ディオール メンズ フォール2020コレクションのフィナーレ
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「キムだから」DIORとショーン・ステューシー、ジョーダンコラボの原点を探る

フィナーレで登場したキム・ジョーンズをスタンディングオベーションで迎える観客 Image by FASHIONSNAP.COM(Koji Hirano)
フィナーレで登場したキム・ジョーンズをスタンディングオベーションで迎える観客
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 「なぜコラボしたのかって?それはキムだから」。ストリートブランドのキング「ステューシー(STUSSY)」を生み出したショーン・ステューシー(Shawn Stussy)が、ショーの熱気が冷めないアフターパーティーの会場でそう答えた。今回世界中の話題をさらった「ディオール(DIOR)」とのビッグコラボ。キム・ジョーンズはこれまでも様々な協業を成功させたヒットメーカーとも呼べる鬼才だが、背景を紐解いていくと"キムだから"成し遂げられた文脈が存在することがわかる。フロリダ州マイアミで、何が発表されたのか。歴史を振り返りながら珠玉のコラボについて掘り下げる。

ショーの前日、マイアミのブティックで行われたサイン会にキム・ジョーンズが姿を見せた。

 アメリカで開催されるディオールのメンズショーは初めて。フォール2020コレクションの発表地となったマイアミは、ビーチ、リゾート、そしてアートの街として知られる。ショーの開催日は、世界中からデザインやアート関係者が集まる「アート・バーゼル マイアミビーチ」の開幕前夜に設定された。

ショー会場はルベルミュージアムの敷地内。キャデラックがずらりと並んだ。

 これまでもキムは、ディオールにおいて数々のアーティストと協業している。デビューショーのカウズ(KAWS)をはじめ、空山基、レイモンド・ペティボン(Raymond Pettibon)、アレックス・フォクストン(Alex Foxton)、そしてダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)。今回はマイアミ開催ということもあり、また新たなアーティストコラボが発表されるのではないかと予想されていた。だが、フタを開けてみたらこれまでとは趣向が異なり、2つのコラボが同時に発表されたのだ。

会場内もグラデーションカラーと"ショーンフォント"のロゴで覆われた。

バックステージのルック表。コレクションは49体。

 

ステューシー創業者とのつながり

 1つ目は、ショーン・ステューシー。1979年ロンドン生まれで名門校のセントラル・セントマーチンズを卒業したキムと、1954年生まれでカリフォルニアで育ったボードシェイパーのショーンとは、時代も場所も接点がない。しかし90年代に、キムがロンドンのセレクトショップ「ハイドアウト(The Hideout)」で働いた経験から紐解けば繋がりが見えてくる。

 ハイドアウトを運営するギミーファイブ(Gimme Five)の創設者マイケル・コッペルマン(Michael Kopelman)は、ステューシーを世に広める役割を担った"International Stussy Tribe"のオリジナルメンバー。ステューシーのアイウェアで"Michael"というモデルが存在するほど濃厚な関係性を築いている人物だ。そのマイケルの元で働いていたキム。これまでに手がけてきた異色の協業の数々も、同じ時代に築いたストリートコミュニティとの関連性が滲む。

 ステューシーの熱心なファンだと話すキムが、今回のコラボを公にする時にショーンを表現した言葉は「RESPECT」。1980年に創設したステューシーからは1996年に引退していたが、一人の開拓者でありアーティストとしてショーンを迎え入れたことが伺える。

ショーの前、ショーン・ステューシー(左)とアクセサリーを手掛けているYOON(右から2番目)、後ろにいるのはダニエル・アーシャム

 今回のショーンコラボで発表されたアイテムのDIORロゴは、全てショーンが再解釈した手書き。ファンには"ショーンフォント"として愛されるグラフィティ調の書体が、シャツやニット、バッグ、シューズなどあらゆるアイテムに施された。「I WANT TO SHOCK the WORLD WITH DIOR(ディオールと共に世界に衝撃を与えたい)」というメッセージや、ディオールのアイコンである"BEE"をスカルでアレンジするなど、情熱と遊び心が同居する。

