マイナスイメージ脱却へ 大ヒットした“口金バッグ”を反面教師にアネロはどう再起する?

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 誰もが一度は街中で見かけたことがあるだろう、平成のヒット商品である“口金バッグ”で知られる「アネロ(anello®)」。

 「誰も口には出しませんでしたが、アイコン商品であった口金バッグが街中に溢れることで、持つことにマイナスなイメージを持たれるようになっていたことを我々も自覚していました」。そう話すのは、アネロのマーケティングクリエイティブ責任者の角谷雨氏だ。

 負のイメージを払拭するべく、アネロは今年2月からリブランディングプロジェクトを始動した。そもそも、一世を風靡したはずのバッグにはなぜマイナスのイメージがついてしまったのか。ブランドの歩みから低迷の理由、リブランディングで目指すものまでを訊ねた。

角谷雨(すみや・ゆい)キャロットカンパニー マーケティングクリエイティブ統括

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累計販売個数1250万個、「口金バッグ」により急拡大したアネロ

 アネロが誕生したのは2005年。当時の日本は「クールビズ」という言葉が浸透し始め、人々のライフスタイルが変化するとともに、よりシンプルで機能的なデザインが求められるようになっていた時代。そんな時期に、問屋業として始まったキャロットカンパニーがブランドメーカーとなるべく立ち上げたのが自社ブランド事業であるアネロだった。小ロットから生産できるポーチやペンケースなどの小物からスタートし、2014年に発売した上部が「がま口型」になったリュック、通称「口金バッグ」が大ヒット商品へと成長した。

 「あらゆる人が使いやすいように」という思いから、荷物の出し入れのしやすさを徹底的に追求して生まれた口金バッグは、発売直後国内の女性客を中心にマザーズバッグとして注目を集めた。当時は珍しかったがま口型の開け口は、その利便性から世界でも注目を集め、香港のタレントがSNSで紹介したことを機にグローバルでの認知が急拡大。ピーク時の年間売上は約120億円で、取り扱い地域は約35ヶ国にまで広がった。

 現在もタイとフィリピン、マレーシアを中心に東南アジアでの人気は根強く、旗艦店も積極的に出店をするなど海外進出に注力してきた。一方、国内の販路は大阪に構える2つの直営店以外、すべて卸売による展開。2020年の東京五輪に合わせて観光客の集客を狙い、神宮前交差点の一角に旗艦店を出店したが、コロナ禍による観光客数の激減及びテナントの契約満了により2023年に閉店した。現在の直営店舗での売上構成比は海外が約8割、国内が約2割だが、取り扱い店舗が多いタイでは販売価格を日本の約1.3倍に設定している背景もあり、国内売上においても訪日外国人観光客による消費が大部分を占める構造となっている。

心斎橋店の外観

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なぜアネロはマイナスのイメージがついてしまったのか リブランディングの理由

 累計販売個数が1250万個を超えるアネロの代名詞「口金バッグ」。しかし、メガヒットを記録した一方で、いつしかそのアイコン商品にはマイナスイメージがつきまとうようになってしまった。「一度“流行り切った”ブランドが再度受け入れてもらうためには何が必要か、多方面から深く見つめ直す必要はあった」と角谷氏は振り返る。

「ブランディングがそもそも無かった」

 そもそもアネロの急成長は、口金バッグという単一商品の大ヒットによってもたらされたものだった。さらに言えば、その人気はブランド側が緻密に仕掛けた結果ではなく、思いがけず起きた自然発生的な“バズ”に過ぎなかった。

 「意図せずに広まっていってしまったので、そもそもこれまで“ブランディング”という概念すら存在しないブランドでした。売れるから在庫と型数を増やしていく。そんなスタンスのアネロのバッグに対しては『よく見かけるから流行っているんだろうな』という印象しか持たれていなかったと思います」と角谷氏。元問屋業としての営業力の強さによって流通・販売に強みを持っていたからこそ、当初は問屋を介して雑貨屋やバラエティショップなど幅広い販路に商品を卸していた。しかし強みは同時に諸刃の剣。問屋を介した販売は売り先や販売価格、イメージをブランド側でコントロールできず、「直営店の近隣のディスカウントショップで直営店より安く正規品が売られている、という事態にまでなっていた」という。鮨詰めに商品が並ぶバラエティショップで乱雑に安売りされている商品そのものが、ブランドイメージを毀損していた。どんなにマイナスイメージがついても「使いやすいから使い続けている」というファンは一定数いるものの、SNSでは年々「アネロを持っているのは恥ずかしい」という声が増えていった。マイナスなイメージが増すと、卸先での売上も下がっていった。

 これらのイメージを払拭するべくリブランディングプロジェクトが始動した2年前、大々的なブランド調査を行ったところ、卸先で商品を見た人は購入意欲が低く、直営店や公式オンラインを見た人は購入意欲が高いというデータが明確になった。これを受け、リブランディングを機に事業方針を変更。現在も全国に卸先を抱えているものの、今年から来年にかけて段階的に既存のBtoB事業から、BtoC事業を強化していく。「リブランディングの一番の目的は、自分たちでブランドをコントロールすることができる直営店や直販体制の強化です」。

リブランディングを通して、「口金バッグ」を前面に出すことをやめた。角谷氏は「社内でも反対意見はありましたが、アネロには他の商品もあると知っていただくためには必要な選択でした」と話す。一部残っている口金バッグからも、ロゴの部分に縫い付けていたワッペンを無くしたことでイメージの刷新を図っている。

