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【最終回】植物療法士の第一人者・森田敦子先生にインタビュー 「フェムテックはブームで終わらせてはいけない」

【最終回】植物療法士の第一人者・森田敦子先生にインタビュー 「フェムテックはブームで終わらせてはいけない」

 ここ数年で大きな注目を集めている「フェムテック」。フェムテックとして思い浮かぶ吸水ショーツは、小さいブランドから大手企業まで参入し、新たな市場が構築されています。でもそもそもフェムテックって他にどんなアイテムがあるのだろう? もしかしてアイテムだけのことを言うのではなさそう…と疑問が…。そこでスタートしたフェムテックの初歩から学ぶ同連載は、これまで「そもそもフェムテックって?」から始まり、吸水ショーツの種類やPMSや生理の悩み、さらには男性の更年期の悩みにまで耳を傾けてきましたが、今回で最終回です。

 最後は、この連載の先生を務めてくれた山本佳奈さんらが所属する「ウームラボ(WOMB LABO)」のメインキュレーターであり、植物療法士でフェムケアの第一人者の森田敦子先生に、改めてフェムテックについてインタビュー。森田先生に、植物療法と出合ったきっかけやフランスで学んだこと、そして「ブームで終わらせてはいけない」という、フェムテックのこの先についても聞きました。

■森田敦子
日本における植物療法の第一人者。サンルイ・インターナッショナル/Waphyto 代表。
客室乗務員時代にダストアレルギー気管支喘息を発病したことがきっかけで、植物療法(フィトテラピー)に出合い渡仏。フランス国立パリ13大学で植物薬理学を本格的に学び、帰国後は、植物療法に基づいた商品とサービスをする会社を設立。自身がプロデュースする女性のためのデリケートゾーン&パーツケアブランド「アンティーム オーガニック」の商品開発や、フランス フィトテラピー普及医学協会のアジアで唯一の認定校「ルボア フィトテラピースクール」を主宰。2020年、トータルライフケアブランド「ワフィト(Waphyto)」を立ち上げる。2022年、日本女性財団理事に就任。
■ウームラボ(WOMB LABO)
センシュアリティケアをサポートするフェムテック・フェムケアメディアと、セレクトオンラインショップ、ウームラボ オンラインストア、体験型ショールームの「WOMB LABO Daikanyama」を展開する。自分自身の身体を知り、向き合うための知識や情報の発信を通じて、「うるおうからだ」づくりをサポートする。店舗では、女性の健康課題に寄り添う吸水ショーツや月経カップ、腟トレグッズ等のフェムケアアイテム、約60ブランド200SKUを取り揃える。公式サイト

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植物療法との出合い

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Fスナ

日本で植物療法の第一人者として発信されている森田先生ですが、もともとは普通に会社員でそれで体を壊してしまったとか?

そうなんですよね。大学卒業後に大手航空会社で勤務していた頃に、自己免疫疾患、いわゆる難病にかかってしまって...。呼吸することさえ辛くて、筋肉が勝手に締まるような感覚が発生する病気で、8ヶ月ほど入院したんです。気管支拡張剤やステロイドがないと生活がままならないような状況で、カツラを被らなければならなかったですし、お医者さんには子どもは諦めて欲しいと言われていた状況でした。そんなこともあって自分の体と心が壊れてしまったんです。

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森田先生

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Fスナ

それは辛い状況でしたね...。ハードな日々を送ったことが原因なのでしょうか?

そうですね。ちょうど男女雇用均等法ができて、女性がやっと働けるという時代だったので、どんなに体調が悪くても休めない空気感で、ましてや「ストレス」や「生理痛」という言葉は口に出せませんでした。

そんな時に体を壊してしまって、どん底にいるような思いを味わいました。

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森田先生

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Fスナ

そんな時に、植物療法に出合われた?

処方薬が手放せない生活を続けていた時、フランスの友人がきっかけでパリ13大学の存在を知りました。大学時代に中国語を学んだ関係で漢方については少し知識があったのですが、もっと科学的にハーブを学べるところがないかと思っていたんです。パリ13大学には医薬学部に植物療法学科があるというので、そこに行ってみようと。

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森田先生

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Fスナ

この在学中に、森田先生の“師匠”であるベランジェール=アルナール医学博士に出会ったんですよね?

アルナール博士は産婦人科医・性科学の権威で、博士からはたくさんのことを学びましたが、植物療法の知識以上に私の人生に大きく影響を与えてくれた人ですね。

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森田先生

女性2人
女性2人
女性2人
女性2人

(左から)森田敦子先生、ベランジェール=アルナール医学博士

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Fスナ

アルナール博士から学んだ最も印象的なことはなんでしょうか?

