(左から)ボラミー・ビジュアー、ブルーマーブル
(左から)ボラミー・ビジュアー、ブルーマーブル

Fashion注目コレクション

パリから新星メンズデザイナーが続々――宗教的な「ボラミー・ビジュアー」と、ボボ・ストリートの「ブルーマーブル」

(左から)ボラミー・ビジュアー、ブルーマーブル
(左から)ボラミー・ビジュアー、ブルーマーブル

 初日のパリ・デジタル・メンズ・ファッションウィークには、前シーズンまで公式のプレゼンテーション枠で発表していた若手ブランドが多く参加した。その中から、パリ発の「ボラミー・ビジュアー(Boramy Viguier)」「ブルーマーブル(Bluemarble)」を紹介しよう。

(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎

Boramy Viguier

 ボラミー・ビジュアーは1989年、パリの郊外で生まれた。フランスとカンボジアのハーフで、パリのアートディーラーで働いた後、ロンドンのセントラル・セントマーチンズに入学。在学中に「クレイグ・グリーン(Craig Green)」と「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」でインターンを経験し、卒業後は「ランバン(LANVIN)」に就職。ルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)のもとで4年半経験を積み、2018年に自身のブランドを立ち上げた。

 どこか謎めいた宗教的なクリエイションが特徴で、シーズンごとにネームタグを変更し、商品タグにはタロットカードが付属する。服を買うと、まるで"ボラミー教"に入信したかのような気分が味わえる不思議なブランドである。日本ではインターナショナルギャラリー ビームス(同社ではボラミー・ヴィギエと表記している)、青山の16AOUT complexなどで取り扱われており、コアな服好きを中心に少しずつ注目度が増している。

 アニメーションと組み合わせた今シーズンの映像も、冒頭からとても怪しい。謎めいた軍隊が出陣する前の儀式のように整列していて、なにかヤバいものを目撃してしまったような不穏な空気感が漂う。各ルックは、まるでポケモンのキャラクターのように登場し、続けざまにルックを構成する各アイテムの特徴が文字と手話で紹介される。画面の切り替わりが速すぎて詳細が分からないのが難点だが、面白い見せ方であるのは間違いない。

 今回のコレクションで強調したのは"悲劇的"な側面だという。「コロナ禍で日常的にネガティブな情報がメディアで流され続ける状況は、視点を変えると映画のようでもあり、不謹慎ながら感動を覚えることもあった」とボラミーはプレスリリースで説明している。生地や縫製のラインが止まってしまったため、身の回りにあるもので製作したコレクションは、不気味な迫力に満ちている。テーラードとウエスタンというボラミーのシグネーチャーはそのままに、エマージェンシー的な機能性が加わっている、と表現すればいいだろうか。全てのルックで装着しているレースのフェイスマスクは、コロナ禍のモードの表現として満点だ。なんとも摩訶不思議な新星の登場を歓迎したい。

 

Bluemarble

 一方のブルーマーブルは、厨二病全開のボラミーと比べて、スプライトの喉越しのように爽やかだ。デザイナーのアンソニー・アルバレスは、2017年に自身のブランド「ワン カルチャー(One Culture)」を立ち上げ、2018年にブルーマーブルに改名。異なる都市で生まれた文化やサブカルチャーに焦点を当て、多様性を表現することをコンセプトに掲げたパリ発の新進ブランドだ。

動画より

 今シーズンのテーマは"夏の逃避行"。ニューヨークやニュージャージーの都会の喧騒の中心で過ごした夏の思い出と、フレンチリビエラの自然のなかで過ごした思い出をミックスしたコレクションで、今もっともパリジャン、パリジェンヌがしたくてしょうがないことを形にしたようなイメージだ。

 映像は5人の若者が家(キャンピングカーを含む)で過ごす様子からスタートする。それから、各々が思い思いの服に着替え、集合場所の川沿いのボート乗り場まで徒歩で向かう。街をランウェイに見立てたのは、エチュードと同じだ。服は現代版フレンチヒッピーといった雰囲気で、オペルカンフあたりのカフェに屯しているボボ(フレンチ・ボヘミアンの略語)に似合いそうな雰囲気。華やかなプリントは、アーティストのマリー・ヴィクトワール・ド・バスシャーと共同で製作したもの。プリントシャツやパンツの素材はシルクなので、同じパリの新星のカサブランカとの共通点も見て取れる。昨今のパリのストリートは、こんな風にグッとエレガントな方向に振れているのだ。

 「今回のコレクションで表現したかったのは、これまで以上に必要とされている"解放の精神"であり、現代の若者たちが誇らしげに身につけているもの」とアンソニーはプレスリリースで説明する。そんなサイケデリックな精神を表現として、華やかなプリントとともに、「The future is bright」や「Excuse me while I kiss the sky」などの言葉が散りばめられている。旅情をかきたてる爽快なコレクションだ。

文・増田海治郎
雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める"デフィレ中毒"で、年間のファッションショーの取材本数は約250本。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。>>増田海治郎の記事一覧

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