ゲルカヤノ11と12のアーカイヴ
Image by: FASHIONSNAP
「アシックス(ASICS)」が、韓国発のメンズブランド「アンダーマイカー(Undermycar)」と「アトモス(atmos)」とタッグを組み製作した「ゲルカヤノ 14(GEL-KAYANO 14)」を発売した。発売を記念し、アトモス新宿店ではゲルカヤノのアーカイヴの展示イベント「KAYANO 30th ANNIVERSARY EXHIBITION」を開催。それに先駆けて、ゲルカヤノシリーズの開発者である榧野俊一氏が来店し、アトモスのディレクターを務める小島奉文、PRのYOPPIとともに座談会「atmos LOCAL EDUCATION」に参加した。座談会では、1993年の開発から30年にわたって人気を集める同モデルの開発秘話や、今後の課題についてを語った。
榧野氏は、1993年、アシックスに入社して間もない頃にゲルカヤノのデザイナーに抜擢。当時はランニングシューズ「エクスカリバー GT(X-CALIBER GT)」をはじめ、機能性を重視したデザインが定番化していたのに対し、街履きにも対応できる、ファッション性と機能性を両立したデザインとして開発に着手した。ゲルカヤノは、榧野氏がデザインに行き詰まっていた際に偶然頭に浮かんだクワガタのシルエットをもとにデザインしたという。
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ゲルカヤノシリーズのアーカイヴ
Image by: FASHIONSNAP
当初はタウンユース向けのモデルとして展開していたゲルカヤノだが、榧野氏がデザインチームから外れた2015年以降は、よりランナー向けの本格的なランニングシューズとして展開を続けている。榧野氏は「ランナーと街履きのどちらにも対応したデザインは難しく、近年では機能性を重視したモデルになりつつある」と説明。自身がデザインしたゲルカヤノの姿から変化が起きるのは良い部分もある反面、違和感を感じることもあるという。「デザイン性と機能性は両立できない、と言い切れるほど、機能性を突き詰めたシューズに情緒的なデザインを落とし込むのは至難の技。どちらか一方を突き詰める方が圧倒的にデザインは簡単だが、それではターゲットが絞られてしまう。その中間を狙ったシューズを出せるのが一番の理想」と胸中を語った。近年では、2008年に発売された「ゲルカヤノ 14」を中心に過去のモデルが復刻し、ストリートシーンで人気を集めているが、それについては「ちょうど今のトレンドにはまったのもあるが、元々タウンユースを見越して作られたモデルなので、人気になって然るべきシューズではないかと思う」とコメントした。
また、アシックスが続けている国内外の気鋭ブランドとのコラボレーションについて話を聞くと、「コラボが実現したデザイナーは、必ずアシックスの本社にある社員しか入れない資料館に招いて、アシックスのこれまでの歩みをシューズのアーカイヴと共に紹介するようにしている。コラボで全く新しいものを生み出すというよりは、アシックスの歴史や過去に展開したデザインをもとに新たなデザインを作り上げてほしいため、毎回直接デザイナーとコミュニケーションをとっている」と明かした。継続してアシックスのデザイン監修を行っている「キコ コスタディノフ(Kiko Kostadinov)」のスタジオのメンバーは、毎年資料館に訪問し、アシックスのデザイナーと意見交換を行っているという。
榧野氏が考える現在のアシックスの課題は「サステナビリティへの取り組み」。「『二酸化炭素の排出量を減らそう』『無駄を省こう』ということばかりに重きを置いてしまうと、これまでアシックススポーツスタイルが出してきたデザイン性のあるスニーカーの展開が難しくなってくる」とし、サステナビリティな考えに基づきながらも、今のデザイン性を担保する方法を模索しているという。「素材を環境に良いものにするだけではなく、長期間使えるモデルを作ったり、頻繁に新作を出すのではなく定番化したモデルを数年単位で展開するなど、別の切り口での取り組みも検討している」と話した。
同イベントには、アトモスの公式サイトから応募をした約40人のアシックス愛好者が参加。参加者からは質問を受け付け、アシックスのデザイナーになりたいという学生からの質問に対して、榧野氏は「学生にとって一番大切なのは探究心。いろいろなことに興味を持つことが一番大事。また、シューズをデザインしたい場合には、シューズのことよりもまず先に足の構造や動きについて勉強してみると良いと思う」とアドバイスした。
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