
BURBERRY 2026年春夏コレクション
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
晴れ間が続いたロンドンファッションウィークを締めくくった「バーバリー(BURBERRY)」。クリエイティブ・オフィサーにダニエル・リー(Daniel Lee)が就任してから、常に「英国らしさ」を根底のテーマにしてきた。一言に「英国らしさ」と言っても、伝統的な姿勢から、ロンドンナーが共鳴する現代的なもの、そして外から見た時の印象までさまざま。昨年7月に新CEOが就任してもなお、リーには、そんな複合的なイメージをひとつのコレクションにまとめ上げることが求められてきた。
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2025年秋冬シーズンでは、美術館「Tate Britain」という歴史を感じる会場でロンドンから田舎への小旅行を描いた。今回の2026年春夏も英国の伝統を感じさせる格式高い場所で行うのかと思いきや、遠目から見る限り、会場は野外フェスかと勘違するほどの賑わいを見せていた。近所に住む人々がランニングをする木々に囲われた道を抜け、会場に一歩踏み入れるとテントの内側には青空が広がる。英国なのに青空?と思うかもしれないが、あいにく当日に雨が降っていなかっただけで、テント自体はブランドを象徴する防水性のギャバジンカラーで仕上げられ、足元には湿り気のある赤土が敷き詰められていた。来場者みなが足元に土をつけながらキューブ状のシートに座り、落ち着いたアンビエントミュージックに包まれる。
しかし、いざショーが始まると、ヘヴィ・メタルの創始者と言われる英国代表のバンド「ブラック・サバス」の曲が爆音で流れ、一気に会場の熱気が高まる。「音楽とは自己表現であり、オリジナリティであり、そして帰属意識を表すものです」と語るリーが着想を得たのは、ファッションと音楽の結びつき。「装いもサウンドも、恐れることなく自らを表現してきた」ミュージシャンに敬意を示し、具体的な情景として英国の夏の野外ライブをイメージしたという。まるでプレイリストをシャッフルするように、60年代〜80年代のスタイルをミックスアップしたルックが次々に登場した。

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まず印象に残ったのは、繰り返し登場したスキニーパンツ。ここ数シーズン、トレンド化している「インディ・スリーズ」を象徴するアイテムだ。そして、トレンドアイコンのひとりでもあるボビー・ギレスピーの息子であるラックス・ギレスピーも、前シーズンに引き続き登場。ピンクのシャツに光沢のあるタイトなサテンジャケット、タイトなレザーパンツというヴィンテージのミックススタイルは、ショー全体にわたって意識的に取り入れられていたように感じた。





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バーバリーに新たな息吹をもたらすのは、音楽によるムードだけではなく、ブランドを象徴する撥水性のアウターウェアにも。ギャバジン生地のトレンチコートを基軸に、ワックス加工したコットンのオーバーサイズパーカやファイルコーティングされたデニムのアウターまで耐水性のある技術を新たに展開した。また、70年代のヒッピーカルチャーをイメージさせるハンドクロシェのサイケデリックなパーティドレスや、光り輝くバーバリーチェックのチェーンメイルのドレス。いずれも、バーバリーのアトリエが持つ精緻なクラフトマンシップを映し出した。

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今までポップなグラフィックはバーバリーの印象に残っていなかったが、フラワーモチーフのリンガーTシャツや、エドワード朝時代のタロットカードを再構築した総柄のコートなど60年代を想起させるルックも登場。カルチャーとの接続も大事なポイントとなるロンドンファッションウィークにふさわしいパワフルなショーであった一方で、これが単なる音楽好きという側面をあらわしているだけなのだろうかとも、また泥道を歩いて会場を出る瞬間に感じた。日本人の自分からすれば多様に感じる英国でさえ、ここ数週間で恐ろしくも排外主義的な思想が漂い始めている。ファッションを嗜むにはそもそも世界が平和であり、多様を受け入れ、柔軟である土台があってこそ。経済的にも容易にオーディエンスがハイブランドを購買する行為自体、稀になってきているように思う。リーからの直接的なメッセージはないにしても、ぬかるみにはまるような2025年にカウンターカルチャーを提示すること。その静かな強さこそ、英国らしいアティチュードに思えた。
1991年生まれ。国内外のファッションデザイナー、フォトグラファー、アーティストなどを幅広い分野で特集・取材。これまでの寄稿媒体に、FASHIONSNAP、GINZA、HOMMEgirls、i-D JAPAN、SPUR、STUDIO VOICE、SSENSE、TOKION、VOGUE JAPANなどがある。2019年3月にはアダチプレス出版による書籍『“複雑なタイトルをここに” 』の共同翻訳・編集を行う。2022年にはDISEL ART GALLERYの展示キュレーションを担当。同年「Gucci Bamboo 1947」にて日本人アーティストniko itoをコーディネーションする。
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