エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)が展開するカナダ発のスキンケアブランド「オーディナリー(The Ordinary)」が、昨年5月に日本上陸してから、1年が経った。成分重視かつ手に取りやすい価格を追求したブランドの日本展開は、“成分トレンド”の流行ともマッチし、幅広い層から注目を集めた。この1年でラインナップを拡充し、常設カウンターを設けるなど順調な滑り出しを見せているが、“海外ブランド”故の課題も残る。改めてブランドが持つ哲学と、日本市場の振り返り、今後について、ELCジャパンのオーディナリー担当に聞いた。
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──日本でのローンチ時、初めはアットコスメ限定での販売でした。
アットコスメは日本のコスメ消費者の方々にとって非常に重要なリテーラーであり、口コミサイトも含めて、お客さまと多様な接点を持っている。オンラインで3ヶ月、オフラインで半年間、まずは独占的に展開をしていただきました。その後、オフラインの体験の場をアットコスメ以外にも広げ、東京、大阪、京都でポップアップを実施し、直接ブランドのフィロソフィーを伝えることにも注力していきました。秋頃から、楽天市場やAmazonなどのオンラインチャネルにも拡大しています。特にAmazonは新規の流入が多く、利便性など総合的に相性が良く、私たちのユーザーの広がりにとても貢献しています。
──人気の商品について教えてください。
グローバルとも共通なのですが、年間を通してナイアシンアミド配合の美容液「N10+Z1フェイスセラム」(30mL、1100円、60mL 1980円)が圧倒的に人気です。ブランドとして一番最初に開発した商品なのですが、2016年当時、ナイアシンアミドを配合した商品は多かったものの、主役としてナイアシンアミドに特化した美容液はなかったんです。多くの方が毛穴に悩んでいることにも注目し、成分濃度や組み合わせを研究していきました。ちなみに、お客さまから「なぜナイアシンアミドは10%なんですか」と聞かれることがありますが、私たちの研究から、10%の濃度が肌に届き、毛穴にもアプローチしてくれる最適解として導き出しました。加えて、過剰な皮脂を抑制し、ナイアシンアミドをサポートするような亜鉛を組み合わせていることも魅力です。そのほかは季節によって変動しますが、最近では乳酸とヒアルロン酸を組み合わせた美容液「LA10+HAフェイスセラム」(30mL 1870円)やグラナクティブレチノイド配合の「GR2エマルジョン」(30mL 2420円)が上位に上がっています。



N10+Z1フェイスセラム
──日本だけでなく韓国コスメの台頭で、成分トレンドは競争が激しくなっています。その中で、オーディナリーの強みとはなんでしょうか。
私たちは、トレンドフォロワーではありません。トレンドに流されず肌悩みに最適な処方を追求し、100人以上の科学者が在籍するカナダの自社ラボと工場で開発から品質テストまで一貫して行うことで、高純度の成分を効果的に配合した製品を適正価格で提供しています。成分と濃度をパッケージに明記し、簡素なデザインと最小限の広告でコストを抑えることで、誰もが手に取りやすい高品質スキンケアを実現しています。
──外資ブランドの日本展開では、ローカライズやコミュニケーション面で苦戦すると聞きます。オーディナリーではどうでしょうか。
ローンチ当初は、スキンケア成分やその背景技術に関心が高い“スキンテレクチュアル層”(肌に対してインテリジェントな消費者)をコアターゲットとし、商品の組み合わせを楽しんでいただけるような提案をしていました。一方で、組み合わせ方や自分に合うものを選ぶことに難しさを感じてしまい、トライアルのハードルが高くなってしまうという反省点がありました。そこで現在は、美容マニアに限らず、肌悩みを持つ美容関心層にターゲットを広げ、ヒーロー商品である「N10+Z1フェイスセラム」を中心に、主要な肌悩み別の人気商品を明確にし、手に取りやすさを意識したコミュニケーションにアップデートしています。
──コミュニケーション面について、現在日本向けのSNSアカウントはLINEのみですが、発信で工夫していることはありますか?
LINEには商品のカウセリング機能として「Find My Serum」を導入しています。肌悩みやスキンケア習慣などいくつかの質問に答えていただくことで、おすすめの商品をレコメンドするものです。あまり複雑にならないように、一番気になる肌悩みにアプローチする商品と、組み合わせに最適なものをピックアップしています。また、プロダクトガイドでも肌悩み別の紹介にすることで、お客さまにシンプルにわかりやすく商品を提案できるよう設計しました。

公式LINEアカウント

「Find My Serum」のイメージ
──一方で、昨今の化粧品市場ではSNSマーケティングは定石です。今後日本語アカウントを開設する展望はいかがですか?
日本向けのアカウントの開設について、すぐにお答えできることはないのですが、私たちの強みとしてクリエイター(KOLやインフルエンサー、動画制作者など)の方々との関係構築があります。本国から通ずる仕組みなのですが、クリエイターの方々がご自身の言葉で発信してくださることを大切にしているんです。一方的に煌びやかな催しに招いてパッケージ化された情報を発信していただくのではく、ワークショップのようにインタラクティブなコミュニケーションが図れる企画に参加いただき、ご自身の言葉で語っていただくことが重要だと思っています。私たちのブランドはミニマルに見えて、研究や成分、価格、ヴィーガン、ダイバーシティへの取り組みなど、さまざまな切り口があります。すべてを一気に理解いただくのではなく、ご参加いただいた方が、それぞれ重要視するポイントを独自に語っていただくことで、私たちだけでは出会うことができない潜在顧客に巡り合うことができると考えています。
──では初年度を経て、2年目の方針について教えてください。
まず、ブランドの認知拡大は継続していくところになります。“スキンケアの民主化”を掲げているブランドなので、より多くの方に支持され、共感を得られるブランドになるために、既存に倣わない方法で活動していきたいと考えています。次に、ヒーロー製品の中でもN10+Z1フェイスセラムの育成に力を入れます。そして三つ目が、クリエイターコミュニティの拡大です。ブランドのフィロソフィーに共感していただけるクリエイターの方々を巻き込んでいきたいと思っていて、美容に限らずに、そうした方々との関係構築を進めていきます。例えば、一度こちらからお声がけした方の周りにブランドに共感していただけそうな方がいたら、次回誘ってきてもらうなど、地道だからこそできる濃いリレーションに期待しています。
──実店舗やポップアップなど、オフラインでの取り組みはいかがですか?
ブランド認知を上げるためのイベントを計画中です。単純に新商品を発売する場ではなく、よりブランドのDNAを体現する場として機能させたいと考えています。アメリカでは、ニューヨークで卵の価格が高騰した際に「The Ordinary Egg」と題して、直営店で卵を販売したんです。これは、“高品質なものを誰もが手に取れるように”というブランドメッセージに紐づくアクションとして話題になりました。ほかにも、ユニークな切り口のポップアップがあり、日本でも、私たちのブランドメッセージを面白く、興味を持っていただけるような方法でチャレンジしたいと考えています。
──では最後に、今後の目標について教えてください。
まだまだブランド認知を拡大する余地があると考えています。ブランドの理念を体現するようなポップアップの開催や販路の拡大、そして好調なAmazonやアットコスメでのビジネスをさらにスケールさせていくことが目標です。一般的な化粧品マーケティングの視点では、SNSなど制約があるように思うかもしれませんが、だからこそクリエイターとの関係構築で、ブランドの個性を際立たせてお伝えすることができます。今後もさまざまな商品展開を控えていて、アンビシャスな目標を掲げて成長につなげていきます。
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