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進化するベルリンファッションウィーク、新たなファッションウィークサーキットの注目都市に

 体感温度が氷点下2桁を下回る極寒のベルリンで、2026年秋冬シーズンのファッションウィークが1月30日から2月2日の4日間にわたり開催された。約30のショーに加え、合同ショールーム、トークセッション、展示会、ポップアップなど多彩なサイドイベントが街の各所で展開され、ファッションと都市文化が密接に結びつくファッションウィークとなった。

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ファッション都市として芽吹き始めたベルリン

 ファッション・カウンシル・ジャーマニー(Fashion Council Germany/以下FCG)が主催するベルリンファッションウィークは、年2回メンズ・ウィメンズ合同で開催。今シーズンはミラノ、パリのメンズウィークを経てコペンハーゲン、ベルリン入りする関係者も多く、ヨーロッパのファッションウィークサーキットの中で、シーズンを追うごとに存在感を増している。

FCGのチェアマン クリスティアーネ・アルプ氏、FCGのCEO スコット・リピンスキー氏ら

 成長の背景には、FCGが主体となり、ベルリン市経済・エネルギー・公共事業局といった行政機関を巻き込みながら、ファッションを都市政策の一つとして位置づけ、継続的に種を蒔いてきたことがある。

 ショーの開催にとどまらず、デザイナー支援のためのアワード設立、海外市場へのプロモーション事業(昨年は、韓国と日本にデザイナーを伴った使節団を「Berlin Fashion X International」として派遣)、隣国デンマーク・コペンハーゲンファッションウィークと協業したサステナビリティの取り組み、異分野を横断するカルチャープログラムの設計まで包括的に行うことで、単なる「見せる場」から「育て、つなげる場」へと進化してきた。プラットフォームの構築、ファッションを政策として推し進めてきた結果として、ここ数シーズンで、確かな芽吹きを感じさせるエネルギーが立ち上がっている。

ロケーションが語るベルリンらしさ

 ベルリンファッションウィークを特徴づける要素のひとつが、会場選びにおける大胆さと都市性だ。ショー会場には歴史ある劇場や美術館だけでなく、かつて発電所や工場として使われていた建築、倉庫、インダストリアルスペースが積極的に活用されている。無機質でスケールの大きな空間、剥き出しの構造体、音が反響するコンクリートの壁面。これらの空間は単なる雰囲気作りではなく、ベルリンという都市が持つ歴史やカウンターカルチャーの記憶を残しながら、ブランドのアティチュードと共鳴し、思想やコレクションの表現幅を増幅させる演出装置として機能していた。

ベルリンの“今”を映す注目ブランド

 ファッションウィークではデザイナーを支援するためのさまざまな枠組みが用意されている。とりわけ「BERLIN COMTEMPORARY」は支援プログラムの中でも、ベルリンファッションの"今"を映し出すラインナップが選出。国内外を問わず公募制で選ばれたブランドはショーを行うための助成金を受けることができ、今シーズンは日本の「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」を含む19のブランドが「BERLIN COMTEMPORARY」枠でショーを開催した。その中から、それぞれ異なったスタイルを打ち出すバラエティに富んだ5ブランドを紹介する。

MARKE

Image by: MARKE

 マリオ・カイネ(Mario Keine)が手掛ける「マルケ(MARKE)」は、ケルンを拠点に、テーラリングを基軸としたコンテンポラリーファッションを提案するブランド。上質なイタリア製の余剰生地と機能素材を組み合わせ、メンズを主軸にユニセックスな視点で再構築されたジャケットやパンツは、クラシックな仕立てとスタイリングで叙情的なムードが漂う。2026年秋冬では、アイコニックなくるみボタンの配置や、わずかなズレを意図的に残したプロポーションが際立った。他ブランドとは一線を画くベルリンモードの分野を切り拓き、シーズンごとに存在感を増している。

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MARKE 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

SF1OG

 「エスエフ ワン オージー(SF1OG)」は、再利用素材を用いながらも、単なるアップサイクルに留まらない退廃的な美学を追求する。古着や余剰素材が持つ風合いを残しつつ、シルエットやレイヤリングによって現代的に昇華。ローカルのコミュニティからも支持を受け、着実にファン層を広げている。2026年秋冬では、柔らかさと粗さを併せ持つ素材使いが印象的で、Y2Kのムード漂う懐かしさと今が交錯する不安定で生々しいエネルギーを放っていた。

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SF1OG 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