 日本のストリートにも精通しているキムならではの選択眼は、技術にも取り入れられているようだ。少し日焼けしたカラフルな街並み、まるでマイアミのようなトロピカルな色合いが特徴で、マーブル調のプリントは世界唯一の技術を持つ京都の工房の職人によるものだという。上質な素材や手の込んだ刺繍、シャツの二枚重ねなどスタイリングも特徴的だが、街とストリートに馴染みそうなリアリティを兼ね備える。90年代を知る人は記憶の底をくすぐられ、知らない若者にとっては全く新しいコレクションに感じるだろう。

 

 

クチュールとスポーツの出会い

 そして2つ目のコラボが、 ナイキのバスケットボールレーベル「ジョーダンブランド」。ディオールとのパートナーシップによる「エア ジョーダン 1」が発表されると、瞬く間にスニーカーファンの注目を集めた。異なる世界やアイデアのミックスはキムならではだが、クチュール技術とスポーツ向けの高性能というハイブリッドはある意味究極。デザインでは、1947年のメゾン創設時から用いられている「ディオール グレー」と、「ディオール オブリーク」が施されたスウッシュが象徴的だ。

AIR JORDAN I HIGH OG DIOR

 限定エディション「AIR JORDAN I HIGH OG DIOR」は、2020年4月の発売予定。数量が限られるとのことで争奪戦になることが予想される。なお、ショーのフィナーレでキムが「AIR DIOR」のウィングロゴがプリントされたTシャツを着ていたが、現在のところ販売の予定はないようだ。しかしパートナーシップはしばらく続く可能性もある。

 ちなみに、今回の2つのコラボの仲介役と言われているのがフレイザー・クック(Fraser Cooke)。現在はナイキでコラボプロジェクトを取り仕切っているが、前述したハイドアウトを手がけていたメンバーでもある。

ショーのフィナーレ
アフターパーティーには約2千人のゲストが来場。覆面アーティストのオーヴィル・ペックがライブで盛り上げた。

 90年代カルチャーに詳しいMIMIC / 株式会社ファナティックの野田大介 代表取締役は、運営メディア「MIMIC」の8月の記事で、キムの過去の分析から次のコラボ相手はステューシー関連ではないかと予想していた。実際の発表ではショーン本人だったことに「さすが」と話す野田代表は、キムについて次のようにコメントしている。

「キム・ジョーンズは未だにスニーカーショップや古着屋での目撃情報があり、レアものやブート品の掘り起こしに勤しむなど、ストリートにもずっと身を置いてきた。しかも『今度はそこなのね!分かる!』とか『そこか!あったなー!』みたいな懐かしさだけじゃなく、本来はブートやサンプリングでやっていたようなことを本物のラグジュアリーブランドで実現させ『こんなんヤバいっしょ!?』と言っているよう。すごい規模感でストリートっぽい遊びをしてるようにも感じる。と同時に、ここまで自由に好きなことをやれるようになるまでには大変な苦労があったのだろうな、と。」

 ショーンは協業について「一緒に仕事をすることはとてもイージーな決断だった」とも語っている。その言葉の背景には、ストリートから巨大ラグジュアリーまでキャリアを積んできたキムの歴史と、互いの深いつながりやリスペクトが込められていると感じた。ビッグコラボの背景には複雑に絡み合った様々な由縁が存在する。だが、「キムだから」この一言で納得させられてしまうところが、今回のコラボの醍醐味とも言えるだろう。

【全ルック・ディテールを見る】ディオール メンズ フォール2020コレクション

大規模な屋外パーティーの終盤、カラフルな花火が夜空を染めた。

取材・文:FASHIONSNAP.COM、写真:FASHIONSNAP.COM(Koji Hirano)

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