エルメス 2021年春夏メンズコレクションムービーより
エルメス 2021年春夏メンズコレクションムービーより

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舞台裏が覗ける? 新しいライブ表現に挑んだ「エルメス」21SSメンズ

エルメス 2021年春夏メンズコレクションムービーより
エルメス 2021年春夏メンズコレクションムービーより

 パリ・デジタル・メンズコレクションに先駆けること7月5日、「エルメス(HERMÈS)」が2021年春夏コレクションのイメージ映像を公開した。その後、7月12日の公式ファッションウィーク期間中に再公開。エルメスらしい上質でクリーンな世界を堪能できる映像は、なんと一発勝負のライブで表現したという。

(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎

 ショーの映像を自社サイトやインスタグラムで生配信する手法は、もはや当たり前のこと。でも、様々な場面に切り替わる映画のような映像を生配信するとなれば、話は別である。エルメスはアーティストのシリル・テストとコラボレーションし、そんな難しい手法に果敢にチャレンジした。

 映像の趣旨は「ファッションショーが始まる前の舞台裏をひとつの映画のように描く」というもの。普段は決して見られないショーが始まる前のバックステージの様子、つまりは演出家、モデル、スタイリスト、ヘアメイク、フォトグラファーなどの"プロの仕事"を覗き見できる、というわけだ。

エルメス 2021年春夏メンズコレクションムービーより

 舞台はパリ郊外のパンタンにあるエルメスのアトリエ。エレベーターの中のやや緊張した面もちのモデルとディレクターの様子が映し出され、映像は幕を開ける。ストライプのジップシャツとジャケットのスタイリングを微調整するのは、長年にわたってエルメスのメンズを手掛けるヴェロニク・ニシャニアン。長袖のアーモンドグリーンのリブニットは「袖をまくったほうががいいわね」とか指示を出したりしている。フィッティングを終えたモデルたちは、リラックスした様子でiPhoneで記念撮影を楽しんでいる。ラストはシリルが「3、2、1、Good! 」とカウントダウンし、参加者全員の拍手で幕を閉じた。ここで初めてこの緻密な映像がライブだったのだと気がついた。

「私はとても緊張する性格で、ライブで人前に出るということは、セーフティーネットなしで三回転宙返りをするようなものだったわ(笑)」とヴェロニクは振り返る。「でも、普段は公にしない舞台裏を見せることができ、真の創造の瞬間を共有することができたのではないかしら」とも。

 服に目を移そう。軽やかさとシンプリシティを表現したというコレクションは、初夏のパリのそよ風のように爽やかだ。左の前身頃がダブルフロントになったジャケットは、異なるブルーストライプのシャツ地で切り替えていて、面積の少ない方のストライプと同布のパンツでセットアップに。大柄の馬が描かれたシャツはラ・ダンス・デ・シュヴォーとのコラボレーション。前立てに布を挟み込んだようなガゼットカラーのシャツは、Vゾーンを目新しく見せる魔法のアイテムだ。

 半袖ニットとスカーフの上品な上半身には、ワークテイストのパンツを合わせて、程よくエレガンスを中和している。このあたりのさじ加減が、最近のエルメスは非常に上手い。カラーパレットはブルーのグラデーションを中心に、アーモンドグリーン、石や砂利をイメージしたベージュやオフホワイトなど。挿し色の蛍光イエローも印象的だ。通常のショーでは40〜50ルックを作るが、今シーズンはコロナ禍の影響もあり27体(映像に出てくるのは18体)に絞られている。

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文・増田海治郎
雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める"デフィレ中毒"で、年間のファッションショーの取材本数は約250本。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。>>増田海治郎の記事一覧

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