写真左から)ピーター・ループ、イーサン・ポッチマン
Image by: FASHIONSNAP.COM

Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】「81年目のスタートアップ企業」コロンビアが新シューズで踏み出す革新への一歩

写真左から)ピーター・ループ、イーサン・ポッチマン
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 昨年80周年を迎えたアウトドアブランド「コロンビア(Columbia)」が、81年目のリスタートを切った。その第一歩として発表したのがアウトドアとタウンユースをシームレスに繋ぐ新フットウェア「シフト(SH/FT)」。マルチポケット・フィッシングベストやバガブーパーカなどの名作を生み出してきた80年の歴史を尊重しつつ、これまでにない物作りに挑んでいる。「81年目のスタートアップ企業」だというコロンビアが進む先は?商品部役員ピーター・ルピー(Peter Ruppe)とマーケティング部役員イーサン・ポッチマン(Ethan Pochman)の話から、コロンビアの新たな取り組みを紐解いていく。

—1938年にアメリカで創業し、昨年80周年を迎えました。どんな年でしたか?

ピーター・ルピー(以下、ピーター):2018年はイベントを開催したり、世界中で影響を与えられた1年になったかと思います。80年間にわたって培ってきた技術を知ってもらえる、とても良い機会になりました。

イーサン・ポッチマン(以下、イーサン):コロンビア創始者の娘で、現会長のガート・ボイル(Gert Boyle)が生み出してきた様々なイノベーションは素晴らしいものだと再確認できましたし、その精神を受け継ぎながら新しい商品を製作するための良いきっかけになりました。

—特に印象に残っていることは?

イーサン:プロモーションとしてはアジア諸国に力を入れていて、特に日本で開催したエキシビションは過去80年の名品を見せることで、私たちのヒストリーをしっかりと伝えることができました。

ピーター:歴史を尊重しながら新しいものを作っていく、良いリスタートが切れましたね。「コロンビアは81年目のスタートアップ企業」とよく言っているのですが、これからも多くの人をアウトドアの機能で手助けしていきたいという強い思いがあります。

—他のアウトドアブランドと比べて、コロンビアの強みは何だと考えますか?

ピーター:コロンビアではデザインや機能面を重視して商品を作るチームと、アウトドアフィールドの商品を開発するチームがあるんですが、両方のチームが共同で取り組むことがあります。そうすることで今回の「シフト」のような多くの環境に対応できるアイテムを開発することができる。他ではなかなか出来ないのではないかと思うので、そこは強みですね。

—近年ではアウトドアウェアをタウンユースで着用する人が増えていますが、どのように見ていますか?

ピーター:それはとても良いこと。アウトドアのイクイップメントをファッションとして落とし込んでいますよね。もちろん街でも活用できる機能がありますし、アウトドアのアイテムを持つことで山などの大自然に足を運ぶきっかけになる。両方の意味でポジティブな流れだと感じています。

—シューズでもその傾向はあるのでしょうか。

ピーター:例えば日本だと、フジロックでトレッキングシューズを履いている人をよく見かけましたが、そのまま街で履く人は少ないと感じましたね。でも今回開発した「シフト」は、アウトドアの機能が備わりながらファッション的にも優れたデザインで「これさえあれば困らない」という靴を目指しています。アウトドアでも街でも履けるという汎用性のあるシューズがあればと考えたことが、「シフト」を作るきっかけにもなっているんです。

—デザイン面でこだわったのは?

ピーター:若い人たちがターゲットでもあるので、トレンドのニットアッパーは必ず取り入れたいと思いました。かつ、タウンユースでも履きなれているデザインということで、トレッキングシューズではあまり見ないスリムなシルエットに仕上げています。

—ニットアッパーは水に弱そうなイメージですが。

ピーター:防水メンブレンが貼られているので、多少の水たまりに足を突っ込んでも大丈夫ですよ。履き口にはストレッチの効いたゴムを採用しているので、足首にフィットして水が入らないようになっています。

イーサン:アッパーの防水メンブレンは「OutDry」というコロンビアの最新の防水機能です。従来の防水機能は生地の間にメンブレンを入れるので3層になり、分厚くなってしまう。そのためトレッキングシューズはゴツいものが多いんですが、「OutDry」は直接生地に貼り付けられるのですごく薄い。そのため細身のシルエットが実現できるんです。

—若者に向けてどのようにプロモーションしていきますか?

