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デザイナー マッシモ・オスティ(Massimo Osti)が1978年に設立したファッションブランド「シーピー カンパニー(C.P. COMPANY)」。ミリタリーやワークウェアの機能性に最先端の技術を融合したデザインのほか、縫製後の商品自体を染色する「ガーメントダイイング」と呼ばれる手法が支持を集め、2023年にはブランド創立45周年を迎えた。歴代のアイテムに込められたクリエイションへのこだわりとは一体何か? ブランドのマーケティングディレクター エンリコ・グリゴレッティ(Enrico Grigoletti)に厳選した7点のジャケットを紹介してもらい、ブランドの歴史を紐解いていく。
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日本帝国軍の軍服をモチーフに、「ミッレミリアジャケット」
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1988年に製作された一番最初の通称「ミッレミリアジャケット」。元々レーシングジャケットとして製作されたモデルだが、当時のレースカーにはフロントガラスがなかったため、風やゴミなどから目を守るためにゴーグルが取り付けられたという。時間を競うレース中にもハンドルを握りながら腕時計を確認できるよう、袖にもレンズが搭載されている。
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また、ところどころにミリタリージャケットの要素が散りばめられている。フロントポケットはスイス軍のジャケットから着想を得ていて、マチで大きく広がる仕様に。フードのゴーグルのデザインは、日本帝国軍の軍服をモチーフにしている。
取り外し可能な防護マスクが付属、「メトロポリスジャケット」
1999年当時のデザイナー モレノ・フェラーリ(Moreno Ferrari)が製作した「メトロポリスジャケット」。20世紀末の環境汚染から人々を守ることを目的とした「アーバンプロテクション」というテーマを掲げ、製作されたものだ。ボディにSPW社とアメリカデュポン社が共同開発した高密度ナイロン「ダイナフィル」を採用したほか、汚染された空気を吸い込まないよう、取り外し可能な防護マスクが付属しているのも特徴。
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着古したような風合いを実現、「エクスプローラージャケット」
通称エクスプローラージャケット。外側に「樹脂コーティング」を施したリネン生地をあえてナイロン生地用のプロセスで染めることで、コーティングをグレートーンに染色し、着古したような独特な風合いを実現している。
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1987年にオリジナルが作られており、一番最初に紹介した「ミッレミリアジャケット」よりも先に完成していた。オリジナルの製作当時は生産数が少なかったこともあり売上は芳しくなかったが、2004年に細かなディテールをアップデートして発売したところ大ヒットしたのだとか。
ガーメントダイイングでシワを表現、「KAN D ゴーグルジャケット」
フラットなモノフィラメントナイロン糸をベースに製作したゴーグルジャケット。糸の特性上、元々滑らかで透過性が高い生地だが、ガーメントダイイング(製品染め)を施すことで独特のシワ感が表れるという。
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通常アーカイヴというとヴィンテージのイメージが強いが、このアイテムは2020年のモデル。「アーカイヴなのか?」と疑問に思い聞いてみると、エンリコは「シーピー カンパニーのクリエイションは日進月歩で前に進んでいるので、2・3年前の製品でもブランドの歴史を構成する重要なアーカイヴとして扱っている」と話してくれた。
色の吸収率が異なる素材をレイヤード、「プリズムジャケット」
ナイロンの縦糸と先染めポリエステルの横糸から作られたリップストップ生地にポリウレタン生地をレイヤードし、そのまま染め上げるというアプローチで製作された「プリズムジャケット」。異素材が重なっているため、ガーメントダイを施す時に色の吸収率が異なり、通常の染色では表現できない仕上がりになる。染料などを調整し、見る角度によってネイビーの中に僅かに赤が見えるような発色に設定しているという。
ダウンジャケットとニットを組み合わせて製作、「ハイブリッド ゴーグルジャケット」
ダウンジャケットとニットを組み合わせて製作したゴーグルジャケット。10デニールナイロンのマイクロリップストップ地のボディにプレミアムダウンを詰め、柔らかくしなやかな印象に仕上げた。ボディと袖で色のトーンを切り替えることで、視覚的に変化を与えている。
エンリコは「シーピー カンパニーの歴代のアーカイヴには、このほかにも異素材を組み合わせたアイテムが多く存在している。ガーメントダイイングだけでなく、こういったドッキングの手法も初代デザイナーのマッシモ・オスティから受け継がれたブランドのDNAの一つだ」と語った。
紙の表情が模様に、一点一点仕上がりが異なる「トレイセリージャケット」
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高密度に織られたポリエステルとナイロンマイクロファイバーキャンバスを用いた「MEMRI」と呼ばれる生地を採用し、「トレイセリー」と呼ばれる染色技法を取り入れて製作されたジャケット。インクを染み込ませた紙を生地の上に乗せて上からプレスすることで、紙の表情が模様となって表れるという。紙を畳んだり、シワをつけたりして手作業で染色を行っているため、一点一点仕上がりが異なる。
また、服の形が完成してからガーメントダイイングで染色するため、プレスした際にフロントのポケットの形が背面にも響いて、「ポケット柄」のような模様として浮き出ている。「手間のかかった染色方法によって独特の陰影が生まれ、このアイテムは唯一無二のユニークピースとして評価されている」とエンリコは話す。
こぼれ話:シーピー カンパニーがフットボールフリークの間で人気になったワケ
シーピー カンパニーは、ファンがスタジアム内外でブランドのジャケットを着用するなど、フットボールとの結びつきが強い。2018年には、「アディダス オリジナルス(adidas Originals)」とコラボレーションしてフットボールカルチャーを讃えるカプセルコレクションも発売した。フットボールファンの間でシーピー カンパニーが人気になった意外な理由について、同ブランド代表 ロレンツォ・オスティ(Lorenzo Osti)はこう話す。
シーピー カンパニーとフットボールのカルチャーが結びついたのは、1980年代後半のイギリス。当時、イギリスは経済が停滞していて治安も悪く、若者たちは日曜日のフットボール観戦しか楽しみがなかった時代だった。そんな時、フットボールクラブのマンチェスター・ユナイテッドFCやリヴァプールFCの成績が良くなり、ヨーロッパでのトーナメントに参加するようになったことで、イギリスのフットボールファンがイタリアに観戦に行く機会が増えたのだという。
当時のイタリアは景気が良く、イギリスとは全く様子が違っていた。「パニナリ」というブランド志向のサブカルチャーが流行っていて、イギリスのフットボールファンは衝撃を受け、同時に憧れを抱いたという。しかし、イギリスは不景気だったので当然高価なブランド品は買えない。そこで、ブランド品を万引きし、イギリスに持ち帰るファンが現れた。盗んだ服を帰国後友人に見せたところ好評だったため、イタリアで入手した服をイギリス国内で売って利益を得るフットボールファンが続出。その流れの中で、イギリスに持ち込まれたブランドの一つがシーピー カンパニーだった。
ほかにもフットボールファンによってイタリアから持ち込まれたブランドはあったというが、シーピー カンパニーが特にイギリスで流行したのは、ジャケットのフードにゴーグルがついており、顔を隠すことができるという特徴があったからだった。フードを被って口元をスカーフで覆えば、完全に顔を隠したまま喧嘩ができるという点が、当時の社会状況とマッチして人気に火がつき、他国のフットボールファンにも波及したという。「もちろん私たちが望んだことではないが、ある意味この上なくオーガニックなブランドの広まり方だったと言えるかもしれない」とロレンツォは笑った。
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