ADVERTISING

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

“CFCLらしい新しさ”を ヨーゼフ・ボイスから着想を得た高橋悠介が目指す次のステージ

2026年秋冬コレクションをレポート

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

 「シーエフシーエル(CFCL)」が発表した2026年秋冬コレクションで最も印象的だったのは、そのシルエットや佇まいの変化だ。

ADVERTISING

 先シーズンの2026年春夏コレクションの発表を終え、改めてブランドの存在理由や提供価値に立ち返る機会があったとデザイナーの高橋悠介は振り返る。

ソーシャルインパクトとクリエイションは横断できる

 社会・環境に配慮した公益性の高い企業に対するグローバル認証「ビーコープ(B Corp)」を初めて取得した日本のアパレル企業であるCFCL。「服を作ることを通して社会を少しでも良くしていきたいという思いが強いと改めて思っています」とショーを終えた高橋は語る。ソーシャルインパクト(社会的影響)を重視するビジネスは、収益やクリエイティビティとの両立が難しいとされてきた。そうした中、CFCLの理想のレファレンスとなったのが、社会運動と芸術を結びつけたパイオニアである、現代美術家ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)が提唱した「社会彫刻」という概念だ。

社会彫刻(Social Sculpture)
誰もが自身の創造性によって社会の幸福に寄与=社会を彫刻し得る、という考え方。「すべての人間は芸術家」であり、「ジャガイモの皮をむくといった行為でさえ、意識的な活動であるならば芸術的な行為になる」とボイスは述べている。

 ソーシャルインパクトとクリエイションは横断することができる、というボイスの実践に学び、概念としての“彫刻”とブランドのシグネチャーであるニットを掛け合わせた。

「ニット」ならではの新しいシルエット

 CFCLがパリ・ファッションウィークに初参加し、プレゼンテーションを開催したのは2022年3月。2024年秋冬シーズンに発表したVOL.8コレクションからはショー枠にステップアップし、「POTTERY」をはじめとするシグネチャーをさまざまな素材やテクスチャーを通して打ち出し続けることで、CFCLのアイコニックなデザインをグローバルに紹介し続けてきた。

 「海外でもブランドが認知されてきました。今後コレクションでは、より実験的で、“CFCLらしい新しさ”を感じていただけるような、チャレンジングな表現を探求していくべきタイミングだと考えています」と高橋。

 ファーストルックで登場した今シーズンのキーアイテムとなるコートは、ボイスのフェルト作品に着想。壁に掛けられたコートの無造作なドレーピングをモチーフに、帯状に大きくアレンジしたハンガーループを首に掛けるとハンギングしたようなシルエットが生まれる。ファーストルックでは前と後ろから2着のコートを着用した。

前と後ろからコートを着用したファーストルック

 テキスタイルは、ニュージーランド産のノンミュールジングウールと内モンゴル産のカシミヤをブレンドした編み地で弾力性の高い再生ポリエステルを挟み込む三重構造によって、肉厚な張りと温かみを両立。CFCLが特化する「ニット」ならではの、編み端をそのまま活かした仕立てとメランジ調の編み地は、フェルトにハサミを入れたようなラフな印象を与える。

1着のコートをラフに羽織ったスタイル

コートを肩にかけたスタイル

 無造作なドレープは、さまざまな薄手のニットによって現代的に発展。再生ポリエステル100%生地を使用した定番の「MILAN」に加えて、アセテートのブライト糸をブレンドした「AC MILAN」、レーヨンのモール糸をブレンドした「MILAN VEVELT」が登場した。いずれも見返しのないニットならではの仕立てによって軽やかなスタイルを生み出している。

AC MILAN

MILAN VEVELT

ブランド初の箔プリントが登場

 今シーズン、ブランド創設以来初めてとなるモチーフ柄のアイテムを発表。ボイスの代表作の一つであり、同氏が晩年に始動し、没後に完成されたプロジェクト作品「7000本の樫の木」から着想を得て、樫の木の樹皮をモチーフにした箔プリントを使用したドレスが登場した。

キュプラポリエステル糸を用いて無縫製リブニットを編み立て、製品に箔プリントを施した。

 箔プリントは、バインダーを極薄く乗せる高度な技術によってストレッチ地でも滑らかな艶のある表現を可能にしている。

 樫の木の模様は、2670個のスパンコールや手作業で取り付けた1265本のフリンジをあしらったスペシャルなピースにも展開。近年は中東地域などを中心に、高額のオケージョンドレスの売れ行きを伸ばしており、今後もコレクションピースから派生したドレスに力を入れていくという。

シルバーとブラックのスパンコールを2670個取り付けたドレス。

箔プリントを施したプレート状のニットフリンジと、2色のメタリックな糸状のフリンジ3種類1265本を、本体にプログラミングで開けられた穴に手で1本1本通している。

CFCLが目指すべきもの

 CFCLは、今年1月にB Corpの再認証を受け、143.5点のスコアを獲得した。これは2022年の初回認証時に取得した128点を上回り、日本企業の中で最高得点(2026年2月時点)となる。

 「SDGs」という言葉がもはや形骸化しつつある社会の中でも、CFCLはBコープを取りながら、クリエイションを追求し、ビジネスも成長させていくことを目指す。「改めて、これはとても難しいこと」だと語る高橋は、昨年イギリス発のファッションメディア「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion、以下BoF)」が、発表した「BoF 500」に選出された。BoFの創業者であるイムラン・アメード(Imran Amed)は、全てを実現することが難しいその3つを成し遂げているブランドが稀有だからこそ、高橋をBoF 500に選んだという。

 「難しい」を理由に諦めるのではなく、誰もやらないことに挑戦し続ける。「CFCLが実現することで、ソーシャルインパクトと利益とクリエイション全てを高めていくことができるという証明になる。それはきっと次の世代の人たちにも良い影響を与えるはず。そういう気持ちで取り組んでいます」と高橋。

 社会と着る人を繋ぐメディアでもある衣服は、身にまとうことで作り手の意志を発信するマルチプル作品のようでもある。ボイスが芸術の定義を拡張したように、社会的であり続けるCFCLの服もまた、ファッションと社会を新しい形で繋ぎ直すことができるかもしれない。

CFCL 2026年秋冬コレクション

全ルックを見る

CFCL 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

最終更新日:

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション雑貨、アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント