エディソン・チャン
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Fashionインタビュー・対談

操り人形から世界的ファッションアイコンに、エディソン・チャンが裏原から学んだこと

エディソン・チャン Image by FASHIONSNAP.COM
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 中国だけでなく世界を代表するファッションアイコンとなったエディソン・チャン(Edison Chen)。ストリートブランド「クロット(CLOT)」を手掛けるほか、ストリートファッションの世界3大コンペディションの一つと言われる「インナーセクト(INNERSECT)」のキュレーターを務めるなど様々なプロジェクトに参画しており、その一挙一動にストリートヘッズから熱視線が送られている。俳優として活躍していた同氏は、どのようにしてファッション業界で地位を築いたのか。大好きだという日本の裏原カルチャーや、クロットのブランド哲学などからエディソン・チャンを紐解く。

きっかけは「裏原ブランドを定価で」という想いから

—2000年頃から俳優として活躍していますが、ファッションはもともと好きだったんですか?

 俳優を始める前から、日本の裏原カルチャーが大好きでした。香港で裏原ブランドを定価の3倍で買ったり、日本でも「ネイバーフッド(NEIGHBORHOOD)」のTシャツを買うために3時間並んだりしていました。グーグルマップもない時代だったので、雑誌の地図を見て店の場所を必死に探していましたね(笑)。

—当時からファッションの仕事をしたいという思いがあった?

 いいえ。実は、俳優をしていたときに急に事務所との契約を切られたことがあったんです。本当に急だったので、活動はしているものの給料は1円も貰えないという状況で。肉屋で売られている肉の塊のような気分で、人身売買をされたような感覚でした。今後の人生を不安に思っていたんですが、そんなときに東京へ遊びに行ったら遠藤さん(デビロック ディレクター 遠藤憲昭)が、滝沢さん(ネイバーフッド デザイナー 滝沢伸介)やNIGO®さんなど色々な人を紹介してくださって。そういった方達と話す中で、事務所の操り人形として使われるんじゃなくて、自分の意思で活動できたらなと思ったんです。ファッションに関わることで、自分が自由でいられると気付かされたというか。

—ファッションの世界で自分を表現していくために、具体的に何から始めたんですか?

 当初はブランドを作るつもりはなく、香港で裏原ブランドのアイテムを適正な価格で買える場所を作りたいと思い、ジュース(JUICE)というセレクトショップをオープンしました。そこで周年の記念Tシャツを作ったら、「もっと欲しい」という声を沢山頂いてオリジナルのアイテムを増やしたんです。関わりがあったネイバーフッドだったり「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)」とのコラボTシャツも作ったりして、その流れから「クロット」の立ち上げに至りました。

—今では、「ナイキ(NIKE)」や「サカイ(sacai)」「リーバイス®(Levi's®)」「ステューシー(STÜSSY)」といった名だたるブランドとコラボするなどブランドも成長し、中国や日本だけでなく世界的な人気ブランドとなりました。ここまで人気になった理由は何だと思いますか?

 信念を持ってブランドを続けていることかな。東洋と西洋の文化をうまくミックスさせて、クロットにしかできないことをやってこれたと思っています。信念があるからこそ、どんな商品を出してもクロットのアイテムだとわかってもらえる。例えば、私が履いているナイキとコラボしたエア フォース 1にはクロットで初めてオリジナル制作した柄を使っているんですが、東洋と西洋のコンビネーションを意識したこともあって、多くの人に支持して頂いています。

—クロットと言えばこの柄のイメージですね。

 「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)」のカモ柄のようなイメージで作りました。中国らしい柄をシルクに落とし込んでいます。実は作ってから6年くらいは全く浸透しなくて、歯がゆい思いをしていました。でも信じて続けてきたからこそ、今ではクロットのアイコンになっていますし、この柄しか知らないんじゃないかという人も増えてきています。

—火が付いた理由は?

 「ビズビム(visvim)」のクリスト(CHRISTO)とのコラボがきっかけです。コラボサンダルで多くの人に興味を持ってもらって、そこから「フットウェアだけじゃなくて服も作っているんだ」と同じ柄のジャケットなどへ広がっていきました。エア フォース 1を発売したときに更に加熱して世界へ広がった感じです。

 

「誰かの指示ではなく、自分の意思で」クリエイションの根源は?

—俳優の活動はクリエイションに影響していますか?

 俳優業がメインのときは、自分が主体となって何かを創り上げるということをしたことはなかったんです。ただ、自分のカバーのアルバムをリリースしたときに、初めて誰かに指示されるのではなく、どういう気持ちで歌いたいかを自分で考えて。アルバムのジャケットでどういう格好をするか、コンサートの会場でどういう演出をするかなど主体的に決めていくうちに僕自身のクリエイションというものを意識し始めました。そのため、音楽から全てのクリエイションが始まったと言っても過言ではありません。

—ルーツにある音楽のジャンルは?