Kasia Kucharska

Image by: Kasia Kucharska

 「カシア クチャラスカ(Kasia Kucharska)」の2026年秋冬コレクションでは、自身の母性や感情の揺らぎといった内面的テーマを、手書きの斜線のように描かれたラテックス素材とコットンシャツの柔らかなフォルムの対比によって可視化。シャツやスカートといったベーシックなアイテムを、巻く・結ぶ・外すといったモジュール構造へと変換し、ドリーミーな世界観の中にも力強さを持ち合わせたコレクションを発表した。

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Kasia Kucharska 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

BUZIGAHILL

Image by: BUZIGAHILL

 ウガンダ発の「ブジガヒル(BUZIGAHILL)」は、ベルリンファッションウィークを語る上で欠かせない存在になりつつある。大量の古着がグローバルノースから南半球へ流れ込み廃棄される現実を背景に、「RETURN TO SENDER(差出人に返す)」というコンセプトを掲げ、12シーズン目を迎えるブランドを手掛けるのはメゾンでも経験を積んだウガンダとドイツにバックグラウンドを持つボビー・コラド。高島屋との協業プロジェクトを行うなど、来日時には多くのメディアの関心を引き、日本に馴染みもある。2026年秋冬コレクションでは、ウガンダ最大の古着市場で回収された衣服を解体・再構築し、歴史や流通の歪みそのものを服の構造に組み込みながら、洗練されたエレガンスをも感じさせる完成度の高いコレクションに仕上げた。

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BUZIGAHILL 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

DAGGER

Image by: DAGGER

 北アイルランド出身のデザイナー、ルーク・レイニー(Luke Rainey)による「ダガー(DAGGER)」は、労働者階級の背景やスケートカルチャーを色濃く反映したストリートウェアを展開。2026年秋冬コレクション「Play Hard」では、擦り切れた質感やラフなレイヤリングを通じて、若さと不安、逃避と連帯といった感情を描き出した。日本のバイヤーも一目を置く注目の気鋭ブランドだ。

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DAGGER 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

GmbH

 設立10年目を迎えベテランの域に入る「ゲーエムベーハー(GmbH)」は、2024年秋冬シーズン以降、発表の場をパリから移し、ホームであるベルリンに凱旋。ファッションを通じて政治的スタンスや社会メッセージを発信することを辞さず、継続してコレクションを発表している。2026年秋冬コレクション「Doppelgänger」は、戦争や資本主義、恐怖、強欲、抑圧によって破壊されつつある現代社会に危機感を抱き、衣服を「帰属と抵抗のコード」として提示した。

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GmbH 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

次世代ファッションウィークのかたち

 期間中、「BERLIN COMTEMPORARY」のショー以外のフォーマットも充実。毎日日替わりで3組のデザイナーのプレゼンテーションが行われた「RAUM BERLIN」をはじめ、国立美術館の文化センター内で行われた「Der Berliner Salon」ではブリューゲルやレンブラント、フェルメールといった名画に並んで学生や若手の作品が展示された。

 最終日には火力発電所跡地のKraftwerkをメイン会場に、コミュニケーションエージェンシー Reference Studiosによるファッション&カルチャープラットフォーム「INTERVENTION V」が開催。複数ブランドのショーを取りまとめ、TEDとのコラボレーションによるトークイベントやDJイベント「リスニング・ラウンジ」といった、ファッション、音楽、カルチャーを横断する1日限定のプログラムを主催した。このほかにも多数のサイドイベントが開催され、ショーだけに留まらない様々なフォーマットで見どころを提供し、4日間ファッションウィークを盛り上げた。

 ベルリンファッションウィークは、パリやミラノに代表されるメゾン主導の舞台とも、コペンハーゲンの制度化されたサステナブル路線とも異なる、独自の立ち位置を築いている。FCGと行政の連携によって整備された基盤の上で、若手やインディペンデント、非西欧的なバックグラウンド、政治性、サステナビリティといった要素が同時に共存し、次世代ファッション都市の実験的なプラットフォームとして機能し始めている。

 来る3月の東京ファッションウィーク期間中にも12組のブランドとともに再び来日予定で、アジア市場への注力も顕著だ。物理的な距離や言語の違いはあれど、若手デザイナーのインキュベーション機能も果たす東京のファッションウィークにとっても一つの指標となり得る。ベルリンファッションウィークはいま、次のフェーズへと歩みを進めている。

FASHIONSNAP 編集記者

今井祐衣

Yuui Imai

千葉県出身。中央大学総合政策学部卒業後、スウェーデンに渡りストックホルム大学ファッション社会学修士課程修了。2015年にレコオーランドに入社。語学とコミュニケーションスキルを生かし、来日デザイナーのインタビューや海外コレクションを担当する一方、広告プランナーとして営業~制作もこなす。北欧と長野をこよなく愛し、LagomでHyggeなムーミン谷のような暮らしに憧れている。

最終更新日:

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