1番の学びは、「自分が自分を1番大切にすること」です。「周りの空気を読んだり、自分の気持ちを押し殺したりしてまで仕事をして体を壊すなんてあってはいけないことだよ」と。

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森田先生

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Fスナ

日本人は特に周りの空気を読んで行動することが求められるので、「自分を1番に考える」って実践しようとしても難しいですよね。

昔は私も苦手だったんですよ。日本人は、内から湧き上がってくる自分の感情に蓋をして「自分よりまず相手」と考えてしまう人が特に多い気がします。

いきなりですが、性生活でもそうなんじゃないでしょうか。そういった感覚が、セックス中に演技をしてしまう女性が多いことや、セックスレスにつながっているのではないかと思っているんです。

でも、自分の気持ちに正直に、自分が幸せだと思うことにフォーカスして生きていれば、仕事も自然と頑張れたりするし、互いをリスペクトしながらありのままの自分を見せられる関係が構築できる。私自身、博士に教えてもらった考え方をするようになってから、周りに嫌なことを言われても必要以上に抱え込まないし、不要なストレスを感じにくくなりました。

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森田先生

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Fスナ

では、植物療法を学んだことで得られたことは?

体のメカニズムを基礎から学ぶことができました。植物学ってナチュラルな栄養を取り入れるというより、医学に近いものなんです。人間は食欲、睡眠欲、性欲の3大欲求のバランスがとても大切。フランスで学んだ植物学には性科学と女性医学が含まれていて、そういうものがバランスを取るために重要なものだと学術的に学ぶことができました。

学びを深めるうちに、デリケートゾーンケアを含めフェミニンケアを取り入れないと植物療法が成立しないということを知りました。何を食べているか、眠っている間に食べたものが体内でちゃんと働いているか。そしてデリケートゾーンのケアや自分の性欲に向き合う。体内ではさまざまなことが複雑に絡み合って体を構成している。今の自分に何が必要か分からないことには、どの植物の力を取り入れるか分からないためです。これには強く衝撃を受けました。

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森田先生

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Fスナ

ご自身に植物療法を取り入れたことで体調に変化はありましたか?

当時の私は8年間生理が止まるくらい体調が良くなかったので、女性ホルモン様作用のあるチェストベリーやメリッサを2年ほど摂っていたら生理もだんだんと来るようになって。また成長ホルモンの数値も低かったので、先生に言われるがままにオメガ3や月見草油を摂っていたところ、42才で自然妊娠することができたんです。加えて、自分を大事にすることを徹底した結果、体調が回復していきましたね。

でも、アルナール先生は「自分を1番に大切にしてちょっと嫌だなと思うところから離れる。それを続けながら必要なハーブや運動を取り入れれば体を壊すことはないので、体調が良ければ植物療法なんて要らないのよ」と言っていたのは印象深い言葉です。

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森田先生

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Fスナ

改めて植物療法の魅力は?

まずお伝えしたいのは、しっかりとエビデンスがあるということ。植物って、自分の中に病気ができると、光合成の仕方を変えて、自分で抗体となるような“薬”を作るんです。この植物が自ら作る“薬”が、機能性成分としてハーブで使われています。人間の体のおおよそは、植物や穀物、果物や野菜から栄養をもらっていますから、植物の機能性成分は親和性が高いんです。そして、一人ひとり体質が異なりますから、体質に合う植物を取り入れることが大事。

また、三大欲求の一つである性欲ともきちんと向き合う。フランスではいやらしい話ではなく、れっきとした学問。植物学とも密接に関わっていて、日常でオーガズムを得られていることと健康はつながっているんです。そうしたことを地続きなものとして考えられるのが植物療法の魅力だと思っています。

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森田先生

帰国後から取り組んでいること

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Fスナ

フランスから帰国後は何から始めたんですか?

フェミニンケアと植物療法は互換性があることを伝えることです。でも当時はフェミニンケアや膣の話をしたら、「セクシャルなものを大々的に発信するなんてはしたない」とものすごく批判を浴びました。10数年前に「アンティーム オーガニック(INTIME ORGANIQUE)」というデリケートゾーンケアのブランドを発売した時は、非買運動が起こったほどです。

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森田先生

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Fスナ

そういった経験を経て「ワフィト(Waphyto)」のローンチにつながったのだと思いますが、立ち上げのきっかけはなんだったのでしょうか?

フェミニンケアや植物療法の訴求に力を注ぐのと同時に、帰国時から日本の土壌調査を続けています。実は母が土壌学の学者なんです。日本は小さい国土の中にいろいろな断層が重なり合っている特殊な土壌なんですよね。そこで育ったスギナやヨモギ、ドクダミなどのハーブには魅力的な効果効能があるのではないかと考え、数百種類をリサーチしました。そしてある程度のデータが集まったら和のハーブ“和のフィト”の魅力を国内外に発信したいと思っていたんです。ハーブというものは、何となく良いとされるおばあちゃんの知恵でなく、サイエンティフィックなものだということを日本人はもちろん、世界の人にも知って欲しいんです。こういったことから2021年に「ワフィト」という造語を冠したブランドをローンチしました。ブランドを通じて日本の植物の素晴らしさを伝えていきたいです。ちなみにハーブの分析は今でも続けていて、現在は愛知県・渥美半島のビーツを調べています。

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森田先生

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Fスナ

ワフィトのローンチや時代の流れとともに、植物療法やフェミニンケアへの世間の理解が深まってきたと思います。特に困難だったことはありますか?

