ADVERTISING

オム プリッセ イッセイ ミヤケは新章へ 服づくりの研究者が“外”に出ることの意味

フィレンツェで2026年春夏コレクションを発表

HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 2026年春夏コレクション

Image by: Giovanni Giannoni

HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 2026年春夏コレクション

Image by: Giovanni Giannoni

オム プリッセ イッセイ ミヤケは新章へ 服づくりの研究者が“外”に出ることの意味

フィレンツェで2026年春夏コレクションを発表

HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 2026年春夏コレクション

Image by: Giovanni Giannoni

 「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)」が、パリメンズファッションウィークでのショー形式の発表を取りやめ、代わりに「アイム メン(IM MEN)」が発表するようになって1シーズンが経った。ここ数シーズンで評価を更に高めていたオム プリッセ イッセイ ミヤケだっただけに、疑問符が浮かぶ決断だったが、名誉招待ブランドに選出され、三宅デザイン事務所として初めて「ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo)」で行ったファッションショーでその意図を明確に示した。ブランドの進化と展望を見据えて「新たな段階」へ進むとしていた同ブランドは、服づくりの研究を重ねてきたチームが実験室を解放し、社会との接点を求める、すなわち「オープンステュディオ(OPEN STUDIO)」へ舵を切ったのである。

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

 三宅一生の服作りの根幹にある「一枚の布」というコンセプトに始まり、高温・高圧でポリエステル生地を一気に熱固定する独自の後加工プリーツ技術である「パーマネントプリーツ」や、新しい設計アルゴリズムのフレームワークを応用することで、熱を加えるだけで狙った立体に自動で変形する布「Steam Stretch」など、三宅デザイン事務所は次々と革新技術を生み出してきた。その開発力は世界的に高く評価される一方、地下で研究に没頭する科学者のごとく、三宅一生が掲げた「日常生活に根差すアイデア」との釣り合いがやや崩れていたのかもしれない。「自分たちの仕事をプレゼンテーションする」として、考え、出した答えは土地や文化、場所からインスピレーションを受けて、各地で発表する作品を作っていくというアプローチだった。具体的に、2026年春夏コレクション「Amid Impasto of Horizons —積み重なる地平—」は、一本の筆を手に旅をすることから始まった。

ADVERTISING

展覧会会場

Image by: FASHIONSNAP

 ルネサンス期のイタリア・フィレンツェにおいて実質的な支配者として君臨したメディチ家にゆかりのある「Villa Medicea della Petraia」を会場に、オム プリッセ イッセイ ミヤケの2026年春夏コレクションは展覧会とファッションショーの2部で構成された。豪華絢爛の壁画とシャンデリアが存在感を放つ屋内施設では、日本デザインセンター 三澤デザイン研究室と協業して作り上げたインスタレーションを展開。デザインチームがフィレンツェを含むイタリアの都市の豊かな自然風景と生活が息づく町々を巡り、民家の壁や野菜の色など、採集した色彩と得られた着想源を知ることができる。プリーツ素材による作品群は、覆う、被せる、巻く、折る、重ねるなど素材に無理のない自然な手法から生地のなりたいかたちを探求したという。

 コレクションに用いた色の着想源を巡る展覧会会場を抜けた先には、スプリンクラーが設置された広大な庭園が広がり、ランウェイショーはここで行われた。ショーの進行や音楽と美しく連動するスプリンクラーと光を組み合わせ、虹を再現した演出が目を引いた会場では、色の採集に必要な道具を収納するというアイデアから生まれた、筆や絵の具などの描き道具のみならず、ポケットティッシュなど日常生活の小物を携行するのにも便利なシリーズ「PAINTER’S GEAR」や、ブランドの定番として提案している二つボタンのジャケットに加え、新型のノーカラーロングジャケット、ロングダブルブレストジャケットといった幅広いセットアップが揃うテーラードプリーツシリーズ「TAILORED PLEATS」、イタリアでの色の採集に使用したパレットそのものをモチーフとしたプリントシリーズ「PALETTE」、リネンのような風合いを持ち、肌離れの良いさらっとした素材感が特徴のテーラードシリーズ「LINEN LIKE」といったシリーズで分けたアイテム群を披露。ガーメントプリーツの技術を基盤に、着る人の多様性に対応するユニバーサルな日常着をデザインした。

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

 また、後半のルックではハンガーをかけた衣服が多数登場するが、これは衣服を入れて持ち運ぶガーメントバッグを着用するという発想から生まれたシリーズ「CARRIER CARRIED」のアイテム。着用しない時は折り畳んでガーメントバッグの形にもなるパッカブル仕様で、旅先に服を運ぶバッグがそのまま服へと姿を変え、さらに着用者を次の場所へと誘う、遊び心と実用性を兼ね備えたアイテムとなっている。

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

 「一枚の布」に宿る無限の可能性を問い続けた三宅一生の精神は、今なおオム プリッセ イッセイ ミヤケの鼓動そのものである。同氏の理念は、後継のデザインチームによってプリーツという現代の筆致へと受け継がれ、フィレンツェの天空の下で新たな色彩を得た。テキスタイルを研究室で鍛え上げ、街角の暮らしへ解き放つ、その往復運動こそがブランドのアイデンティティであり、今回新たに導入した「オープンステュディオ」というアプローチはまさにその可視化と言えるだろう。服づくりの研究者が"外"へ出ることは、「現代男性のための新しい日常着」というブランドコンセプトの体現である。三宅一生の探究心を継ぎつつ、社会との新たな接点を切り開く歩みを進めたオム プリッセ イッセイ ミヤケが、今後どんな都市で、土地が孕む色と光を纏いながら、現代の「日常着」を更新し続けていくのか期待したい。

HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 2026年春夏

全ルックを見る

HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 2026年春夏コレクション

2026 SPRING SUMMERファッションショー


FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

最終更新日:

ADVERTISING

HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 2026年春夏コレクション

Image by: Giovanni Giannoni

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント