
コム デ ギャルソン 2026年秋冬コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
1981年にパリのモード界を揺るがした“黒の衝撃”から45年。黒は、川久保玲が手掛ける「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」の象徴であり続け、反骨精神、創造性、哲学を体現する色としてクリエイションを支えてきた。2026年秋冬コレクションは、改めて黒の本質に迫る。テーマは「Ultimately Black(究極の黒)」。
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I have come to realize that, after all, black is the colour for me(私は気付いた、結局のところ、黒こそが私の色だと)──コレクションノートより
黒そのものの美
今年1月、同じく川久保が手掛けている「コム デ ギャルソン オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)」の2026年秋冬コレクションでは、「BLACK HOLE」をテーマとし、闇から抜け出そうとする力強いメッセージを打ち出した。それに続く今回のコム デ ギャルソンでは、同じ黒でも趣が異なる。まるで無限の闇へと深く降り立ち、黒そのものに身を委ねながら、尊い美を見出していくような、静謐な探求心を感じさせた。
It’s just the strongest, the best for creation, and the colour that embodies the rebellious spirit. And has the biggest meaning: The Universe and the Black Hole.(それは最も強く、創造に最もふさわしく、反骨精神を体現する色です。そして最大の意味を持っています: 宇宙とブラックホール)──コレクションノートより
異形ドレスの造形美
ショーが始まってすぐに、黒一色の巨大な造形が現れた。肩や腰回りが鳥の翼のように突出したドレスで、細かくギャザーを寄せた薄手のテキスタイルが覆っている。それに続くルックも同様に、バロック調のクラシカルなドレスのフォルムをベースとしながら、うねりやコブといった歪んだ造形を繊細な素材が包み込む。




身体のラインと完全に離れた異形のドレスは、コム デ ギャルソンの近年のコレクションでたびたび登場しているが、全てのルックに洗いをかけてダメージを負わせた先シーズンとは対照的だ。ジョーゼットやレースといったドレス素材をメインとし、幾重にも重ね、折ったり、寄せたり、縛ったり。あらゆる手法によって陰影を生み出し、黒が深みを増していく。まるで布の彫刻のように、繊細さと強さが共存する黒の造形美を印象付けた。



シースルー素材は、衣服の骨組みをあらわにする。テーラードの肩の構造を反復させ、胸と腰の周りを立体的に突出させたドレスに視線が集まった。透けて見える肩パッドや芯地の構造──その美しい仕立てこそが、コム デ ギャルソン社が培ってきた確かな技術の証だ。




光と影、唯一のピンク
テクスチャーの違いで、黒はさまざまな表情を見せる。そして銀糸やスパングルを随所に取り入れることで、モデルが歩くたびに光をわずかに反射する。また黒一色の中に一点の彩りを与えるような、サテンのベルトが繰り返し用いられた。


統一したテーマのコレクションで、唯一の例外となったのが、音楽が途切れたショーの中盤。無音の中、ピンクのドレス6体が登場した。よく見ると、序盤に登場した黒のドレスと同じデザインをピンクに変え、スタイルを呼応させている。対比によって黒を際立たせ、また影の反対側にある光の存在を表し、希望を見出すようなシーンとなった。




そしてショーは再び黒の世界へ戻る。よりボリュームとうねりを増し、レースの重なりや垂れ下がるフリンジが強いインパクトを放つドレスが終盤を飾った。



カチューシャをベースとしたヘッドピースは、ハットデザイナーの日爪ノブキが制作。シューズは、バンクーバーを拠点とする「ジョン・フルーボグ(John Fluevog)」とコラボレーション。厚底ブーツを発表した。


黒という宇宙
2026年秋冬コレクションは、コム デ ギャルソンが半世紀にわたり探求し続けてきたテーマの、ひとつの到達点となったのではないだろうか。だがそれは完結を意味するのではなく、黒は川久保玲にとって無限の可能性を秘め、全てを包み込む宇宙のような概念であることも改めて示された。「Ultimately Black」という究極の問いは、さらなる深淵への扉となるだろう。
ショー終了後のバックステージでは、川久保がエイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe、川久保玲の夫でコム デ ギャルソンCEO)と並び、訪れた人と挨拶を交わしていた。そこにコム デ ギャルソンのバックステージ特有の張り詰めた空気はない。「改めて黒が美しいと感じた」と伝えると、サングラスの奥で穏やかな表情を浮かべた。
最終更新日:
山梨県出身。文化服装学院卒業後、アパレルデザイン会社で企画、生産、デザイナーのアシスタントを経験。出産を経て、育児中にウェブデザインを学びFASHIONSNAPに参加。レコオーランドの社員1人目となる。編集記者、編集長を経て、2018年よりラグジュアリー領域/海外コレクションを統括するファッションディレクターに就任。年間60日以上が出張で海外を飛び回る日々だが、気力と体力には自信あり。
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