GUCCI ARIAコレクション
Image by: Jon Bronxl, Cosimo Sereni and Vanessa Charlot
「グッチ(GUCCI)」が4月16日、創業100周年を祝う最新コレクション「ARIA」を発表した。クリエイティブディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)は、創設者グッチオ・グッチ(Guccio Gucci)のルーツであるロンドンのホテル「サヴォイ」や、創業当時から関わりの深い乗馬に着目し、1世紀にわたる歴史をフィーチャー。さらに「バレンシアガ(BALENCIAGA)」と協業するなど、異色のアプローチで新たな息吹を取り入れた。コレクションはクリスタルで作られた心臓をシンボルに、メゾンの生命を祝福する讃歌となった。
■架空のナイトクラブ「SAVOY CLUB」が舞台
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グッチがコレクションの発表形式を変更し、初めて披露した2020年7月の「Epilogue」コレクションに続く「ARIA」は、オペラなどで歌われる独唱歌の意。イタリア語では空気の意味も持つ。映像は、夜の街を歩く一人の男がネオンに導かれてナイトクラブのドアを開けるシーンからスタートした。
コレクションの舞台「SAVOY CLUB」は、グッチオ・グッチが1921年にメゾンを立ち上げる前に従事していたサヴォイホテルへのオマージュ。無数のカメラとフラッシュライトの閃光に包まれた純白の通路がランウェイとなった。
■乗馬スタイルとハイジュエリー
ミケーレが描くグッチはエキセントリックでマキシマムなクリエイションで知られているが、メゾンの起源にさかのぼった今回は、例年に比べてシックでクラシカル。象徴的なモノグラムがあらゆるアイテムに用いられた。
また、祝祭にふさわしいシークインやクリスタル、ファーやフェザーを惜しみなく使用し、ハイジュエリーコレクション「Hortus Deliciarum」が輝きを添えている。鼻につけるジュエリーといった新しいスタイルの提案も。
ポイントとなる要素は、メゾンにとって重要な乗馬。ジョッキーキャップやジョッキーブーツをはじめ、馬具がアクセサリーやボディパーツに変容。ホースビットがデザインされたレザーのビスチェ、ベルトとつながった首輪のようなチョーカー、そしてハーネスや鞭はセンシュアルなムードを漂わせた。
■トム・フォード期のグッチとバレンシアガの"ハッキング"
「終わりなき生命の更新は、進化する能力によってのみもたらされるもの」とミケーレが表現するように、歴史を継承しながらもレガシーに背くことを肯定するコレクションは、いくつかの挑戦的な試みが見られた。デザインやスピリットを盗むように取り入れて、変容させるアプローチをミケーレは"ハッキング"と呼んでいる。
ファーストルックで登場した赤いベルベットのスーツは、1994年から2004年までグッチのクリエイティブディレクターを務めたトム・フォード(Tom Ford)へのオマージュ。センシュアルな緊張感がミケーレにインスピレーションを与えたという。ミュールもリバイバルとなっている。
そして注目が、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が手掛けるバレンシアガとの取り組み。同じケリング(KERING)の傘下ブランドではあるが、歴史のあるハイブランド同士の協業は珍しく、驚きを与えた。デムナの厳格な反逆精神を奪い取り、両ブランドのロゴを融合するだけではなく、それぞれの象徴的なデザインをユニークに掛け合わせている。
グッチのGGパターンや「グッチ フローラ」パターンにバレンシアガのオールオーバーロゴを重ねたり、ジュエリーに施された「BALENCIAGA」ロゴの「G」をグッチのインターロッキングGに変えるなど、ロゴのアレンジが多彩。また、グッチの「ジャッキー 1961」シリーズのホーボーバッグとバレンシアガのバッグ「アワーグラス(HOURGLASS)」は、互いのマテリアルを交換するようにして作られている。デムナの象徴的なスクエアショルダーや、肩を落として着るジャケットなど、シルエットにもバレンシアガの影響が見られた。
■ドアを開けてユートピアの世界へ
「私たちは1世紀を経て、再びサヴォイ・ホテルのドアから新たな一歩を踏み出そうとしています。そこはグッチの輝かしい物語が始まった神聖な場所。そのきらめきに満ちた魔法のような一歩から長い長い廊下を隔てた場所にいる私たちを、今再び、創世の神話がまばゆい光で包み込みます」(アレッサンドロ・ミケーレ、コレクションノートより)
ミケーレは「ARIA」コレクションの創世のストーリーを、グッチの歴史に重ねたようだ。映像の終盤、着飾った男女のモデルたちが最後に開けたドアの先に広がっていたのは、開放的で美しいユートピア。困難な時代に迎えた100周年の、その先に見る希望を体現したようなラストシーンだった。
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