2026年1月1日付で純粋持株会社体制移行に伴い、3月27日付で小林一俊前社長がコーセーホールディングス(HD)代表取締役会長グループCEOに、澁澤宏一前常務取締役が代表取締役社長グループCOOに就任した。コーセーが誕生して今年で80周年。19年ぶりの社長交代かつ、創業家以外で初の選出として話題を集めた。新体制下の両氏に、その狙いや戦略について、そして改めてコーセーのあるべき姿について聞いた。
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左から、澁澤宏一 コーセーホールディングス 代表取締役社長グループCOO、小林一俊 コーセーホールディングス 代表取締役会長グループCEO
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小林一俊/コーセーホールディングス 代表取締役会長グループCEO
慶應義塾大学卒業。1986年コーセー入社。1989年から企画本部長室でCIプロジェクトの推進を担当。創業45周年にあたる1991年にはCIを導入。同年3月に取締役マーケティング副本部長、12月取締役マーケティング本部長兼宣伝部長を歴任し、広告宣伝の刷新を図るなどコーセーのイメージ向上に大きな力を発揮。1995年常務取締役、2004年代表取締役副社長、創業60周年にあたる2007年6月に社長就任。2026年1月1日に純粋持株会社移行に伴い、3月27日付で現職。
澁澤宏一/コーセーホールディングス 代表取締役社長グループCOO
1960年生まれ。立教大学卒業後、1984年コーセー入社。営業やマーケティング部門を経て、中国の現地法人董事長を務めた。経営企画部門では、中長期戦略の立案や経営管理体制の構築を主導。経理や法務、人事、品質保証といった基盤部門も統括。2011年執行役員、2013年取締役を経て、2018年から常務取締役。2026年3月27日付で現職。
◾️コーセーとは
1946年創業の日本の大手化粧品メーカー。「雪肌精」「コスメデコルテ(DECORTÉ)」「アディクション(ADDICTION)」などの人気ブランドを擁し、独自の高い技術力で高付加価値な化粧品を国内外に展開する。2026年1月1日に純粋持株会社に移行。HD傘下にコーセー、アルビオン、コーセーコスメポート、コーセーインダストリーズ、タルト、ピューリを擁する。「美しい知恵 人へ、地球へ。」を企業メッセージとし、「正しきことに従う心」(創業者 小林孝三郎氏の座右の銘)を行動憲章として掲げている。

目次
中長期ヴィジョンを見据え、純粋持株会社へ移行
⎯⎯2026年1月1日付で、持株会社に移行しました。改めて狙いを教えてください。
小林一俊 代表取締役会長グループCEO(以下、小林):2030年をマイルストーンとした新たな中長期ヴィジョン「Vision for Lifelong Beauty Partner―Milestone2030」において、連結売上高の成長指標として年平均成長率(CAGR)5%以上を目標に掲げていますが、コーセーグループの現在の規模と化粧品業界でのポジショニングを考慮すると、1人の経営者が把握できる範囲を超えていると判断しました。
目的は大きく2つあります。第一の目的は、グループ内シナジーとグループガバナンスの強化による、競争力と企業価値の向上です。アルビオンのEC立ち上げにコーセーのインフラを活用したように、ブランドや技術、人材などの経営資源の連携により積極的にシナジーを創出し、稼ぐ力を強めていきます。あわせて2030年に海外売上比率50%以上を目指すべく、グループガバナンスを強化し、各事業会社の意思決定を迅速化するとともに、取引先との交渉一本化や資材規格の標準化を進めることで、コスト削減と生産性向上を図ります。
⎯⎯では2つ目の目的は何でしょうか?
小林: 日本を代表する美容企業集団「ビューティコンソーシアム」を作り上げるため、新たなパートナー企業をグループに受け入れる際にも、持株会社体制であることで、スピード感のあるグループ運営が期待できます。これまで当社に仲間入りしたタルトやピューリは、CEOに権限を任せ、高い評価を受ける独自のモノづくりやサービスを創出しグループに貢献していますが、こういったことがより円滑に行えます。「脱・自前」の考えのもと、多様な事業体が連携し合いながら、化粧品だけでなくウェルビーイング(心身の健康)領域まで、幅広い価値提供と社会課題の解決を叶え、グローバルでの存在感を高めていきたいです。

