アンリアレイジ森永邦彦とシルヴィア・フェンディ
アンリアレイジ森永邦彦とシルヴィア・フェンディ
Image by: ANREALAGE

Fashion 注目コレクション

フェンディとアンリアレイジの"黄の衝撃"を体験して

アンリアレイジ森永邦彦とシルヴィア・フェンディ
アンリアレイジ森永邦彦とシルヴィア・フェンディ
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 ミラノで開催中の2020-21年秋冬ミラノメンズコレクションで、「フェンディ(FENDI)」と「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が夢のコラボレーションを果たした。現地からショーとバックステージの様子をリポートする。

(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎

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 昨年9月4日、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンで行われた第6回「LVMHプライズ」の最終審査会。アンリアレイジの森永邦彦はファイナリストの一人として挑んだが、惜しくもグランプリの受賞を逃した。「本気で取りに行ったので、本気で悔しかった」とは帰国後の森永の弁だ。

 しかし、LVMHの幹部とトップデザイナーらに直接プレゼンテーションできたことは、予想外の果実をもたらした。この審査会でアンリアレイジの存在を初めて知った、フェンディのメンズコレクションのクリエイティブディレクター、シルヴィア・フェンディ(Silvia Venturni Fendi)から協業のオファーが舞い込んだのだ。話はとんとん拍子に進み、わずか数ヶ月の製作期間で今回の発表に至ったという。

フェンディのショー会場 Image by 増田海治郎

 ショーに登場したコラボレーションは4ルック。そのうち最後に登場したホワイト&ブラックの4ルックは、モデルを両サイドから囲むようにライトを当てることで、白からフェンディイエローとプリミティブな柄に変化する様を見せた。これは、太陽光(UV)を当てると色が変わる「フォトクロミック」と呼ばれる科学技術で、アンリアレイジが2013年に初めて発表したものの進化版。素材は世界初の「フォトクロミック・ポリエステル」で、三井化学が開発した特殊色素を近未来商品開発研究所(富士紡ホールディングス)でポリエステル糸にしたもの。フェンディのキルティング刺繍を施し、アウターやバッグを制作した。

ショー開始前のランウェイには紫外線のライトが設置されていた。Image by 増田海治郎

 色は紫外線の強さや季節、街によって変化する。プレスリリースには「東京でレモンイエローのアイテムは、ミラノではサニーイエローになり、夏のレモンイエローのアイテムは冬のサニーイエローになる。これらのアイテムには固定色がなく、色の変更は環境によって異なる」と書かれている。森永は「ファッションと自然、テクノロジーの融合を表現したかった」と説明する。

 耐久性が気になるところだが、アイロンをかけてもクリーニングをしても効果は持続するとのこと。キルティングの柄は「テクノロジーとプリミティブの融合を表現するために、原始的な文様を用いた」(森永)という。光が当たって細かな文様が浮かび上がる過程は、ランウェイでインパクトを放ち、歴戦の強者たちが集まった会場でも驚きの声が上がっていた。フェンディのシグネーチャーカラーであるフェンディイエローと、日本が誇るファッションデザイナーのアイデアと様々な先進技術が融合したことにちなんで、私は今日のミラノでの出来事を"黄の衝撃"と名付けたい。

ショーに出たコラボレーションの4ルック。光が当たると色や模様が現れる。 Image by ANREALAGE

 もうひとつ言及したいのは、アイテム自体がとても魅力的だったこと。本コレクションと連動したインサイドアウトのジャケット、ファスナーで下部を切り離すことでボレロに変化するフードコート、キルティングのCPOジャケット、ボリューミーなスノーブーツなどは、マニアック過ぎずウェアラブルで、色が変化する前も後も素敵だ。とかく"技術偏重型"と言われてきたアンリアレイジだが、その言葉も過去のものになりつつあるようだ。

ショーの後、バックステージにて。 Image by 増田海治郎

 「神は細部に宿る」とはアンリアレイジのブランド立ち上げ時からの信念で、長らくその細部に宿る神は知る人ぞ知る存在だった。でも、どうやら真の意味で世界に羽ばたく時が来たようである。つい先日、世界でもっとも著名なファッションジャーナリストのスージー・メンケスは、ピッティ・イマージネ・ウオモで見たアンリアレイジのシグネチャーであるパッチワークジャケットを、驚きを持ってインスタグラムで紹介していた。そして、今回の世界的なトップメゾンとのコラボレーション。ショー後のバックステージでシルヴィアは「彼のアイデアと技術は私の想像を遥かに超えてくるの。彼はファッション業界のマジシャンよ!」と評した。「神が世界に宿る」日も、そう遠くないのかもしれない。

増田海治郎
雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める"デフィレ中毒"で、年間のファッションショーの取材本数は約250本。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。

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