 もともとはポップス歌手だったんですが、それは操り人形のときで(笑)。ルーツはヒップホップなので、お店を出した後に、レコード会社を作って、ヒップホップだったりラップだったり自分の好きな音楽を作っていました。今は、ジャズやブルースを聞くことが多いので、あまりヒップホップは聞いていないんですけどね。

—ヒップホップでいうとエイサップ・モブ(A$AP Mob)のエイサップ バリ(A$AP Bari)を中心に活動している「ヴィーロン(VLONE)」にも参加していますね。

 はい、私はヴィーロンファミリーのメンバーです。今年、リニューアルしてもっと格好良くなって帰ってくるので楽しみにしていてください。

—他にも若手の支援活動などもしていますが、注目しているデザイナーやブランドはありますか?

 3月〜5月に「サイコワールド(PSYCHWORLD)」「ルード(RHUDE)」「セブンスヘブン(SEVENTH HEAVEN)」のアメリカ若手3ブランドとコラボアイテムを発売するんですが、この3ブランドは注目しています。あとは、今年の末にたくさんの中国人デザイナーたちとのコラボアイテムを発表する予定です。きっと面白いものになると思いますよ。

—世界中で新型コロナウイルスの問題が深刻化していますが、中国のクリエイターやファッション業界では実際どのような影響がありましたか?

 クロットは店舗をクローズしていますし、オンラインストアでも発送が遅れています。工場も止まっていて次のシーズンのサンプルも作れないので、国外の工場にお願いしている状況です。私たちは他の方法を見つけられましたが、このままだと継続できなくなるブランドも出てくるでしょうし、ファッションだけでなくレストランなど他の分野のビジネスも続かなくなってしまうと思います。

 

「若いクリエイターたちの時代に」これからファッションとどう関わっていくのか

—クロットは2019年1月の2019年春夏シーズンから日本での展開を始めました。なぜこのタイミングだったんでしょうか?

 2017年から卸を始めるために、パリでショールームを開きました。そこから徐々に取り扱ってもらえる店舗が増えて、2019年春夏シーズンに日本の店舗が決まったという流れです。私は日本が大好きで、16歳頃から今までで、500回以上は日本に来たと思います。嫌いなところを見つけるほうが大変なくらい好きなので日本で展開できることは凄く光栄なことです。

—やはり裏原の存在が大きい?

 そうですね。小さい頃からマイケル・ジョーダン(Michel Jordan)が大好きなんですが、同じくらい裏原カルチャーには影響を受けています。初めて日本に来たときは裏原について知らなかったんですが、当時の彼女と一緒に原宿を歩いていると、急に彼女が興奮し始めて。どうしたのか聞くと、「藤原ヒロシさんがいる」と言うんです。そのときは彼のことを知らなかったので、なんでこんなにテンションが上がっているのかわからず、嫉妬してちょっと怒ったこともあって。でも、帰って雑誌を見たりして調べていくうちにどんどん魅了されていき、5年後くらいに原宿で藤原ヒロシさんを見かけたときは僕が彼女と同じような反応をしていました(笑)。

—藤原ヒロシさんのどういった点に惹かれていったんですか?

 たくさん良いものを知っていて、色々なクリエイターを引き合わせて一緒にする方法。知り合ってもう15年くらいになりますが、彼はクリエイションだけではなく、キュレーションを教えてくれた人です。

—「フラグメント(fragment design)」とナイキとのトリプルコラボも記憶に新しいですが、ナイキとのコラボは今後も続いていくんですか?

 はい。今度、ナイキとベアブリック(BE@RBRICK)とのトリプルコラボを発表しますよ。まだ明かせませんが、その他にもいっぱい控えています。

—今後、クロットをどういうブランドにしていきたいですか?

 アメリカやカナダ、大阪、京都だったりもっとお店を増やして、世界で一番需要のあるブランドにしていきたいです。「シュプリーム(Supreme)」の時価総額は約10億ドル(約1,080億円)くらいと言われていますが、クロットは倍の20億ドル(約2,160億円)くらいのブランドにしたいです。

—では、ご自身は今後どのようにファッション業界に関わっていきたいですか?

 実はリタイアしたいと思っていて(笑)。ファッション業界で16年近く働いていますが、最近は若いクリエイターから多くの影響を受けるようになってきました。影響を受けているということは、もう彼らの時代になったのではないかと思うんです。そのため今は、自分が持っている人脈だったりを活かして彼らにチャンスを与えてあげることができるのではないかと考えています。例えばパリコレ出展やお店の出店を支援して、成長を見守っていければなと。今年だとさっき言った3月〜5月と年末に予定している若手ブランドとのコラボがその一つです。今後もそういった活動は増えていくと思うので、楽しみにしていてください。

■エディソン・チャン(Edison Chen)
1980年代生まれ。バンクーバー出身のアーティスト、俳優、歌手。香港を中心に店舗を構えるセレクトショップ「ジュース」を立ち上げ、その後ケビン・プーン(Kevin Poon)とブランド「クロット」を設立。そのほかにも音楽レーベル「CLOT MEFIA DIVISION」やアートプロジェクト「3125C」、インナーセクトなど様々なプロジェクトに携わっている。現在、インスタグラムで約280万人、weibo(微博)で約2,900万人のフォロワーを持つ。

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