おうち時間を彩るために「花や観葉植物を飾りたい」というニーズが高まったコロナ禍だが、コロナが収束し外出機会が増加した今、人々の関心は「手間いらずの花」にシフトしている。“枯れない花”といえばプリザーブドフラワーが連想されるが、ファッション感度の高い女性の間では一点物の「アートの花」を生活に取り入れる人が増えているという。
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花アートの魅力は「手軽さ」「選ぶ楽しさ」そして「特別感」
枯れない、手間いらずの「花アート」でコロナ禍に特に注目を集めたのはレゴ®だった。「レゴ®ボタニカルコレクション」では、ドライフラワーやフラワーブーケ、胡蝶蘭、多肉植物などバリエーション豊富に展開。大人向けに、マインドフルネスとストレス解消のために開発された同コレクションは、手間をかけずに生花のようにインテリアを彩ることができるだけではなく、「作る」という過程も楽しまれている。今回紹介する花アートも同様に、花を選ぶ感覚で色や形を吟味し、パーツを組み合わせて自分らしくコーディネートを楽しむという購入体験に加えて、一点物という特別感が支持される一因となっているようだ。
ルミネエスト新宿店では若年層をメインターゲットに、若手作家を積極的に起用したポップアップを開催。花アートを制作する作家も取り上げており、担当者は「おうち需要の高まりの中でインテリアにこだわる顧客が増えている。コロナ禍が落ち着いた今も、生花を問わず“花”を飾るという楽しみ方は定着している」と話している。
花の形のアートピースを作る3人の作家
1点ずつ手作りで花の形のインテリアを制作する作家3人を紹介する。
Yuri Iwamoto - うにうにと動き出すような花を提案
富山を拠点にガラスの作品を制作しているYuri Iwamoto(以下、岩本)。同氏の作品は、意思を持った生き物のように、うにうにと動き出すようなシルエットが特徴だ。「ガラスの“意思”をなるべく留めるように形を作ることを意識し、素材自体が持っているエネルギーを発露させることを大切に制作をしている」(同氏)という。
花をモチーフにした作品を制作するようになったきっかけは、自身の趣味でもある登山。夏は北アルプスの花が有名な山の山小屋で働いているという岩本は、高山帯の厳しい環境でも風雨に耐えて咲く花の生命力に、ガラスの素材としての力強さと共通する魅力を感じたという。昨年からは「リトルサニーバイト(little sunny bite)」とコラボレーションし、ワインを注ぐと花弁に色がついたように見えるチューリップ型のゴブレットを販売しているほか、花の生命力を意識したオブジェなどを制作している。
作品の購入者は女性が多く、同氏の作品はカラーバリエーションが豊富な点も支持につながっていると分析。花を想起させる春によく売れるそうだ。特に人気の高いチューリップのゴブレットは、注ぐドリンク次第で花の部分の色を変化させられる点など、作品自体を気分によってアレンジできるような要素が人気の理由だと感じるという。
Image by: Yuri Iwamoto
soil - アソートの販売で自由自在なコーデを可能に
陶器で作られた花や花瓶を展開するsoil。花と葉、花瓶をそれぞれアソートで販売している。生花ではアレンジメントにコツやセンスが求められるが、同氏の作品はどんな組み合わせでも美しく彩ることができる。中には1時間ほど迷いながらも、組み合わせを楽しんで購入するユーザーもいるそうだ。
soil自身も花のある暮らしに憧れたが、余裕のない暮らしの中で花を枯らしてしまった体験があるという。「陶器の花なら枯れない」と初めて作った作品は周囲からも好評。これが現在のブランド活動につながっている。造形を極力抽象化することで「ハンドメイド」ではなく「アート性」を高めた作品作りを心がけているという。
Image by: soil
kosokoso - 「じょうぶなしょくぶつ」は海外からも人気
石膏粘土、樹脂、ビーズなど複数の素材を組み合わせて「じょうぶなしょくぶつ」というシリーズを幅広いバリエーションで展開するkosokoso。ブローチ、ピアス、イヤリング、リングなどさまざまに制作しているが、特に植物と花瓶がセットになった観賞用のプロダクトの人気が高い。購入者の年齢は10〜50代と幅広く、「他のかたちや色違いなどを集めたい」というリピーターも多い。年々ユーザーも増え、SNSへは海外からのアクセスも多いという。
リアルな造花ではなく、世話をしなくても常に元気で生き生きとしたカラフルなプロダクト作りを目指し、石粉を主原料とした石塑粘土を使用するなど、丈夫で壊れにくい構造になるように工夫がされている。小ぶりなアイテムは組み合わせることで花束のような表情も見せる。
Image by: kosokoso
「痒い所に手が届く」インテリアアートはもっと身近なものに
紹介した3組の作家に共通するのは、実物以上にヴィヴィッドなカラーリングと抽象化された造形で、花という親しみのあるモチーフをアートピースに落とし込んでいる点。購入者からは「家にアートピースを飾りたいけれど、選ぶ基準が難しくハードルを感じていた。花のモチーフのアイテムは花を選ぶ感覚で自分の審美眼を信じて素直に選べて嬉しい」といった声も聞かれた。
soilの島谷によると「生花を持ち込めない病院への手土産に購入されるお客様もいる」という。また、kosokosoの加藤は「本物の植物ではないので、犬や猫が誤って食べてしまう心配がないことから、ペットと暮らしているお客様にも好評」だといい、意外なニーズも満たしているようだ。
いち早くsoilの単独ポップアップを企画し、今年2月に開催したルミネエスト新宿店の担当者によると、外出ニーズが高まってもインテリアは引き続き幅広い世代に需要の高いカテゴリーと捉えており、花アートのほかにはタフティングラグのワークショップや、ワインを片手に絵画を描けるアートショップバーなど、商品の販売だけではなく+αの体験ができるショップに注目しているという。花に限らず「自分で選ぶ、作る、アレンジする、そして飾る」というインテリアアートの需要は今後さらに広がっていきそうだ。
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