シャネル 2020-21年秋冬クルーズコレクション
シャネル 2020-21年秋冬クルーズコレクション
Image by: CHANEL

Fashion 注目コレクション

シャネルの「不変」――メゾン史上初のデジタルショーから読む

シャネル 2020-21年秋冬クルーズコレクション
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 シャネルが、6月8日に新作のクルーズコレクションをオンライン上で発表した。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受け、他のラグジュアリーブランドに先駆けてデジタルショーに踏み切った格好だ。世界が劇的に変化する中、メゾン史上初の取り組みとなった2020-21年クルーズコレクションの7分13秒の動画配信から見えてくるのは、変化か不変か。

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ショーは中止、オンラインにシフト

 シャネルはこれまで、年6回のコレクションをランウェイショー形式で発表してきた。例年5月のクルーズコレクションについては、過去3年はメインの春夏・秋冬シーズンと同じくパリの「グランパレ」での発表だったが、さかのぼると2016年にはキューバ共和国・ハバナ、2015年には韓国・ソウルで発表している。ホームであるパリ以外の場所で発表するコレクションには、その土地の文化や伝統を取り入れる。これはシャネルに限った手法ではなく、多くのラグジュアリーブランドがパリコレなどの主要ファッションウィークとは異なる時期にプレやクルーズといったコレクションショーを世界各地で発表し、特別感と共に富裕層をはじめとする顧客を惹きつけてきた。

 コロナによるモード界への影響は大きく、シャネルは5月にクルーズコレクションをイタリアのカプリ島で、メティエダールコレクションを北京で発表する予定だったが、いずれも中止を決めた。その他「ラルフ ローレン」「ジョルジオ・アルマーニ」「グッチ」「プラダ」「マックスマーラ」といった複数のブランドが4月から5月に予定していたクルーズコレクションのショーを中止、または延期している。

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 ショーを再開できる見通しが立たない中、シャネルはランウェイからオンラインに形式を変更して発表するメゾンとして先陣を切る形になった。アーティスティック ディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)は、2020-21年クルーズコレクションの発表に至るまでの状況を以下のように振り返っている。

 「最初は、カプリを思い描いていました。ショーの開催予定地でしたが、ロックダウンの影響で実現することはなく、その状況に対応する必要に迫られました。すでに決定していたファブリックを活用し、さらに広い概念で地中海――ユーカリの香りに包まれ、ブーゲンビリアのピンクの色彩に溢れた島々――を巡る旅へとコレクションを進化させたのです」。

 コレクション制作は、パリがロックダウン下にあった5月に、安全を確保しながら行われたという。テーマは「地中海を巡る旅」。イタリアやフランスのリヴィエラで休暇を過ごした1960年代の伝説的な女優たちと、小さなスーツケースで持ち運べるワードローブ、トートバッグ、そして刺繍をあしらったハンドバッグを携えた身軽な旅をイメージした。

 薄手でフレッシュなトーンのツイードジャケットをはじめ、色落ちしたワイドジーンズや刺繍を施したビーチウェア、バミューダパンツを合わせたセットアップから、ダークカラーとシアー素材のリゾートドレスまで、全体的に軽やかなスタイルを提案。アクセサリーは、ウエストを彩るチェーンベルト、AirPodsサイズのミニポシェット、日除け付きのサングラスといった、フレキシブルに活躍しそうなアイテムが揃う(発売は11月下旬予定)。

 動画配信は、日本時間で6月8日19時に公式サイトと公式SNSを通じて行われた。カプリ島ではなくパリ市内で撮影されたという映像では、海辺やテラスを背景に、モデルがそれぞれリラックスした表情で自由に動く。空の色が移り行くマジックアワーをイメージさせるシーンは、夕陽と海風が感じられるような幻想的でセンシュアルなムード。撮影はジュリアン プジョル(Julien Pujol)が担当した。動画と同時に、茜色に染まったヴィジュアルと、51体のルックブックも公開している。

 

ファッション界の変化とシャネルの不変

 ファッション界が早急なデジタルシフトの最中ということもあり、シャネルによる迅速な方向転換は注目を浴びた。一方、コレクション批評の中には辛辣なコメントも見られた。ニューヨーク・タイムズは「Chanel's First Digital Show Was a Disappointment on Many Levels(シャネル初のデジタルショーは多くの観点で失望させられた)」というタイトルの記事を公開。著名ジャーナリストで批評家のヴァネッサ・フリードマン(Vanessa Friedman)による執筆で、失望の理由は世界が激変しているというコンテクストを無視しているように見えたからとし、「It was more like a return to some of high fashion's escapist failings of the past rather than a meaningful step toward the future.(未来に進む意味のある一歩というよりも、過去のハイファッションの逃避的な失敗に回帰したよう)」と綴った。

 報道によると、シャネルは7月のオートクチュールコレクションもオンラインを通じて発表する予定だという。パリを初めとするファッションの主要都市の先行きは不透明だが、シャネルのファッション部門のプレジデントBruno PavlovskyはBOFのインタビューに対し、今後もパリのファッションウィークに参加し、これまで通り年6回のコレクション発表を続ける意向を示している。

The New York Times: https://www.nytimes.com/2020/06/08/style/chanel-cruise-digital.html
BOF: https://www.businessoffashion.com/articles/professional/why-chanel-doesnt-want-to-change-the-fashion-system

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 コロナ禍を契機に「ファッションショーという形式が時代に即していない」「コレクションを減らしスローダウンすべき」「カレンダーとシステムのリセットを」といった見解や提案が目立つが、まだデジタルシフト以外の現実的な動向は見えていない。モード界のトップを走るメゾンがコロナ後の第一歩として踏み出したオンライン配信も、コレクションの仕組みそのものを刷新したわけではない。しかし、長き伝統と世界中に顧客を持つメゾンにとって、従来のペースで新作発表を継続することも一つの答え。時代の変化に即した初の試みの根底に、シャネルの不変性を見ることができた。

【コレクションの全容を見る】CHANEL 2020-21年クルーズコレクション

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