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連載「ふくびと」sacai デザイナー阿部千登勢

「sacai」デザイナーの阿部千登勢
「sacai」デザイナーの阿部千登勢

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パリで披露した「sacai」2011年春夏コレクション

ファッションショーを行わない理由

 ブランドの世界観を伝えるファッションショーは豪華で華やか。多くのデザイナーが、いつかはパリコレクションにデビューするという目標を抱き、その先の成功を夢見る。しかし「sacai」はショーを行わない。着ることで魅力を発揮する「sacai」にとってのショーは、日常の様々なシーンだ。 あくまでもオリジナリティで勝負する。

【阿部】「sacai」は10人程の小さな会社で、決して大きい資本が入っているわけではなく、大きな広告も打ちません。でも、毎シーズンありがたい事にスタイリストさんやバイヤーさん、ジャーナリストさんなどが「sacai」の服を国内外で着てくださっているんです。着ていると、「それどこの服?」とよく聞かれるのだそう。様々なシチュエーションで着られる「sacai」の服は、こうしてファッション業界の方々が着て広めてくれた事が大きいと思います。少しずつ認知が広がって、嬉しい事に国内外から多くの問い合わせが来るようになりました。

 でも、私たちは売り先を大きく広げません。2004年に初めてパリで展示会を開いたのですが、これも海外で一旗揚げようといったものではなく、世界のどの場所でも同じように新しい価値観を伝えたいという思いで挑戦しました。「なぜショーをやらないの?」とよく聞かれてきましたが、私はそうじゃない価値観で勝負したかったんです。華やかなショーを開くための服作りではなく、お店に1枚だけ残っていても、すぐに「sacai」だと分かる服を作りたい。そのオリジナリティがあってこそだと思っています。

モンクレールのデザイナーに抜擢

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東京で発表した「モンクレール S」ファーストコレクション

 新たにリラックスウェアラインやメンズラインをスタートし、少しずつ成長する「sacai」。その認知を更に大きく広げるきっかけになったのが、「MONCLER(モンクレール)」との協業だ。2009年、阿部がモンクレール社初の日本人デザイナーに抜擢。このニュースは業界を驚かせた。ダウンを得意とする「MONCLER」と、ニットを得意とする「sacai」。異なる2つのアプローチが1つになり、新ライン「モンクレール S」の展開をスタート。大きな反響と売り上げが、その成功を裏付けた。

【阿部】モンクレール社から声がかかったきっかけは、モンクレール社のレモ・ルッフィーニ会長の奥様が「sacai」を愛用してくださっていたこと。実は、それ以前にもいくつかのブランドや企業から協業のお話などを頂いていたのですが、「sacai」のデザインを変えて、大量に生産・販売するといったようなお話には全く興味がありませんでした。

「モンクレール S」2010-11年秋冬

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 モンクレール社からのオファーを引き受けたのは、これまでにない何か面白い事が出来るんじゃないかという直感から。『プレミアムダウンなど、これまで使ったことのない素材へのチャレンジでもあり、ブランドの考え方やデザインがどんな状況でも適応するということを証明したい』という思いがあったからなんです。そんな私たちの考えを尊重してくれました。

 「モンクレール S」では、ダウンをベースに「sacai」らしさと「MONCLER」らしさ、両方を引き出せるようデザインしています。それを身に付けて初めて価値が出る服。やはり反響は大きかったですね。世界的な企業のスケールの大きさを実感するとともに、「MONCLER」の展開する大きなマーケットで「sacai」の認知を広げるチャンスを与えてくれました。


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