小林一俊 コーセーホールディングス 代表取締役会長グループCEO
⎯⎯会長としての役割を教えてください。
小林: 小林:中長期のことやグローバル戦略、グループ全体の方向性を指し示す舵取り役として方向性に集中します。「ビューティコンソーシアム構想」実現のためにも、M&Aも視野に入れ、海外にも積極的に出向いていきたいですね。ただ今の世界情勢を鑑みるとなかなか難しさも感じていますが…。
また私自身は、化粧品工業会の会長でもあります。少子高齢化の中で、高い機能と繊細な使用感やデザイン力を持つ日本の化粧品はもっとグローバルに力を発揮できるはずです。化粧品工業会の会長として高市早苗首相にもお会いし、今後の輸出促進など国へのはたらきかけを積極的に行っています。
昨年5月に社長を打診、澁澤社長は「コーセーを知り尽くした人」
⎯⎯創業一族以外で初、19年ぶりの社長交代となりました。いつから構想していたのでしょうか?
小林:数年前から投資家・アナリストによるサクセッションプランへの関心が高まり、私自身も入社40年、社長20年が間近であることを機に決断しましたね。澁澤には昨年の5月に打診しました。
⎯⎯澁澤社長が適任だった理由を教えてください。
小林:澁澤が入社した次の年に私が入社し、実はマーケティング時代の上司・部下関係にありました。澁澤は、1984年入社以来、営業・マーケティング部門、中国法人董事長、経営企画(中長期戦略立案・管理体制構築)、経理・法務・人事・品質保証などの基盤部門を統括し、国内外のマネジメントを網羅。「コーセーを知り尽くした人」でもありました。
そして実は、澁澤社長は入社当初からメイクを実践していた人物。弊社は約40年前には、男性用メイクアップの先駆けとして「ダモンブロンザー」を展開していたのですが、このメイクアイテムを使って、自らメイクを施して営業をしていたのです。そんな澁澤は当時、仕事ができる目立つ存在で、販売店さまからとても人気がありました(笑)。


営業時代の澁澤社長。自らメイクをし、販売員にメイクレッスンも行なっていた
青天の霹靂も覚悟を決め、「稼ぐ力」を強化
⎯⎯澁澤社長は打診を受けた時、どう思われましたか?
澁澤宏一 代表取締役社長グループCOO(以下、澁澤):当然、びっくりしましたし、まさに青天の霹靂です。その後、何度も小林会長には「冗談ですよね?」と確認したぐらい(笑)。実は家族にも言い出せず、就任の3ヶ月前まで黙っていたぐらいでした。妻には「ちょっと話がある」と切り出したので、「会社を辞める」と思ったようで、社長に任命されたことを打ち明けると大変な驚きようでした。
ただ、小林会長からそのようなお言葉をいただいたことは、大変光栄でもありました。小林会長の強い意志に感謝し、覚悟を決めました。

澁澤宏一 コーセーホールディングス 代表取締役社長グループCOO
⎯⎯澁澤社長のミッションを教えてください。
澁澤:コーセーHDの推進役として、グループ全体のガバナンスとシナジーをきちんと発揮させることです。アルビオン、コーセーコスメポート、米国発タルト(tarte)、タイ発ピューリ(PURI)といった事業体に加え、皮膚領域の製薬会社 マルホとの合弁会社 コーセーマルホファーマや、ヘアケアのプロフェッショナルメーカー企業 ミルボンとのコーセー ミルボン コスメティクスといった、提携企業との連携を密にするとともに、新たな企業をグループに受け入れることで、多様な価値を提供する「ビューティコンソーシアム構想」の実現を推進します。

昨年「パンピューリ」からはヘアケアラインも誕生しアイテムも拡充している
Image by: PAÑPURI

コーセー ミルボン コスメティックのブランド「im」のブロウ&ラッシュ カラーマスカラ
Image by: FASHIONSNAP
⎯⎯具体的な戦略は?
澁澤:まずは「稼ぐ力」を強化します。中長期ヴィジョンの2030年マイルストーンに対し、営業利益率の達成にはまだまだ足りない状況です。
そういった中で、コーセー事業で売上4割を占めるコスメデコルテの日本エリアにおける持続的な成長、さらにそれに次ぐ第2、第3の収益の柱となるブランドを確立していきます。これは「雪肌精」や「ワン バイ コーセー(ONE BY KOSÉ)」などが挙げられるでしょう。またメイクアップブランドでは、「メイクキープミスト」が圧倒的なシェアを獲得しており、そのシェアの維持と新カテゴリーの開拓を進めます。そのほか伸び悩んでいた「ジルスチュアート ビューティ(JILL STUART Beauty)」は復活の兆しが見え、「アディクション(ADDICTION)」も立て直しを図っています。それぞれの特徴を活かしたユニークな企画・商品で勝負していきます。
⎯⎯稼ぐ力に、グローバル展開は欠かせない戦略だと思います。
澁澤:2025年単年で黒字化を達成した中国は構造改革後の徹底した収益性の改善と現地ニーズ起点のマーケティングへの転換を図ります。またグローバルサウスでの成長のほか、トラベルリテールにおいても欧米展開を強化していきます。アメリカではコスメデコルテがECチャネルにおいて好調で、今後も認知度拡大と販売チャネル網を拡充します。タルトは積極的なマーケティング投資によるさらなるプレゼンスの拡大と、EC・オフラインチャネル双方での成長を推進し、パンピューリはタイ国内でのさらなるブランド価値向上と、日本でもコーナー展開など単独店を増やし、アジア市場におけるグローバル化を加速する予定です。
そのほか、守りの改革としてAI・DXを推進します。生成AIの活用やDXの推進で業務の見直し、効率化による、人的生産性を含めた全社の生産性向上を図りたいと思います。