イーサン:2つのポイントに力を入れました。1つ目はコラボレーション。日本ではアトモスとコラボしましたが、ストリートファッションの感度の高い顧客がいるリテーラーと組むことで、アトモスの目線でシフトを売り出すことができます。2つ目は、コアな人気のDJゼッドをアンバサダーに起用したこと。彼の感性のままに伝えることができると思っています。

—若者に人気のある人は他にもたくさんいますが、ゼッドさんを選んだ理由は?

イーサン:理由は2つあります。1つは彼がEDMのアーティストとしてクラシカルなアーティストとコラボレーションしているという点。シフトと同じコンセプトですし、クラシックと現代の音楽をミックスして製作するクラフトマンシップが彼の良さ。80年以上の歴史を持つアウトドアブランドと彼が組み合わさることで、新しい影響を与えられるのではないかと考えました。もう1つは彼がドイツのカイザースラウテルンという森の近くの地域で育ったこと。アウトドアフィールドに慣れ親しんだ人ですし、彼は今ロサンゼルスにある約17億円の豪邸に住んでいるんですが、建てた時のポイントとして「自然に囲まれた家にしたい」と話しています。自然からインスピレーションを得て曲を製作するというアーティスト性に感銘を受けて起用しました。

 彼との面白い話があって、初めて会ったのはホテルの一室で、撮影で使うウェアと「シフト」を渡したんです。そして撮影当日、彼が「これからハイキングで撮影すると聞いていたんだけど、ハイキングウェアを着なくて大丈夫なの?」と言ったんです。そう見えなかったんでしょうね。今着ているのがハイキングウェアだと伝えました。そして自然の中での撮影が終わると「たくさんスニーカーを持っているけど、こんなに汎用性の高いものはない」と気に入ってくれて、彼はその格好のまま夜のクラブのパフォーマンスに行ったんですよ。

—シフトのコンセプト通りですね。

イーサン:まさに。彼が自ら体現してくれましたね。

Image by :Columbia (写真左から、コロンビアの撮影で訪れた岩場、コロンビアのウェアを着用して行ったDJパフォーマンス)

—「シフト」の名前の由来は?

ピーター:わかりやすく人々に変化を伝えたかったので、アウトドアとタウンユースを自由に「シフト(移行)」するという意味を込めて命名しました。人々の常識を覆すものだったり、アウトドアアクティビティに対しての固定概念を覆すものだと信じています。元々はミッドソールの名称が「シフト」で、特殊なプレートを使っているので、クッション性があるんですが、周りを硬めのポリウレタンで固めることで耐久性が増しますし、水が入り込まない。さらに山道を歩く時にクッションが良すぎると逆に足が疲れてしまうので、汎用性を高めるためにスポーツブランドなどが出すスニーカーよりクッション性を抑えて、バウンスしすぎない安定感のあるソールに仕上げています。

イーサン:ゼッドはパフォーマンス中に飛び跳ねたり動き回ることが多いですが「シフトを履くと足が固定されて疲れにくい」と言ってくれていますね。

—ロゴの意味は?

ピーター:街とアウトドアの2通りの面を表現するためにスラッシュを入れました。スラッシュを入れることで、山の形やビルの形にも見えるように意識しています。

イーサン:ニューヨークの直営店などで採用するつもりですが、ショーウィンドウは左右で街と自然の見え方が変わるデザインを計画しています。ブレンド感を大事にしていて、一瞬で違う見え方になる。山に行った後に、すぐに夜のクラブにも行ける。若い人たちは瞬発的な変化が好きですし、それを叶えるのがシフトだと考えています。

—81年目のマーケティングとして、何に力を入れていますか?

イーサン:これから秋冬シーズンに差し掛かるので、コロンビアとしても得意な暖かいジャケットなどの重衣料がプロモーションの要になります。もう一つが、この「シフト」。新しいフットウェアローンチにここまで力を入れるのは、80年の歴史の中でも初めてのことですね。

ーSNSやデジタル上での施策は?

