減を狙って無人化を進めたが、結果として万引き対策やシステムの維持、そして顧客対応に多大なコストと労力を割くことになった。

これからの小売業に求められているのは、デジタル化の推進と同時に、人間の従業員が提供する安心感やサービスをどのように組み合わせていくかという視点である。

日本の小売業も、アメリカの失敗を対岸の火事と捉えるのではなく、コスト削減と顧客との信頼構築を両立させる新たなチェックアウトの形を模索する必要があるだろう。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

日本のスーパーでセルフレジを使うとき、バーコードを探して手間取ったり、袋詰めに焦ったりした経験はありませんか?

アメリカではその「セルフの限界」が、万引きの急増という形で最悪の結末を迎えています。

AIカメラが客の手元を監視し、不正を検知すればレジがフリーズする。

それでも防ぎきれないから、今度は市議会が「セルフレジには必ず店員を配置せよ」と条例で縛り始める。

効率化のために導入したはずの機械が、結局は監視のための人件費を増やすという本末転倒な事態に陥っているのです。

日本はまだ客の良心に支えられていますが、物価高が続けばアメリカの二の舞になりかねません。

小売業における本当の意味での効率化とは何か、テクノロジー万能主義のツケを払わされているアメリカの現状は、私たちに多くの教訓を与えてくれます

最終更新日:

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