⎯⎯化粧品企業にとって、円安や原料・材料費の高騰といった負の外的要因には、昨今のアメリカ・イラン戦争による石油危機も加わり、深刻な状況です。現在の状況をどうみていますか?
小林:当社は2025年を振り返ると、国内外ともに好調で、中高価格帯アイテムでもヒット商品が生まれ順調に推移した1年でした。好調を維持したいところですが、ロシア・ウクライナの長引く問題に加え、アメリカ・イランの戦争による石油危機が大きな影を落としています。容器だけでなく中身の原料などモノづくりへの影響が懸念されています。インフレ拡大による消費低迷も気がかりです。
こういった中で、化粧品産業は日用品でありながら、心と感情を豊かにし、人々の前向きな姿勢を育むものです。手に取る瞬間の高揚感、使用時の新たな自分との出会い、そして喜びの感覚。このような世の中だからこそ、こうした体験を通じて、我々は心を満たすアイテムを今後も創造していきます。
⎯⎯AI活用においてもCO2が排出されており、またモノづくりとサステナビリティは相反する側面もあります。サステナビリティの考え方を教えてください。
小林:確かにモノづくりにおいて、中身もパッケージも美しさを追求するとサステナ文脈との両立へのハードルが上がることは事実ですが、やはりそこは追求していかなければなりません。山梨県南アルプス市に建設した南アルプス工場は圧倒的な効率性の高さによる環境負荷低減と、“水資源“を中心とするサステナブルなモノづくりの拠点として7月9日に稼働します。この工場を契機に、水を軸とした環境戦略へと進化させ、新たな目標を設定しました。これにより、水資源の持続可能な利用と保全を推進するとともに、事業活動による環境負荷低減と自然環境との調和を目指し、健やかな地球の未来に向けた取り組みを加速します。

新入社員へ、好奇心と挑戦姿勢で感性・センス磨きを
⎯⎯改めて、コーセーHDとはどんな企業と言えますか?
澁澤:コーセーは小林孝三郎氏が1946年に創業し、戦後の混乱期の中で掲げた「化粧品で人々に夢と希望を与え、明るい世の中をつくりたい」という使命があります。創業80年、この使命をぶらさずまっとうし続ける中で、今回の純粋持株会社移行は、現在の「ビューティコンソーシアム構想」の基盤として、日本発グローバル企業へ進化します。
第二の創業として、新たな一歩を踏み出す今だからこそ、 私たちは「英知と感性を融合し、独自の美しい価値と文化を創造する」という存在理念を改めて心に据えて、世界で存在感のある、信頼される企業を目指していきます。
⎯⎯創業80周年の節目の年に、そしてHD元年の2026年に入社した新入社員の方々には、何を期待し、どんな言葉を贈りましたか?
小林:「ビューティコンソーシアム構想」の実現に向け、新入社員の皆さんには高いアンテナを張り、化粧品を超えたファッション・トレンド・消費者ニーズを捉えてほしいと思います。化粧品は身近な生活の一部であり、生活者視点の経験や発想を業務に活かせば、部門・職種の壁を超えた連携で活躍の場が広がります。市場変化に敏感であれ。街に出て文化に触れ、好奇心と挑戦姿勢で感性・センスを磨いてほしい。
「不易流行」という言葉があります。不易(変わらぬ本質)を継承しつつ、流行(新しさを重ねる)を取り入れることで変化に対応せよ。変化を恐れず自ら変わり続けることが、時代を超えた存在になる道。今日から前進し、活躍を期待しています。

澁澤:昨今の情勢は世界に大きな不安をもたらし、まさに危機的な状態にあり、先行きは不透明です。当社の業績も、決して楽観視できる状況ではありません。だからこそ、稼ぐ力を強化するための「守りの改革」、そして「攻めの改革」を同時に進め、ピンチをチャンスに変える。変化を生み出すために大切なのは、受け身で待つことなく、自ら考え、自ら動きだし挑戦していくことです。
そして、向上心と主体性をもって「自ら磨く」ことを忘れないでほしい。何事も明るく、ポジティブに、そして全力で取り組むことを期待しています。
photography: Katsutoshi Morimoto, interview: Akiko Fukuzaki, Hikaru Kimura(FASHIONSNAP)
最終更新日:
◾️コーセー:公式サイト
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