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マイナスイメージを持っているのは30代以上

 年齢別に消費者の意識を見ていくと、ブランドに対してよくないイメージを持っているのは30代以降という統計が取れた。「20代の方々はそもそもアネロが流行っていた時代のことを知らない。良くも悪くもニュートラルな状態で新しいアネロを受け入れていただけると思っています。感度の高い若年層が新しいアネロに注目してくれたら、次第と上の世代の認識も変わっていくのではないでしょうか」。(角谷氏)

「安価なバッグ」の選択肢が増える中、アネロに求められるものは

 アネロのバッグが人気を博した理由の一つに、1万円以下という手に取りやすい価格設定がある。「当時はアネロの競合と呼べる存在がいなかった。アウトドアブランドのバッグは1万円、2万円を超えている中で、1万円以下で幅広い商品数やカラー展開を揃えているブランドは日本にはなかったんです」と角谷氏は振り返る。

 しかし近年は「ユニクロ(UNIQLO)」や「無印良品」から2000〜4000円台のバッグが多数登場し若年層の支持を集めている。変化する市場の中で、決して“高価格帯ブランド”になりたいわけではない、そんなアネロが次なる価値として提案するのは利用者の生活に寄り添う「SCENE ASSIST」という考え方だ。

新コンセプトヴィジュアル。「なぜバッグが必要なのか」という、根源的な存在価値に立ち返り、バッグが必要なシーンをアシストするブランドへ変化するというメッセージを表現した。

Image by: anello®

新たに誕生した5つの新ライン

 リブランディングでは、ブランドコンセプトと商品ラインを新たに設定。バッグを使う“人”を深く見つめ直した。背景にあったのは、国内のブランド認知は50%と高水準だが、認知はされていても比較検討の際に選ばれるブランドになれていないという課題。”偶然売れた”バッグではなく、ユーザーのために存在し、選ばれるブランドへ。リブランディングを経て、店頭には今年2月から新コンセプトのもと開発された商品が並んでいる。

 新コンセプト「SCENE ASSIST」では、使用者の利用シーンに合わせた5つのラインを新設。ラインごとにバッグを使うシーンを掘り下げ、使う人をアシストするバッグをラインナップしている。ブランドコミュニケーションにおいても、各ラインが別のブランドに見えるように世界観を分けた。各ラインが豊富なシリーズとカラーバリエーションを揃え、今後も順次商品を追加していく。

1.トラベル向け「EXPAND」

 トラベルシーンを軸にした提案を行う「EXPAND」には、大容量、撥水・防水、軽量、ポケットの数などを重視したアイテムをラインナップする。ジェンダーレスな雰囲気も特徴。(5000〜1万2000円)

2.子育て世代に向けた「MATE」

 子育て世代のニーズを叶えるアイテムが揃う「MATE」では、ポケットの中に防水と保冷機能のある素材を採用。ベビーカーの下に入れたままでも横からものが取り出せるサイドファスナーをあしらうなど痒いところに手が届く設計がポイント。ペット向けの商品も揃える。(3000〜1万円)

3.ビジネス、スクール向け「CONVERT」

 通勤通学シーンを意識した「ADVANCE」は、洗練性やガジェット感をプラスしたクールなデザイン。(7000〜1万5000円)

4.日常使いしやすい「FIT」

 既存の定番商品を中心にまとめた「FIT」には、幅広い日常の移動をサポートするアイテムが揃う。(3000〜8000円)

5.口金リュックなどを展開する「NATIVE」

 アネロの象徴である「口金」を中心に構成した「NATIVE」。口金バッグからはロゴのワッペンがなくなったことでよりスマートな印象を与える。生地はシワのできにくいリサイクル生地にアップデートされている。(4000〜1万2000円)

3年以内に全盛期の売り上げに戻したい

 インバウンド需要への依存度が高く、国内消費者との接点が疎かになっていたことでブランドイメージが低下していたことへの反省から、国内では直販を強化することでイメージ刷新を図りつつ、強みを持つ海外マーケットでの展開も加速させることで「ジャパンブランドとしてもう一度世界で勝負がしたい」と角谷氏。

 直近の目標は、国内のネガティブなイメージの刷新。そして、売り上げを3年以内に最盛期と同様の120億円規模まで復活させることだ。出店計画としては、一度は撤退した東京への直営店再出店のほか、インバウンド需要の高い国内主要都市への出店を目指す。また、現在旗艦店ではアネロだけでなく姉妹ブランドの商品も取り扱っているが、今後はブランドごとに独立した店舗を持つことでよりそれぞれの世界観を明確にしていくことでブランド価値向上を狙う。海外市場に対しては、主力の東南アジア市場の深耕に加え、ヨーロッパや中国、そして未進出である韓国への新規参入も視野に入れ、グローバルブランドとしての再起を懸けた挑戦を続けていく。

大阪心斎橋筋の旗艦店内装。リブランディングに伴い、大阪の旗艦店の内装もリニューアル。初めてカラー設定などのレギュレーションを設定した。今後順次海外店舗にも導入していく。

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photography: Katsutoshi Morimoto, text & edit: Chikako Hashimoto, project management : Erika Kawahara (FASHIONSNAP)

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