イーサン:やはりソーシャルメディアやインフルエンサー、デジタルメディアの活用は大事になってくるでしょう。特に「コンプレックス(Complex)」とパートナーシップを結んだことは、スニーカーヘッズたちに良いニュースになるのではないでしょうか。コロンビアの過去の資産を大事にすることも重要ですが、それ以上に若い人たちにアプローチしていくことが今後の課題。WEBコンテンツなど、どんどん活用していきます。

—どんなコンテンツですか?

イーサン:例えばコンプレックスとの取り組みで、アメリカで流行っている「Unboxing」などの動画製作に力を入れています。今ゼッドとの動画制作を進めていて、これまで作ったことのない動画になっているので楽しみにしていてください。

—これまでマルチポケット・フィッシングベストやバガブーパーカなど多くのロングセラー商品を送り出してきました。名品を生み出すためには何が必要だと思いますか?

イーサン:名品を生み出すには人々のニーズを把握することが大事です。人々の生活に寄り添うものを作ることですね。それからバガブーパーカは、2着が1着になっているのが特徴ですが、シフトも2足の良さが1足に凝縮されています。なのでバガブーパーカに続く名品になることを期待しています。

ピーター:人々の生活全てをフォーカス的にサポートできる商品になることが、名品と呼ばれる由来だと思います。マルチポケット・フィッシングベストもバガブーパーカも1つの分野だけに特化したものではなくて、普段の生活に根付いた便利さがある。それが多くの人に愛用してもらえている理由です。他のアウトドアブランドは、より高い山の山頂を目指した機能やパフォーマンスの向上を目指したイノベーションを行うことが多いですが、コロンビアは普段の生活でも使える機能をベースに開発しているのが特徴ですね。

—日本では昨年ごろからフィッシングベストがファッションアイテムとして流行しました。日本でのトレンドは知っていましたか?

ピーター:日本からのレポートを見ているので知っていますよ。すごく理にかなっていると思いました。今、出かけるとしたらみなさんガジェットを持ち歩きますよね。特に東京のような都会ではセキュリティも大事なので体に沿って身に着ける方が良いですし、バッグを多く持つよりスマートだと思います。バックパックが売れなくなってしまいますけどね(笑)。

—日本市場についてはどのように見ていますか?

ピーター:日本はアウトドアに根付いている国だと思います。山がたくさんあるというのもそうですが、簡単に都会から自然に出かけられる場所なので、市場としてとても期待ができますし、すでに活性化されている元気な市場だと思っています。

イーサン:街とアウトドアをシームレスに、という動きが一つのトレンドとして終わるのではなくて、カルチャームーブメントとして大きくなることを願っています。忙しい日常を都会で過ごしながらも、若者がアウトドアに向かうのは大事なことなので、一過性に終わらせたくないですね。

—アウトドアに向かうことの大切さとは?

ピーター:自然の美しい景色を見ると人間の心は沈静化されると言われていて、精神的なメディテーションの意味で大事。それから現代はソーシャルメディアなどデジタル上の繋がりが強まっていますが、アウトドアフィールドに友達と行くことで生まれる絆や、互いに影響を与えらえるポイントが必ずあるはずなので。

イーサン:医学的に証明されている学説もありますね。特に言われているのが、長生きの秘訣は自然に出ることだと。血圧を安定させるなど、自然には色々な作用があって短命になりにくいと言われていたり、そこで生まれる人との繋がりが自殺を防ぐと言われていて、医学的な根拠もたくさんあるんです。

—今のアウトドア業界において課題はありますか?

ピーター:環境保全が大きな課題です。たくさんの人に自然に興味を持ってもらうことは一つのミッションだと思いますが、それで汚染してしまっては意味がない。例えば自然公園のサポートをしたりとアウトドアブランドにできることはたくさんあるので、今後も取り組んでいきます。環境と人を守ることが、80年目以降の大事なポイントです。

—最後に、これからのコロンビアの目標を教えてください。

イーサン:何よりも多くの人を助けること。アウトドアのギアを提供する会社として、きちんとした装備で自然も街も楽しんでもらうことがミッションになると思います。

ピーター:私は自然の中で育ったので、自然は神様からの贈り物だと思っています。より多くの人にその大切さに気づいて欲しいですし、それがアウトドアブランドの取り組みとして大事なポイントだと考えています。あとは、多くの人に新しくてスタイリッシュなコロンビアの靴を履いてもらうことですね。

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