私がフランスから帰ってきて、活動を始めた26年前はエッセンシャルオイルも流通しておらず、ハーブが何に効くのか未知の状態。ハーブに対する印象を変えていくのは非常に大変でした。フェミニンケアを訴求したときなんて、生きた心地がしないくらい、絶望させられるような言葉を浴びました。

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森田先生

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Fスナ

世間の考え方を変えるために心がけたことは?

私自身もフランスで大きな衝撃を受けたので、受け入れられない気持ちも理解できました。だからこそ、ハーブやフェミニンケアの重要性をとにかく根気強くていねいに説明し、魅力を理解してもらえるよう努めました。

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森田先生

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Fスナ

現在は少しずつ、フェムケアや身体のことを知ろうという動きが広まってきていますよね。長年発信してきた森田先生から見て、現状をどう捉えていますか?

現在、皆さんの理解はとても深まってきていて、それは喜ばしいことです。ただ、近年のフェムテック市場の拡大には少し危惧する部分もあります。というのも、フェムテック・フェムケアとは、一過性のブームで終わらせてはいけないからです。

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森田先生

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Fスナ

確かに、最近ではビジネスとしてフェムテックに参入するような動きも目立ちます。

市場の拡大によってより多くの人が興味を持つきっかけとなることは良いことなんですけどね。

女性が婦人科検診に行っているか、セックスレスとはどういうことか、膣が健やかに保たれているかなどは、トレンドのように「今だけ」ということはなくて、自分の身体のこととして気にかけるべきことですから。

啓蒙を続けることで、親子や夫婦、カップルでも性のことをしっかりと話し合える環境や文化を築くことがこれからは重要だと思います。

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森田先生

今後の展望

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Fスナ

長年、植物療法やフェミニンケアの発信に力を入れてきた森田先生の今後の目標は何でしょうか?

フェミニンケアの魅力やその大切さを引き続き伝えていきながら、フェミニンケアは高齢になった時も助けになるということを伝える新しい事業を立ち上げたいです。その第一歩として、今年は植物療法を取り入れた訪問看護ステーションを国内3ヶ所に立ち上げます。看護師だけでなく、植物療法を学んだ人も採用し、小さい子どもや高齢者をケアするための施設にする予定です。子育て世代と言われる30〜40代は、自分の体調管理に加えて、子どもや旦那さんの面倒を見て、さらに親の介護が重なることもあって、とんでもなく負担が大きいですよね。そういう人たちが安心して暮らせるような日本社会にしていきたいんです。

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森田先生

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Fスナ

日本では特に家族のケアが母親に集中してしまいますよね。忙しいと、森田先生のお話に出てきた「まずは自分を大切にする」もどうしても二の次になってしまいますし。

いくら身近で大切な人の世話だと言っても、時々どうしても優しくなれない部分も出てくるでしょう?その問題にちゃんと目を向けて、お互いに尊重しあってケアできる環境のサポートをしたいと思ったんです。それから、性科学は女性のためだけにあるものではないということも、これから一層伝えていきたいと思っています。

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森田先生

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Fスナ

それは、どういったことを啓蒙していくのでしょうか。

今はフェムテックやフェムケアという言葉との結びつきで、性科学が女性の身体についてのことというイメージを持っている人も少なくないと感じます。

でも、男性の身体だってEDや更年期など、不調になる時だってありますよね。そういう時、植物療法は男性の悩みにも寄り添うことができます。いろいろな講演やポップアップなどで、最近よくセックスレスについて相談されるんです。その背景には、パートナーに性科学的な悩みを打ち明けられないことがあると思っていて。男女どちらもそういった話題に対して偏見を持たず、より良い関係のために日頃からコミュニケーションを積み重ねていれば、セックスレスは解消できるのではないかと。

だからこそ、男性が悩みやケアについてオープンマインドになれるよう、まずはきちんとした情報を伝え広める必要があると感じています。フランスで学んだことも含めて講演やセミナーを行うなど発信に注力したいですし、新製品の開発にも男性のケアの視点を取り入れていきたいです。

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森田先生

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Fスナ

貴重なお話をいただき、本当にありがとうございました。フェムテックはブームとなった第1フェーズから、ある程度の広がりを経て今、第2フェーズに入っているのではないでしょうか。われわれメディアも、第2フェーズで何をするのか?FASHIONSNAPとして、この連載は一旦終了しますが、新たな発信を予定しています。気負いなくフェムテックが楽しめるような記事を増やしたいと思っていますので、ご期待いただけたらと思います!

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