バレンシアガ 2022年スプリングコレクション
Image by: BALENCIAGA
「バレンシアガ(BALENCIAGA)」2022年スプリングコレクションのタイトルは「CLONES」。デジタルショーに登場した44ルックのモデルは、全て同じ顔や背格好をしている。本物か偽物か、事実か虚構か——現代を風刺するようなデジタルクローンの世界が描かれた。
本物?偽物?デジタルクローン
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デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が手掛けるバレンシアガのデジタルショーの冒頭、以下のメッセージが表示された。
私たちは、完成され、洗練され、統一され、フォトショップされたフィルターを通して世界を見ています。私たちはもはや、編集されていないものと変更されたもの、本物と偽物、有用のものと概念、事実とフィクション、偽物とディープフェイクの間を読み解くことが出来ません。テクノロジーは、別の現実とアイデンティティ、デジタルクローンの世界を創り出しているのです。
これは今回のコンセプトを示すもので、象徴的なデジタルクローンとして登場したのがモデルのエリザ・ダグラス(Eliza Douglas)。過去にもバレンシアガのショーやキャンペーンに起用されているアーティストで、ショー映像では増殖するクローンのように、エリザが繰り返し登場した。
しかし、一部はディープフェイクやフォトグラメトリといったデジタル技術を用いて顔を移植したと資料に書かれており、またヘッドピースなどで顔を隠したスタイルも多く、全てが本人なのか区別がつかない仕掛け。さらにハイパーリアリスティックな効果を求めて、ポストプロダクションのプロセスにplanar trackingやロトスコーピング、機械学習、3Dモデリングなどを実装したという。今回のコレクションでテクノロジーのレンズを通した世界を体現することで、変化する現実感について考察している。
「ザ・シンプソンズ」がプリントに
性差を消すオーバーサイズや、着古したような風合いと断ち切り、リバーシブルといった手法は、クラシカルなコードを分解することでシルエットや解釈に変化をもたらすデムナならではのアプローチ。ドレスは定番の花柄に混じり、PCのデスクトップ上のアイコンを模したプリントも登場した。
パーカやパファージャケットは、前立てを全て閉じると顔が隠れるほど高い襟が特徴。ラストルックの赤いボールルームガウンは、ドラァグクイーンのディヴァイン(Divine)のドレスから着想したという。
グラフィックプリントでは、「No Comment」「Bébé」といったメッセージ、空白の四角と「Your Ad Here」の文字、そしてバレンシアガの服を着たザ・シンプソンズ(The Simpsons)ファミリーなどが目を引いた。
バレンシアガがグッチを"ハッキング"
アクセサリーでは「クロックス(CROCS)」とのコラボレーションシューズ第2弾が披露されたほか、注目の協業プロジェクトが新たに更新された。グッチが4月に発表したコレクション「ARIA」で初披露となったグッチとバレンシアガの「The Hacker Project」で、今回はバレンシアガのデジタルショーに登場。グッチのシグネチャーをバレンシアガのプロダクトとして概念的に解釈したもので、バッグやレザーグッズ、スカーフ、ソックスなどが発表された。
一見するとグッチの「ジャッキーバッグ」や「オフィディア」のシリーズだが、モノグラムがダブルGではなくバレンシアガのダブルBロゴで構成されているフェイク風のデザインが特徴。アイロニカルに「This Is Not a Gucci Bag」とタギングされたバッグはリミテッドエディションで、これらは今年11月に発売予定となっている。
互いのブランドを"ハッキング"するという「The Hacker Project」により、ファッション界における真正性や偽造、流用のアイデアに疑問を投げかけるという。今回のコレクションコンセプトとも重なるプロジェクトとなった。
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