坂井佳奈子氏
Image by: FASHIONSNAP.COM

Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】出版社の次のカタチとは?編集長坂井佳奈子に聞く、ELLEのコンテンツ作りとデジタル戦略

坂井佳奈子氏
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 世界45の国と地域で刊行されている女性誌「エル(ELLE)」。そのデジタルコンテンツ「エル・オンライン(ELLE ONLINE)」が好調だ。「エル・ガール(ELLE girl)」などELLEの冠が付くプラットフォームの累計月間PV数は約4,800万と、ファッションの媒体としては国内トップクラスのユーザーを保有している。そんな「エル」事業を率いるのは、エル コンテンツ部/デジタル コンテンツ部 編集長の坂井佳奈子氏。約20年間エルに携わっている同氏に、出版不況の中でも成長し続けているエルのコンテンツ作り、それを支えるハースト婦人画報社の取り組みについて聞いた。

■エル コンテンツ部編集長の仕事とは?

ーエル・ジャポン、エル・ガール、エル・オンラインの3媒体を統括するエル コンテンツ部編集長に就任したのは、約3年前の2015年でした。最初に着手したことは?

 まずは3つの編集部をまとめるところからスタートしました。もともと3媒体はバラバラで、エル・ジャポンとエル・オンラインに関してはオフィスのフロアも違っていたくらい。そのためエル事業の中で連携を意識して、コンテンツ強化を進めてきました。会社としても強いブランド力を持っているそれぞれのメディアを連携させることで新たな付加価値と可能性を創出することを目指しています。これによって単独のメディアでは達成することが難しい、質と規模を兼ね備えた取り組みが可能になります。例えば、メディアの垣根を超えた共同企画やコンテンツの連動、合同イベントなどが増えています。

「エル・ガール」

ーそれぞれ特色があるメディアの連携は難しそうです。

 そうですね。元々プリント出身なので、同じメディアといってもデジタルと紙が全く違う仕事だと理解するまでに少し時間がかかりました。まず配信ペースが違う。そしてデジタルはスピードと時事ネタなどリアルを追い求めることが多いですが、雑誌は深さと個性。同じ素材でも編集法が違いますから。エディター各々がどの媒体が適正か見極め、3年かけて専門性を高めてきました。

ー改革の参考にした事例はありますか?

 新体制に変わったのが2015年4月でしたが、その2ヶ月後の6月に世界中のエルの発刊人たちが集まる国際会議がありました。事前に「ワン エル」の体制をスタートさせた英国などの事例は参考になりましたね。グローバル展開している会社だからこそできる強みだと思います。

ー編集長としての仕事は?

 全体的な舵取りは私ですが、主に見ているのはプリント(雑誌)になります。エル・オンラインの方はタイアップやSNSチームもありますが、大きくはファッション/ビューティー/カルチャーの3つのデスクを設けてそれぞれに副編集長を立てているので、その下でエディターたちが動いている形です。カテゴリーごとにKPIが設定されていますし、数字が伸び悩んだ時にどうやって成長させるのか、といったアドバイスをすることも主な業務です。

ー編集部の人数は?

 エル全体でウェブプロデューサーを含め約30人になります。エル・オンラインが13人で、最も多いですね。

ー雑誌からデジタルに異動するケースも多いのでしょうか。

 年齢が若いと最初からデジタルに配属されることも多いですが、35歳以上の人がプリントからデジタルにスライドするケースも増えています。ちなみに今のデジタルのデスクは全員がプリント出身です。

■デジタル事業が好調の要因は?

ーエル・オンライン、エル・ガールではどれくらいのペースで記事を配信していますか?

 エル・オンラインが月で250本〜300本。エル・ガールが月200本〜300本です。

ー月間のPVとUU数は?

 エル・ショップを除いたプラットフォームだと月間PVが約4,800万、UUが約460万です。

ーデジタルコンテンツのKPIについて教えてください。

 UUは意識していて、他媒体に比べても高い水準を維持し続けられていると思います。ただ、数字は大事ですがそれだけではなく、定量化が難しい記事の質やエルらしさといった部分はしっかりとキープしていかなければと考えています。

ーエルのデジタル事業が成長した要因は何だと考えますか?

 エル・オンラインについては、インターネットエクスプローラーが公開された翌年の1996年に立ち上がっていて、今年で22年目なんです。スタートが早かったという先行者優位の部分は大きくて、これも新しいことにどんどんチャレンジしようというエルの哲学があってこそだと思っています。

「エル・オンライン」

ーデジタルで人気のコンテンツは?

 シーズンにもよりますが、ファッションとカルチャー系は人気があります。ファッションではEコマースチームから週に1回、検索ワードでどのようなアイテムが見られたかというデータをもらい、それらを参考にページを制作したり。トレンドのキーワードについても、プリントチームとオンラインチームで情報を共有して、記事に反映するようにしています。

ーデータを活用しているんですね。

 でも歴史のあるメディアなので、日々のデータだけではなく経験を積んだエディターの知見も強みです。映画やセレブのゴシップも扱いますが、それらは海外のネットワークを活用します。それから、事前に社内の各メディアにストレートニュースを配信するハブとも言えるニュースデスクと情報を共有して効率を計ったり。エルだけでない連携によってコンテンツを作り上げていますね。

ー例えば「ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)」とエルで同じ記事が制作されることもありますか?

 はい。でも見出しや切り口、タイミングはそれぞれ変わってきます。

ーデジタルメディアでは純広告と記事広告どちらが多いですか?

 今は記事広告のほうが多いですね。

ー雑誌とデジタルの売上比率は?

 プリントが若干多いですが、エル・ショップは前年比16%増と好調で、それを入れるとデジタルの方が売上が高くなります。

ーエル・ショップとはどのような形で連携しているのでしょうか。

 月に1度、Eコマースチーム、営業、プロモーション部各部署の情報を共有する会議を開いています。エル・ショップのコンセプトは、エディターがプロデュースするECサイト。エディターが買ったものを記事にしてエル・ショップに掲載したり、シナジーを創出しています。トークショーなどのイベントや、昨年からはチャリティも。エルらしい社会貢献をということで、EXILE、EXILE THE SECONDの黒木啓司さんとタッグを組んでECで販売したグッズの売上を寄付しました。

「エル・ショップ」

ーエル・ショップで取り扱うブランドについて、編集部側からオーダーすることもありますか?

 時々あります。コレクションや展示会でエル・ショップに合っていると思ったブランドを、エディターからエル・ショップの担当に伝えたり。

次のページは>>エル事業の中核を担っているのはエディター、ハーストが示すメディアの未来

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